Run to the Another World第67話


『後は、某達が普段人間の姿で何をしているのかと言う事についてだが

ここに来る前にも話した通り普段の職業は医者だ。ジェイノリー……だったか?』

「ああ、俺はジェイノリーだ」

『なら良い。御前と同じく某の職業は人間相手の医者だが、同じ竜族の身体の

構造に関しても知っている。だからもし某達竜族の身体の事をもっと良く知りたいと

思うのであれば、某に聞くのが1番早い』

「分かった、機会があればな」


しかし、この後に驚愕の事実が今度は異世界人達に判明する。

『後は……某が使える魔法は他にもある。攻撃魔法もそうだ。今から

突風を起こすから、みんな踏ん張ってみてくれ』

その発言に足に力を入れて異世界人6人は踏ん張る体勢を見せる。

『……ふっ!!』

魔力を解放して溜めた風のパワーを一気に解放するセルフォンだったが、

そんな彼が見た物はきょとんとした顔をする異世界人6人の姿だった。

「……まだか?」

『え?』

「私達、風が起こるのを待ってるんだけど」

『え……え?』


岩村と洋子のそんな反応に、信じられないと言った驚愕の表情をセルフォンは

顔に浮かべる。どちらかと言えばクールな性格であるセルフォンだが、今の彼は

モロに感情をあらわにしていた。

『そんなバカな! 某は今突風を巻き起こしたのだぞ?』

「今?」

「けど俺達、ここにさっきから吹いている風しか感じてないけどな?」

きょとんとした顔つきになっているのは大塚も栗山もそうだった。

『…………』

余りのショックにセルフォンが黙り込んでしまったのを見て、思わず寄せ集め

サーティンデビルズのリーダーである博人が声をかけた。

「お、おい……大丈夫か?」


『まさかこんな事が……』

セルフォンはそんな博人の問い掛けにも動じず、アゴに手を当てブツブツと何かを考えている。

「もしかして、私達の存在その物が特殊な存在って事なの?」

洋子のその疑問を隣で聞いていたジェイノリーもそれに続く。

「そう言えば、前にこの世界で武器を使おうとしたら凄い音と光と痛みが発せられて握る事すら

出来なかった。この事と関係があるのか?」

そうジェイノリーが問い掛けると、更にセルフォンは険しい顔になる。

『え? 武器が使えない?』

「ああ、そうなんだよ……」


それぞれ3カ国で起こったその武器関係の出来事を話してみると、セルフォンは更に疑問を

抱いてしまった様だ。

『すまん、某も長い事生きてはいるが、そんな事例は今まで見た事も聞いた事も無いし、

某の魔法の影響を全く受けないって言うのもまるで意味が分からない』

残念そうに大きく首を振って、セルフォンは今までに無い位の落ち込み様を見せる。

「ま、まぁ私達はこの身体で今迄生きて来た訳だし、今はその事よりももっと優先するべき事が

あるんだからとりあえず一旦この話はやめて、そろそろ次の遺跡に行かない?」

『そうか、そうするか』


考えるのは何処でも出来る訳だしなとセルフォンは呟き、休憩して体力も回復したので

イディリークのもう1つの遺跡へと6人と1匹は向かう事にした。

だが、この後にこの一行を待ち受けているとんでもない出来事を当然この一行が

知る訳も無く、着実に破滅へのカウントダウンが近づいていた。

それはこの国の国家権力を敵に回す事に、そして自分達が凄まじいピンチに陥って

しまう事になってしまう、恐ろしい出来事の始まりだったのである。


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