Run to the Another World第60話


アレイレルが金髪の男とバトルしている頃、博人も茶髪の大剣を持っている男とバトルしていた。

金髪の男とは対照的に、こちらはパワー重視の戦闘スタイルの様だ。

「おらぁ!!」

大剣を振り回して来る茶髪の男だが、そのスピードは博人にとっては

決して速い物では無いので割と避けやすい。

しかし、もし1発でも当たったら身体が切断されてしまう事は確実であろう。


博人とアレイレルは実は同学年なのである。今博人が42歳でアレイレルが43歳だが、

早生まれの博人はアレイレルと学年が一緒なのだ。そんな小野田博人は自分でも心の中で

思っていた通り、何か武術を習っていたと言う訳では無い。そんな博人が戦う術を持っていると

言えるかは微妙な所ではあるが、高校時代迄の博人自身がかなり喧嘩っ早い性格であった。

喧嘩は日常茶飯事で、何度も停学処分を食らった。何とか高校を卒業した後はハンターの職に就き、

現在は転職して家電修理技師として働いている。そんな喧嘩っ早い博人にも得意な物があり、

それはアクロバティックな動きをする器械体操の分野であったのだ。

器械体操の面だけに関しては彼は抜群の適応能力と成績を見せていた事があり、彼によれば全盛期の

20代後半と比べれば幾らか鈍ってしまったらしいが、今現在でもバック転や宙返りや2回転ジャンプ等の

アクロバットな動きをこの歳で軽々とこなしている。


高校を卒業し、ハンターになって金を稼ぎ始めた博人は中学生時代に車と出会い何時しか車への道を意識し始めた。

だが彼はレースその物に興味は無く、車で楽しく走りたいと言う思いでどんな車を買うか悩んでいた。

生まれ育った新潟から東京都に出て来たばかりで金も無かった博人はまずは車の購入資金を貯める事に。

そんな博人が今から20年前に出会ったのがR32のスカイラインGT−Rで、そのスタイリングに一気に惚れ込んで

金を貯め続け、1994年に出たR32GT−RのVスペックKを1995年に新車で購入してしまった。

それからはハンターとして金を稼ぎつつ夜の首都高を軽く流す様になる。


だが、ある時に走り屋の180SXに挑発されてキレてしまった博人はその180SXを環状線で追い掛け回したが、

最終的に振り切られてしまい「速さ」に対する執着心がその時に生まれる事になった。

それからはハンターとして稼いだ金を生活費以外は全てR32GT−Rに注ぎ込む様になり、その180SXを

探し続けていたが、その時には既に180SXは首都高の走り屋を止めてしまっていた。

その事を博人が首都高で知った時は愕然としたものの、それからも「速さ」に対する執着心は消える事無く、

首都高がサーキットとして初めて生まれ変わる1999年迄、公道であった首都高を走り続けていた。

首都高がサーキットになっても勿論走り続け、何時しか彼は三浦由佳、藤尾精哉、岸 泰紀と共に「首都高の四天王」、

通称「4 DEVAS」と呼ばれる程迄にテクニックを上げた。

彼と走ると必ず事故ってしまうと言う不名誉な噂も流れたが、そんな事に目もくれず、首都高のサーキットが

新環状線や湾岸線まで拡大してからは新環状線を中心に走り続けていた。その後はチームに入ったりもしたが

人間関係のもつれからチームを抜けて1人で走る様になり、シルバーの狼が走り抜けて行く様な彼には「真夜中の銀狼」と

言う通り名もついた。


そして2001年にはR32にガタが来た事もあって、R33GT−Rに乗り換えて更に速さを求め続ける。

更に2005年にはFRの車に乗ってみたいと思い、家電修理技師に転職したのを切っ掛けにZ32のフェアレディZに乗り換える。

その速さを認められ、2005年には一時期サーティンデビルズのメンバーだった事もあった。

その後はサーティンデビルズも解散して再び1人で走る様になり、現在ではZ32から再びR33GT−Rに乗り換え、

首都高サーキットを現役で走り続けている。

博人はその器械体操で培ったアクロバティックな動きと動体視力、そして喧嘩戦法の我流の格闘術を武器に茶髪の男に立ち向かう。

男は博人に対して金髪の男がアレイレルに向かって行った様に思い切りの良い戦い方を見せて行く。

対する博人もアレイレルと同じく防戦気味だ。大剣をかがんで避け、上体を反らしてかわして反撃のチャンスを窺う。

喧嘩っ早い博人で基本的には熱血だが、今では丸くなった事もあってこの様に冷静な判断も出来る様になった。


だが次の瞬間、博人の右側頭部に男の右回し蹴りが炸裂する。

「ぐあ!」

その回し蹴りで地面に倒れこむ博人だが、すぐに起き上がってなるべく隙を作らない様にする。

そんな博人に男は更に追撃を掛けて行くが、博人も男のハイキックをガードしたり大剣を避けたりして、男が右の

ハイキックを繰り出して来た所に先程のお返しとばかりにカウンターで右のハイキックを男の顔面に入れてやる。

「ぐおあ!」

さっきの博人と同じ様に地面に倒れこんだ男に博人は追撃を掛けるべく思い切り足の裏で男を踏みつけようとするが、

男も転がって避けてそれは失敗に終わる。

しかし立ち上がった男の顔面に右のパンチ、続けて右の前蹴りを男の腹に食らわせて更にドロップキックを男の頭目掛けて

博人は食らわせようとした。


「おりゃあ!」

が、男はその博人の足を少し身を屈めて避け、空中に浮いている博人を両手で突き飛ばす。

「うおぁ!?」

盛大に地面を転がった博人に男が駆け寄り、博人が立ち上がって来た所に大剣を薙ぎ払うが間一髪で博人も回避。

大剣を避けた博人に今度は右の前蹴りを男が食らわせ、続けて左のパンチも食らわせてやり、もう1度右の前蹴りで

博人を吹っ飛ばす。やはり鎧を着けている分重さでは男が上らしい。博人はまたしても後ろに転がったが、上手く

受け身を取って体勢を素早く立て直して追撃して来る男の攻撃をかわして更にガードする。


そうして男の追撃を前に飛んでからの前転でかわし、今度は自分がジャンプして、そこから空中で地面と平行になる様に

足と手をうつ伏せの状態に一気に伸ばす。すると後ろから追撃して来た男は、その伸ばされた博人の両足を

まともに食らってしまった。

「うご!?」

そのチャンスを博人は見逃す筈も無く、一気に男に攻め込む。男に大剣をなるべく振らせない様に一気に懐へと飛び込み、

鎧を着けていない顔の部分をなるべく狙ってパンチのラッシュ。男も回し蹴り等で対応したりガードしたりするが、回し蹴りを

博人は屈んで回避して逆に右のハイキックを男の側頭部に叩き込み、更に右のパンチからジャンプしながらの右回し蹴り、

それによって男が少し離れた所に、ダッシュからのジャンプキックを男の顔面にクリーンヒットさせる。

「ぐほっ……」

男はそれで気絶してしまい、ここでバトルは博人の勝利で終了した。

その時、2匹のドラゴンがアレイレルと博人の所に戻って来た。

『乗れ。脱出するぞ!!』

そのドラゴンの言葉に気絶しているそれぞれの男は放って置き、アレイレルと博人はドラゴンに乗って他のメンバーと

共にシュア王国の王都コーニエルを後にするのであった。



Run to the Another World シュア王国編 完


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