Run to the Another World第2部プロローグ1
『ついたぞ、ここだ』
「な、何だよここ……」
「と言うかここって島だよな?」
ファルス帝国からスタートし、灰色のドラゴンと白いドラゴンの背中に居た11人は
そのまま空を飛び続け、空中で方向転換して地図の北の方にあるヴィルトディン王国と
ファルス帝国、そしてエスヴェテレス帝国の3カ国の真ん中にある海に浮かぶ島に辿り着いていた。
「何処だここ……」
「何か、どっかの島みたいだけど良く分かんねー」
「ここがその合流ポイントだってのか?」
そうドラゴンに問い掛けるハリド達の目の前には、大きな洋館が1つデーンと建っている。
この島に人が住んでいると言う証になるとは思うのだが、人が居る気配はゼロだ。
「ここって人は住んでないの?」
今度は和美がそう聞く。すると灰色のドラゴンが口を開いた。
『ここはそれぞれの国のトップが世界会談をする時に使われる集会場らしい。
と言っても我輩達は特段用が無いから、空から見た事がある位で実際にそう言った
連中が集まっているのを見た訳では無いのだがな』
それに続けて、他の異世界の人間達も運が良ければこの合流ポイントに何時かは
集まって来るだろうからしばらくこの中で待つ事にしよう、と灰色のドラゴンは11人に提案した。
「あれがその集合ポイントだって?」
「へぇー、島か」
「あの建物は集会場になってるのか。来るだけでも大変そうだな」
バーレンからスタートした12人のグループは、今度はドラゴンの背中に乗ったまま空を飛んで
あの湖からこの合流場所にやって来ていた。空の上から島の周りを見る限りでは特に変わった様子は無いので
このまま無事に降りられそうだが、もしかしたら他のメンバーがここに居る可能性があるとは限らない。
『ほら、降りた降りた』
「で、俺達はこれからどうすれば良いのかな?」
大塚の問い掛けにアサドールが提案する。
『外で待つのはつまらないだろうし、中に入るとしよう。鍵がかかっていなければだけど』
「ならさっさと移動だ。他のメンバーの連中がこの中に居ると良いんだけどな」
孝司の先導で、シュヴィリスとアサドールの背中から降りた12人はこの洋館の中に入る事に。
願わくば、他の国にトリップしたと言うメンバー達もここに居て欲しい考えながら……。
「はー、やっとドラゴンの背中から降りられるぜ」
「あそこがその合流場所になるのか。ようやくと言った感じだな」
「他のメンバーもあそこに合流する予定なんだろ?」
シュアスタートの12人も、合流場所である北方の島に黄色いドラゴンと赤いドラゴンと
一緒にあの襲撃して来た飛竜達を振り切って辿り着く事が出来た。
「ようやく一息つけるんだな……」
「あの洋館の中に入ってみれば、何かしら分かりそうだな」
藤尾と和人のそんな呟きに黄色いドラゴンのグラルバルトが答える。
『もしかしたら1発で、御前達の仲間の人間に会えるかもしれないな』
そのまま島へと降り立ったシュア王国のグループ12人は洋館の入り口のドアを開けて中へと進んで行く。
もしかしたら他のメンバーと合流出来るのでは無いだろうかと言う期待を寄せて……。
そうして3つのグループは到着した時の時間差はあるにせよ、洋館の中のエントランスで無事に35人全員が
再会する事が出来たのであった。
「はぁ〜、良かったぜ、また全員揃ったな!」
「ああ、一時はどうなるかと思ったけど全員こうしてまた会えて良かった」
「皆修羅場を潜り抜けて来たんだろ?」
再会を懐かしむ35人だったが、そんな35人の元に誰かの足音が聞こえて来る。
「……ん?」
するとその足音の主である人間が、この場に集まった異世界トリップメンバー達の前に現れた。
その人物の姿を見た洋子が一言。
「……女の子?」
髪の色が明や橋本と同じく2色で、片方がピンクで片方が水色のセミロングヘアーの女だった。
恐らく観光しに来たのでは無いかと目星をつけ、同じ女であるその洋子がその女に話しかけた。
「こんにちは。ここで何をしているんですか?」
「あ、どうもこんにちは……そうです、ここには探検で来ました」
女はいきなり話し掛けられた事に若干戸惑った様子ながらもしっかりと受け答えをする。
見た感じではこの35人よりも確実に年下の若い女だと言う事だが、服装が地味だからと言って
油断してはいけない。
「そうなんですか。良く旅行とかってするんですか?」
「はい、世界を旅してるんです」
女は若干胸を張って答えた。それに対して今度は和美が尋ねる。
「ここも観光スポットなの?」
「いいえ、ここの島にだけ来た事が無かったんですよ。それで知り合いの人に船を借りてここまで来てみたんですけど、
何も無いみたいで……島を一回りして来たんですけど、目立った建物はこれ位みたいですね。何も無いみたいなので、
私はそろそろ帰ろうかと思ってるんです」
そこまで女が言った時、今度はバサバサと何かが羽ばたく羽の音が響いて来た。
その音の方向に全員が空を見上げてみると、何とその空には今迄自分達が出会って来た6色のドラゴンが
全て洋館の目の前に向かって降りて来るでは無いか。
「おおっ!? おっ!?」
「あ、あれってドラゴンじゃねぇか!?」
「しかも6色居るぜ!?」
「やばいやばい、スペースを空けろ!」
洋館の前にスペースを広く取ってドラゴン達が着陸出来る様に移動する35人の目の前に、
そのドラゴン達はゆっくりと着陸して来た。
『我が会っていない奴と会った事のある奴等が居るな』
『某も会ってない奴も居るぞ』
『我輩も会ってない人間が居るが、波動は感じる』
『僕も会ってない人も居るけど、同じく波動を感じる人も居る』
『私も全員に会ってはいないが、波動を感じる事は出来たぞ』
『俺様も全員に出会っては居ないな』
この場所に自分達を呼び寄せたのは一体何故なのであろうか?
「なぁ、ここに俺達を呼び寄せたのは何でなんだ? どう言う意味があるんだ?」
その淳の問いかけに赤いドラゴンが口を開く。
『俺様達は、恐らく御前達が聞いたって言う声と同じ声の念話を聞いたんだ。念話の事は大体
それぞれ俺様達ドラゴンから聞かせて貰っているだろうけど、それを5日位前に聞いた。何処かの
異世界に意思が通じたから、役に立ちそうな異世界の人間を呼び寄せてみるってな』
「ああ、そうだったのか」
しかしそれ以上に気になる事はまだ当然あるので、その気になっている事を35人の異世界人達は
ドラゴン達にぶつけてみる事にした。
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