Run to the Another World第57話


そして、最後にショック体験をした橋本がふとある事を思い出した。

「そう言えばあの声、こんな事言ってたな。俺達は武器が使えないって。それがこのショックに当てはまるんじゃないのかな」

橋本の発言に、彼以外の10人がハッとした顔つきになる。

「そうだ、それだ!」

「じゃあ俺達、武器を持った相手に素手で戦わなくちゃいけないって事か?」

「もしくは身の回りにある物を何でも武器にして戦うかだな」

そのハールと淳と浩夜の言葉に、改めてこの世界で生き抜く難しさを11人はこの時実感した。

「とにかく、ここでじっとしているのは危険だ。武器は諦めて先に進もう。グズグズしてるとまた敵に囲まれそうだ。

この機会に乗じてこの城から脱出するのもありだな」

「わかった」

藤尾の意見に和人が同意し、11人は先へと進む。しかし脱出する前に博人を探し出して合流しなければならない。


そしてその博人はレフナスをアルバスとその他の兵士達に任せて、自分は部屋へと一旦戻ろうとしていた。

だがその途中でいきなり多数の兵士が押し寄せて来て、数では敵わないので応戦する為に出て来たシュア王国の

兵士達と共にギリギリで応戦、または兵士にその場を任せて自分は逃げる様にしている。

(何だこの騒ぎは……!! ……まさかあいつ等か!? さっきのあいつ等がもしかしたら原因じゃねぇのか!?)

先程レフナスとアルバスに襲い掛かったあの偽兵士達がもしかしたらこの騒動の発端になっているのでは無いか、と

博人は自分の直感でそう判断する。確証は掴めないが、何となくそんな感じがしてしょうがないのだ。


とにかく今は自分の身の安全が最優先と言う事になるが、この分だと城の中に関しては危なっかしい事になる。

ここは1度外に出てみようとも思うが、外も乱戦状態だったらどうしようと途端に不安になる博人。

(どうする……どうする!?)

そんな博人に追い討ちをかけるかの様に、兵士が通路の奥から一気に押し寄せて来る。

更には後ろからも兵士の大群がやって来た。

(まずい、このままじゃ俺挟み撃ちだ!)

傍には大きな窓があり、そこから下を覗いて見ると斜め右下にバルコニーが見える。

博人は意を決して窓に突撃し、窓を突き破りながらそのバルコニーへとダイブした!!

「うおああああああ!!」



一方の11人はようやく城のエントランス迄やって来ていた。

途中幾度か敵兵士達との戦闘があった物の、その度に何とか潜り抜けて来ている。

「うわぁ、こりゃ酷い」

浩夜が思わず口に出すのも無理は無かった。エントランスでは敵味方問わず大勢の兵士が

倒れて息絶えており、まさに修羅場になっていたからであった。しかもまだその中で戦っている兵士達が何人も居る。

よっぽど敵の人数が多いと言う事になるのであろう。夕方とは言え真正面から隠密行動もせずこうして堂々と

乗り込んで来るとは、この集団は王国を敵に回す事にそれだけの自信があるのだろうかと言う思いが11人にはあった。

ここでは11人はなるべく戦闘せずに、襲い掛かって来た兵士を適当にあしらいつつ王城の外へと脱出する事に成功した。

だけどまだまだ油断は出来ないので、一先ずは王城の門から少しだけ離れた場所にある茂みに隠れて様子を窺う事に。

「どうだ、淳?」

「今の所敵は居ないな……。だけどまだまだ戦闘している雰囲気は伝わって来るから、様子を見つつ城下を通って逃げよう」

橋本の問いに淳が答え、11人が茂みから抜け出そうとしたその時だった。


突然何処からかガラスが突き破られる様な音が聞こえて来たかと思うと、その直後にドサッと何かが落ちる音も聞こえて来た。

「何だっ!?」

音がして来たのは上の方なので11人が一斉にその方向を見る。

そこにはバルコニーがついている窓があり、そのバルコニーで人影がのそりと起き上がっているのが見えた。

そんな人影の正体に最初に気が付いたのは由佳であった。

「ねぇ、あれ……博人君じゃないかしら!?」

オレンジの髪の毛に、この世界ではありえない服装であるシルバーのジャンパーを羽織ったガタイのゴツい人影であった。

そして博人が何故ガラスを突き破って出て来たのかは大体イメージ出来る。


ともかくこれは好都合であるとばかりに博人と合流する事に成功。再び12人のチームに戻ったのであった。

「無事だったんだな、博人!」

「何とかな。そっちも無事で何よりだ。城の中は敵がウジャウジャだ。あのまま城の中に居たらどっちにしろ危なかったぜ」

安堵の息を吐いて城の中での出来事を振り返る博人。

「ところで、御前がトイレに行ってから何があったんだ?」

「ああ、それはだな……」

博人がその先を続けて言おうとしたその時、更に12人を手助けする強力な存在が現れた。

「お、おい、あれ!」

バラリーが空を見上げて指をさす。そこには遠目でも分かり易い、黄色い身体の大きなドラゴンが空を飛んでいるのが目に入った。

「あれって……あの時のドラゴンじゃないか!?」

橋本の疑問系の叫びに、残りの11人も迷う事無く同意した。


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