Run to the Another World第56話


「あれ、そう言えば博人遅いな」

「城って何処も大体そうだけど、この城も例に漏れず結構広そうだから迷ってるんじゃないか?」

「え? でも兵士が2人着いて行ったでしょ」

「あー、そう言えばそうだな……」

博人がなかなか帰って来ない事に気が着いた残りの11人の内、つい何の気無しにアレイレルが

窓の外を見た時だった。


「……ん? 何だ、あれ」

空を何かが旋回している。その光景にアレイレルが釘付けになっていると、旋回していた物体が

今度は一気に城の方へと向かって飛んで来た。

「うお!?」

「え、あ、あれって……」

「ワイバーンか!?」

旋回していたその物体……いや、影の正体はワイバーンであった。日本語で飛竜と言う生物である。

それに気が付いた他のメンバーもアレイレルと同様に窓際に駆け寄る。


そして、その飛竜は一直線にこっちに飛んで来た。

「つ、突っ込んで来るぞ!!」

「伏せろ!」

サエリクスのその掛け声とほぼ同時に11人が地面に伏せる。次の瞬間、物凄い音と共に大部屋の窓が

突き破られて飛竜が突っ込んで来た。

「うおあ!」

「わあああああ!」

更に、突っ込んで来た飛竜から1人の兵士が降りて来て11人に襲い掛かる。

が、そこは人数の差であっさり撃退して窓の外に兵士を投げ捨てた。


しかし、もう1度窓の外を見て11人は戦慄した。上空には何時の間にか、王都の空を埋め尽くすと

言っても過言では無い位の飛竜が旋回していたのである。

「うげぇ!? 何だあの数!?」

「急展開過ぎるわ!」

その飛竜達は次々と王都に着陸し、飛竜を操っているであろう兵士達が王都に乗り込んで来たらしい。

当然、その目標は王城にも向けられたと言う訳だ。


その光景を見て真っ先にピンと来たのが和人だった。

「まさか、博人はあの飛竜の奴等の仲間に!?」

「考えられなくも無いな。現に外がばたばたと騒がしくなってるし」

ドアの外で自分達を見張っていた兵士が博人を連れて行ったので大丈夫だとは思う浩夜だったが、

自分達の身もこのままでは危険と言う事に気が付く。

「ここに固まって少し様子を見よう。そして敵が来たら撃退する」

「わかった!」

「むやみに外に出たらもっと危なそうだしな」

栗山の提案にハールと藤尾も同意し、11人は自分達の身の安全を最優先に確保する事にした。


だが幾ら待っても敵がやって来そうには無い。外の喧騒も段々と収まって来た。

「来ねーなー……」

「ちょっと外見てくれるか?」

「ああ」

サエリクスの指示でバラリーが外を見ると、そこは意外な状況になっていた。

「……誰も居ないぞ?」

「え?」

11人はぞろぞろと部屋の外に出てみるが、そこでは何人かの王国兵士と乗り込んで来た敵兵士が息絶えているだけであった。


しかし喧騒はまだ収まってはいない。

「まだ何だか騒がしいな。様子を見て来る」

「気をつけろよ」

すぐ傍の角迄素早く淳が走り寄り、角の先をそろりと見てみる。

「まだ争っている奴等が結構居るぜ」

「そうか、なら戻ろう」

まだ無事では無い事を確認して、藤尾が部屋に戻る様に促したその時だった。


淳が覗いていた角とは逆側の通路の角から、バタバタと慌しく足音が響いて来た。

それと同時に自分達の後ろの方からもバタバタと敵兵士達が現れる。

「うぇ!?」

「ヤバイ、挟まれた!!」

つまり通路の中程で11人は挟まれる形になってしまい、応戦せざるを余儀無くされた。

だが11人はそれぞれ武術を習っているので全く戦えない訳でも無く、通路も狭いので

相手の敵兵士達は大きく剣や槍を振り回す事が出来ない。

それに弓や長斧を持った兵士も居るが、長斧は剣や槍と同じ理由で、弓においては

狭い通路で無闇に矢を放てば仲間の兵士に当たる可能性があるので攻撃のチャンスを掴めていない。


11人はそれぞれの武術を駆使して何とか応戦し、1人、また1人と体術で倒して行く事に成功する。

敵兵士達も無限に出て来る訳でも無く、取り合えずまずはこの通路に現れた合計20人程の兵士達を倒して

乗り切る事に成功した。そうしてこの通路での戦いを乗り切った淳が一言。

「どっちかって言うと、大部屋の中で迎え撃つよりはこう言った狭い通路の方が良いと思う。狭い場所なら

機動性に富んだ素手の俺達の方が有利だし、武器も大量にあるしな!」

そう言いつつ、足元に倒れている兵士の傍に転がっている長斧を淳が手に取った次の瞬間!!

「うおあ!?」

「きゃあ!?」

「おわ!?」

いきなり淳の手からバチッと音がして、同時に強い光も飛び出す。

「い、痛ぇ……静電気、か……?」

何なんだよと思いながらも再度淳は長斧を手に取ったが、同じく強い光と音にまた襲われる結果になった。


「武器が、持てない……?」

バラリーがポツリと呟いて、自分も同じ様に足元に落ちている弓を手に取ると淳と同じ様に光と音で武器に拒絶される。

「ぐあ! 何だこのショック!?」

他のメンバーもそれぞれ武器を持って試してみたが、結果は同じ事だった。

「何だよこれは!」

「わからねぇよ……」

一体、この現象は如何言う事なのだろうか!?


Run to the Another World第57話へ

HPGサイドへ戻る