Run to the Another World第48話


12人はその殆んどがスニーカーである為に非常に砂の上では歩き辛い。

グレトルはブーツを履いているのでその限りでは無いのだが。

砂が入って来て煩わしい事この上無いが、それでも我慢して進んで行くしかない。

「うわぁ、歩き辛い」

「しょうがないな、こりゃ」

「砂漠がある国の人の気持ちはわかるわね」

そのままグレトルの案内に従って歩き続けて行くと、確かに彼が栗山達に言っていた通りオアシスが見つかった。

木が何本か立っており、湖の水が透き通る位に綺麗な場所だ。


「ここかー」

「何か、テンプレート通りのオアシスだな」

「ほんとほんと。でも、本当にここが遺跡なのか?」

「ああそうだ。ここでドラゴンの巨大な足跡を見たからな。それも湖の周りに幾つもだ。普通砂漠に

ドラゴンは居ない。暑い所に普通は生息したがらないからな。伝説のドラゴンとなればまた話は変わるのだろうが」

バラリーの質問にグレトルは自分流の答えで返した。

「取りあえずこれからどうする?」

「少し待ってみよう。15分位しても何も来なかったら、駅に戻ってそのまま王都に向かおう」

「わかった」

サエリクスのその提案に肯定の返事を淳は返す。と言う訳で時々砂埃がぶわっと舞い上がる中で、

12人はドラゴンの居場所を教えてくれたグレトルと一緒にそのドラゴンを待つ。


すると、ハールの耳が何かをキャッチ。

「……んっ?」

それはバサバサと羽ばたく様な音。これはひょっとすると。

「もしかして……」

ハールが空に目を向けると、そこにはゆっくりとこちらへ近づいて来る大きな黄色いドラゴンの姿があった。

「お、おいあれ!!」

「うわ、ドラゴンだ!」

「おいおいマジかよ」

他のメンバーも口々にそのドラゴンを見つけて驚きの声を出す。


そのドラゴンは13人の上空を1度旋回し、ゆっくりとオアシスの中にバサバサと翼をはためかせながら着陸した。

『人間が大勢でこんな所まで来るとは、私に何の様だ?』

「おおう!? 喋ったぞこいつ!」

そしてドラゴンからは人間の言語が聞こえて来た。それに思わず感激するメンバー達だが、感激し続けていても

始まらないので最初に藤尾が口火を切る。

「あ、ええと……伝説のドラゴンって言うのはあんたの事かな?」

そのドラゴンは藤尾の問いに困った様な声を出す。

『む? 伝説かどうかは知らないが、私は見ての通り竜族の一種だ。それよりも私はてっきり人間が居ないと

思ったからここに来たのに……御前達は何者だ?』

「えっ?」

人間が居ないからここに来た、と言う事は如何言う事なのかさっぱりわからない。事実自分達はこうしてここに居る。

『だがこうして近く迄来て、ようやく人間の存在が1つだけ感じられる。そこの黒くてでかい奴からな。

だが後の12人からは人間の気配をまるっきり感じない。こんな事は初めてだ』

12人にとってもそうだが、このドラゴンにとっても非常に困惑する事らしい。それよりも、自分達の目的はこの

ドラゴン達に用があったのでその事を12人はこのドラゴンに話してみる事にした。


『ふうむ。そんな事があって御前達は異世界からやって来たのだな、このヘルヴァナールに』

「ヘルヴァナール?」

『この世界の名前だ。しかし異世界人等と言う存在は私にとっても初めての事。

余り公にするのは控えた方が良いだろう。少なくともこの国においてはな』

「え、如何言う事?」

和人が思わず聞き返すと、ドラゴンからはこんな答えが。

『このシュア王国は魔術が発展しているが、それ以上に貴族出身の者が中心で

構成されているからそう言った輩が御前達の様な特別な存在を求める、

あるいは敵視をする確率が非常に高い。そしてシュアだけでは無く他の国でもな。

……そして、御前達の目的の1つが私に会ってその甲冑を届けろと言う事だな?』

「そうなんですけど……もうこれで大丈夫ですよねぇ……?」


由佳が戸惑いがちにそう問う。

『ああ。だが、御前達はこの世界にまるっきり存在感が無いのだ。そしてその声の言っていた

波動についてだが、私と同じ様な波動を発しているのはこのメンバーには2人程居るな』

「はっ? ふ、2人?」

『そうだ。まずそこの筋肉がついている銀髪の奴。それから後ろに居る金髪の黄色いシャツを着ている奴だ』

「と言う事は俺と……淳だな」

ドラゴンに指名されたのは、何と淳と浩夜の2人だけであった。そしてその後に、淳には驚きの事実が明かされる事に!!

「お、俺と浩夜だけなの?」

『そうだ。それ以外からは私は何の波動も感じない。それと……御前の方は私の波動とちょっと違う様な気がする』

「んなっ!?」

『何と言うか、同じ波動なのだが違和感があるのだ。私にも良くわからないが。取りあえず、私が言えるのはこの位だ』

そのまさかの事実に、淳は口が少し半開きになるのであった。


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