Run to the Another World第46話


「よーし、これで全員揃ったな」

サエリクスが駅前に合流したメンバー全員に点呼を取って確認し、

12人全員がこれで揃ったのである。

「それじゃあ情報の纏めをしよう。まず俺達のグループだが、

この国の名前はシュア王国。それから王都へ向かうには列車を使って

王都の駅で降りると良いとの事だ」


バラリーがまず基準となる情報を他のメンバーに報告し、続いては

ハールとアレイレルと和人のチームだ。

「何だ……この世界の事はわからなかったのか。まぁ良い。俺達は

結構そっちと被っているんだが、列車を使って王都へと向かうのが

当たり前みたいだ。そんな訳で列車が実用化されている分、

通常のファンタジー物と比べればかなり移動の面では楽になると思う。

後は列車の動力源が魔力だって話。その魔力で走る事の出来る

列車があるのが大きな特徴で、魔術もかなり発達しているんだってよ」


アレイレルがあの男から聞いた情報をメンバーに伝えたが、ハールがさっと手を上げる。

「ああ、それと国王は僅か23歳だって話も聞いたよ。それから王都迄は列車で3時間位。

国境迄はファルスと言う国迄大体半日、バーレンって言う国は1日位だって。ここ迄」

「だとしたら、俺達はかなり王都に近い町に居るって事だな」

ハールの報告を聞いた栗山がそう漏らした。


「俺からも。俺達の世界でもある様に、この国でも地下の闘技場があるんだってさ」

「闘技場?」

博人が思わず聞き返すと、和人は1つうなずいて続ける。

「何か裏の世界の実力のある奴等が戦うとか言ってたから、恐らく非合法の闘技場だな。

場所は王都の何処からしい。詳しい事は知らないってさ、聞いた話だと」


続いては博人と由佳と藤尾の王城探索チームだ。

「俺達の報告は殆んどハール達と被るけど……列車の乗り方位かな。

俺等は切符を買ったり定期を買ったり金をチャージしてスキャンしたりするけど、

ここの国では乗車証を作らないと列車には乗れないらしいぞ。

王城は当たり前だが王都の駅で降りれば辿り着くって話だ。俺等は以上」

まずは乗車証を作らなければ行けないので少々面倒臭そうである。


最後に重要なチームの栗山、浩夜、橋本のドラゴン捜索隊。

「俺達は結構な情報が手に入ったぜ!」

「本当か?」

「勿論だ!!」

ぐっと親指を立てて満面の笑みを見せる浩夜に、疑問の顔色を向ける藤尾。

「えっとだな、まずはドラゴンの居場所についてだがどうやら遺跡を住処としているらしい。

その遺跡は、この地図に親切な旅人が書き記してくれたんだ!」

そう言って地図を広げ、他のメンバーに黒い丸で示された場所を指で指す浩夜。

「まずここから1時間くらい列車に乗っていけば、ソヴェルークと言う町に着くんだって。

そこから砂漠に向かって歩いて行けばオアシスがあるんだとさ。そこが1つ目の遺跡。

で、はい、次は橋本が説明!」

「お、俺?」


いきなり話の続きをする様に浩夜に振られて戸惑う橋本。

「俺ばっかり話してたら疲れるから。宜しく」

「……まぁ良いか。もう1つの遺跡は結構ややこしいらしい。この山の中だと。

山の中にわかりにくい洞穴があって、そこに入ると火山があって、そこが遺跡なんだって」

「洞穴……また手こずりそうだな」

和人はRPGのダンジョンを思い出して思わず顔をしかめた。

「それとドラゴン自体の情報だけど、実際にその旅人はドラゴンに

会った訳じゃないからわからないと言う話だった。実在するかどうかも、俺達にとっても

この世界の連中にとっても怪しいんじゃ無いの?」

最後は若干投げやりになったが、そんな橋本の気持ちもわからないでもない。


「じゃー、取りあえずスケジュールとしてはまずその砂漠の遺跡、次に王都、それから

山の中の遺跡に行って、そこから先はメンバー探しと言う風にしたいが良いか?」

時間も無いしなと言うサエリクスの意見に、12人は今はそれしか無いと承諾した。

「それじゃまずは乗車証を受け取って来よう」

そう言って淳が最初に駅に向かい、その後を残りの11人が着いて

行こうとしたその時だった。


「おわっと!?」

いきなり駅舎の陰からぬっと姿を現した1人の男。

「って、あれ?」

その男にメンバー全員は見覚えがあった。

「あーっ! さっきの失礼な奴!」

「御前も失礼だよ」

男に向けて指をさしてそう叫ぶ由佳に、栗山がボソッとたしなめた。

「さっきは世話になったな」

「おかげで俺達、良い旅になりそうだ」

サエリクスは礼を男に言ったが、男の表情は何処か浮かない。

「……どうした?」

藤尾がそう男に問いかけた次の瞬間、男の口からとんでもない発言が!!


「御前達は仲間だったのか。だったら俺も混ぜろ」

「はっ?」

まさかの男の加入希望宣言に、間の抜けた声を出す栗山。

「御前達の存在は凄く気になる。嫌だと言っても着いて行くぞ」

口数が少ないのか、それで男の発言は終了した。

「……よう、どうするよ?」

「俺は別に構わないけど、他の皆は?」

橋本の問いかけにアレイレルはそう答えを返すが、ここでバラリーが

先程のハールの様にさっと手を上げた。

「なら、まずは身分を証明してもらいたい。俺達も本当の事を話す。

そしてそっちも身分を晒す。それなら俺は構わない」

そう提案したバラリーに、男はこくりと1つうなずいた。


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