Run to the Another World第40話


「異世界人達が現れたかと思えば、今度は王城と城下町への謎の襲撃か……」

シェリスが悔しそうにギュッと唇を噛むが、その瞬間ロナの顔色が変わる。

「……思えば、あの人達が来てからじゃないですか? こんな事があったのって」

「そう言えばそうだな。小さな紛争はあったにせよ、こんな大きな事件は今迄に無かった筈だぞ……」

「それにあの人達はドラゴンの行方を捜しているともおっしゃっていましたが……」

「まさか!? いや、それは無いか……」

あの異世界人達がドラゴンを動かしてこの事件を起こしたのでは無いかと

考えるシェリスだが、あの国境迄ロオンとシュソンがきちんと送り届けて来たと言うのである。


「ですね……あの人達がドラゴンの事を知っている訳がありませんし」

元々ドラゴンの事自体はトップシークレットとして扱われている為に、

彼等にとっては絶対に他人にばらしてはいけないのだ。

実はこのトップシークレットの事はバーレン皇国に限った話では無く、

ファルスとシュアのトップ達とも秘密裏に会談を行った時にドラゴンの事を

民衆にはばらさない様にしようとの事であった。


その為ドラゴンに関する文献等は城に厳重な警備や魔術等で

ロックをかけて、上層部しか知る事が出来ない様になっているのだ。

だがあの異世界人達についてはドラゴンの事を知っていた……と言うよりも

謎の声にドラゴンと会う様にと言われたらしいのである。

と言う事は聞き込み調査等でドラゴン達の事について尋ねる可能性が高い。

「そうなれば、早々にこちらも手を打つ必要がありますね」

まずい事になった……とロナが溜め息を吐いたその時、執務室のドアが慌しくノックされる。

「ロオンとシュソンです。帰還致しました!」

「入れ」

シェリスが入室を命じると、そこには慌てた様子のロオンとシュソンが。

「陛下、お怪我は御座いませんか!?」

「俺は何とか大丈夫だ。……それよりも、あいつ等はきちんと送り届けたんだろうな?」

「はい。国境迄送り届け、その後に早馬で襲撃の知らせを聞き帰還致しました」

「ご苦労だった」


ロオンとシュソンにシェリスはねぎらいの言葉をかける。だが、次の瞬間シェリスの顔色が

一変する様な報告をシュソンから受けるのであった。

「ですが、私達の乗っていたあの船も襲撃されまして……」

「な、何だって!?」

がたっと椅子を派手に動かして立ち上がるシェリス。それと正反対で、ロナはあくまで冷静にシュソンに尋ねる。

「それは本当ですか? シュソン隊長」

「はい。私達が乗った船があの飛竜の集団に襲撃されました。しかし目的は不明で、向こうの生き残りの

兵士達は飛竜と共に飛び去って行きました。……恐らく、こちらに向かった物と思われます。申し訳御座いません。

私達が食い止めていれば……っ!」

シュソンは明らかに悔しそうな顔をする。

「こちらの被害も甚大な物であると言う報告を既に私達は受けておりまして、今は部下達に復興作業をさせております。

……ともかく、陛下が無事で何よりでした」

「そうか。御前達も襲われたのか……」


しかし、更にシェリスの心を揺さぶる報告がこの後にロオンの口から語られる。

「それと……異世界の人間達についてなのですが、どうもあの12人の方達も武術の心得がある様でして……」

「はっ?」

そんな話は初耳だぞとばかりに目を丸くするシェリス。これにはロナも少し驚き気味だ。

「どこでそれを?」

「はい、実は……」

ロオンはあの12人にそれぞれ戦闘の手助けをされた事、素手だけど周りの物を上手く使って兵士達と互角に戦ったり、

見た事も無い体術を繰り出しているメンバーも居た事、更に主犯格の男2人をそれぞれ真由美と弘樹が撃退したと

言う事をそれぞれ伝えた。


「くそっ……なら、これでますます俺達の計画が邪魔される確率は高くなったと言う訳だな……」

シェリスは先程よりも更に拳を強く机に打ち付ける。それも何度も。

「だったら……命令を下す。あいつ等を追え。そしてもう1度必ず捕まえるんだ!!」

物凄いシェリスの剣幕に、ロナ、ロオン、シュソンの3人は思わず息を呑む。

今まで貧乏な国と虐げられて来た分、ドラゴンの力を自分達の手に入れてヘルヴァナールを自分達が

支配すると言う計画は絶対に他国にばれてはいけない計画なのだから。



Run to the Another World バーレン皇国編 完


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