Run to the Another World第39話


余りにも突然の出来事に、12人の誰もが驚きを隠す事が出来ない。

「えっ……どう言う事? これって」

その中で冷静な性格の恵がいち早く我に返り、画家……今の

目の前のドラゴンに尋ねてみる。

『僕等はこうして人間になる術を見つける事が出来たのさ。さっき

君達が貰っていた、その紫の液体が入っているビンでね』

「これか?」

孝司がそのビンをドラゴンに向かって掲げると、今まで存在を忘れられていた

緑がイメージカラーの男がひょいとそのビンを取り上げる。

『その男のおかげで、僕等ドラゴンはさっきみたいに人間の姿で暮らして

行く事が出来る様になったのさ』

その青いドラゴンの発言で、一斉に12人の意識が緑の男の方に向く。

「あ、あんたは一体……」

クールなジェイノリーも驚きを隠せないが、この後それ以上に驚くべき事態が

12人に待ち構えていた!!


ビンを手に持ったまま平然とする男に、青いドラゴンがこんな一言を。

『もう良いか。とりあえず見た方が早い。アサドールも戻って』

「分かった」

アサドールと呼ばれた緑の男の反応に、まさか……と12人が思う暇も無く、今度はその男の

身体が光り始める。そしてその男のシルエットも光の中でどんどん変化して行き、

光が収まった時には緑のボディをした大きなドラゴンが12人の目の前に姿を現した。

「ど、ドラゴン……」

アイトエルが呆然とした表情でそう呟くと、緑のドラゴンが口を開く。

『我輩がこのビンの研究開発をした。このシュヴィリスが人間になれていたのも我輩のお陰だ。

それじゃあ何故、我輩達が御前達異世界の人間をこうして連れて来たのかを説明する事にしようか』


まずは2匹のドラゴンが自己紹介をする。

青い方のドラゴンはシュヴィリスと言う名前で人間としての職業は画家。普段は余り外に出ない

引きこもり体質らしく、細々と色々な場所を回っては画家として生きているらしい。

緑のドラゴンはアサドールと言う名前の学者のドラゴン。シュヴィリスと同じく伝説のドラゴン達の

1匹でもあり、7匹居るそのドラゴン達の中では1番若いのだとか。ただしシュヴィリスによれば若いが

故に一番気も短いらしく、カッとなりやすい性格。世界中を学者として飛び回っているらしく、

今自分達が居るバーレン皇国の情報は元より他の国々の情報に関しても詳しいらしい。

更にはこの伝説のドラゴン達が人間になれる方法を発見したのは彼だが、7匹のドラゴンの中で

最初に戦い始めたのも彼らしい。


『僕等竜族は長くても1万年の時を生きる。普通のドラゴンは大体5000歳前後で死んじゃうんだけど、

伝説の存在である僕達は先祖が大体8000年位生きてたのかなぁ? 君達人間は長生きしたとしても

確か70歳とか80歳位まで生きるんだろ? だったらその100倍って考えて貰えば良いか』

「1万年かぁ。それだけ長く生きててつまらなくないか?」

真由美がそんな疑問を口にするが、アサドールがその疑問に答える。

『つまらなくは無いさ。色々な世界の移り変わりを長い間見られるんだからな。先祖って言っても今の我輩が

4代目だからそんなにドラゴンの歴史は長い方でも無い。この世界が出来たのがどうして出来たのかも

我輩達には分かってはいないからな。……それはそうと話の続きだ』

だが、アサドールが話を続け様とした時シュヴィリスが訝しげな発言をする。

『待ってアサドール。人間達の足音が聞こえる』

『……え?』


しかし岩村やディール、弘樹等の12人の耳には何も聞こえなかった。

「何も聞こえないが?」

「気のせいじゃないのか?」

「ああ、俺も何も聞こえないぜ?」

だけど2匹のドラゴンはそれでも訝しげな表情を緩めない。

『まずいな、ここに居たら登山客がまた来るかもしれない。違う場所に移動しよう』

『念話で他の奴等にも連絡を取ってくれ』

『分かったよ』

12人にはその念話と言う物が何かは分からなかったが、ここに居るとまずいと判断したドラゴン2匹は

6人ずつをそれぞれ背中に乗せて湖から大空へと飛び立って行くのであった。


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