Run to the Another World第37話
そして自分達も、まずはこの街から5日程歩いた場所にあると言う遺跡へと
ファルス帝国に入る前に向かう事にした。
……のだったが、そんな12人にまた新たに話し掛けて来る人物が2人。
「ねぇねぇ、ドラゴンの遺跡について調べているの?」
「その話、我輩達も興味がある」
「えっ?」
真由美がワンテンポ早く、そして残りの11人も振り返った先に立っていたのは2人の男。
まず1人目が青い髪の毛に青いシャツ、青い瞳に青いズボン、青いショートブーツと青と言う
イメージカラーが全身にくまなく行き渡っている男だった。もう1人は緑の髪の毛に緑の目、
緑のシャツに緑のズボン、そして黄緑のブーツと言う緑がイメージカラーだと言うのが
はっきり分かる男だった。
その2人の内、青い男が持っている革の鞄からは絵筆や絵の具が入っているのが見える。
更に背中に背負っている革の袋からも画材らしい道具がはみ出しているし、
手は絵の具で汚れている。
「その格好から察するにあんたは画家か? 何の用だ? 絵なら金が無いから買わないぞ」
男の職業をその持っている道具で察した12人の内、1番クールなジェイノリーが
けん制するかの様にそう言ったのだが、男は若干ムッとした表情になりながらも答える。
「違うよ。確かに僕は画家だし絵も売っているけどそう言うんじゃない。話を最後まで
聞かない人間はこれだから困るよ。僕はドラゴンの遺跡について調べているのかって
聞いてるんだ。絵を買うか買わないかの話なんか今してない」
何倍にも増して言い返さないと気が済まない性格なのだろうか、すごく腹の立つ
言い方をするその男だが12人は大人の余裕でさらりとかわす。見た感じで男は30歳
前後に見えるのだが、実際の年齢なんてこっちも知ったこっちゃ無いのが現状だ。
「で、調べてるの? 調べてないの?」
「まぁ調べてるけど、それがどうしたってんだよ?」
「と言うか何で俺達があんたにそんな事を話さなきゃいけねぇんだ?」
でもやっぱりその言い方に熱くなりやすい孝司と弘樹はカチンと来ていた様で、ついつい
喧嘩腰になってしまう。
「まぁ待て、俺達は喧嘩しに来てる訳じゃ無いんだ。不必要なテンション作るな」
「そうそう……調べてるのか調べてないのかって言うのなら、私達は調べているわ」
冷静沈着な性格の岩村と恵が2人をそれぞれなだめ、男の話の続きを聞く事に。
「だったらさぁ、僕の絵画のモデルになってよ。そうすればそこまで馬車の代金持ってあげるから。
金が無いって事は大方歩いて行くつもりだったんだろうけど、その遺跡は結構時間が
掛かるし歩くのも割と荒れた道を通るから大変だよ」
「えっ? 何で俺達がモデル?」
ディールがきょとんとした顔で聞くが、画家の男は最もな意見を口にした。
「だってそんな服装、僕初めて見た。だからそう言った服装を忘れない内に描いて置きたい。それに
その遺跡で待っていても何時ドラゴンが現れるか分からないでしょ? だったらその遺跡で君達を書きたい」
「ぜ、是非お願いします!!」
大塚がガバッと頭を下げるが、こんなに虫の良い話はどうも怪し過ぎる。
「なぁなぁ、ちょっと待ってくれよ。俺達初対面だろ? そんな……俺達のポーズを描いて置いて、後で
押し売りしようって言う魂胆だろ? 良くあるんだよなぁ、他の国でも。そう言った手口が怖いからさぁ、
まずは身分を明らかにして貰わないと俺達だって賛成出来ないぜ?」
陽介は社会科の教師で世界史の授業を主に受け持つが、社会科教師として経済や治安の面には
敏感だ。だからこそ彼の言う様な、悪徳画家が良くやるこの押し売りの手口も当然知っている。
「ふうん、確かにそう思われても仕方無いかもね。この世界にも当然そう言う人種はいるから。でもねぇ、
僕はそこまでお金に困っちゃいないよ。伊達に世界中を回って絵を描き続けている訳じゃ無い。
ただ単に君達に興味を持った。お金ならこれだけでも今持っているからね。最高級の馬車だって用意出来るさ」
男はそう言って財布を見せて来た。その中には確かにぎっしりと札が入っている。だからと言って彼の事を
信用する事は出来ない。
「そんなの、幾らでも別の仕事で稼げるだろ。あんたが本当に画家なのかも怪しいし、怪しい仕事で
稼いだ金を画家の仕事で稼ぎましたって幾らでも言う事だって出来る。
俺達だって長く生きてる訳じゃねぇ。上手い話である程、そこには裏があるって言うからな!」
最大限のどや顔をしながら明が持論を言うが、そんな彼の言葉にも画家の男は何処吹く風だ。
「君達も疑り深いね。でも、長く生きている割には僕の言葉の真意に気づけない様だね」
「それはどう言う意味だ?」
意味深な事を言い出したアイトエルに、衝撃的なセリフを画家の男は吐き出した!!
「異世界の人間って言うのも、たいした奴等じゃ無さそうだって言うのが良く分かったよ」