Run to the Another World第36話
「で、もう1つはこの山があるだろう。ここにドラゴンが住んでいると言う話だ」
シュアの中央部分にある山を指差す男。
「ここに登山道があるんだが、そこを通って行くと見つかる筈だ」
「わかった。詳しくどうも」
ジェイノリーが御礼を言いながら地図をしまう。
だが、ここで疑問に思っている事を岩村と弘樹と陽介がぶつけてみる事に。
「ちょっと良いかな」
「何だ?」
「何で俺達にそこ迄教えてくれるんだ?」
「何でって、御前達が情報を求めているからだろう」
「それはそうだが……」
どうにも腑に落ちない点があるが、今の岩村にはそれが何かは分からなかった。
「じゃあ俺からも質問。俺達がぶつかった時に、何か紫色の液体が入ったビンを落としただろう? あれ、何なの?」
「これの事か?」
メッシュの男はそう言ってビンを取り出したが、意外な事も言い出した。
「……そう言えば、これは御前達が持っていた方が良いかもな」
「えっ?」
疑問の声を上げる弘樹にビンを押しつける男。
「言い忘れていた。このビンはその遺跡の1つで入手した物だ。これを持って行けば何かに役立つかもしれないだろう」
「良いのか?」
「ああ。俺達は大事な物だと思っていたんだが、ドラゴンの事を調べているのなら御前達が持っていた方が良いと思ってな」
「そうか。なら有り難く受け取っておくよ」
「それだけじゃなくて、まだ沢山見つけたから全部やろう」
見た限り、ビンは50本位ありそうだ。
「俺からも質問がある。ファルスを横断するのにその乗り合い馬車でどれ位だ? それよりも、転送装置は無いのか?」
「馬車で帝国を横断するなら大体普通のスピードで10日位と言う所か。結構飛ばすからな。あの馬車は。
もう1つの遺跡なら帝都に転送装置があるから、それを使ってその遺跡となっている塔の近くの町まで行け。
町まで行ったらすぐ塔はわかる筈だからな。帝都迄は幾つかの町を経由して行く事になるが、ファルスは金があるから
転送装置がどの町にも大体付けられていて、移動時間は割りと短い筈だ」
だが、この後に金髪の男の口から衝撃的な事実が!!
「それと……急いだ方が良いかもしれないです。恐らく、騎士団が貴方達の事を狙っているかと」
「へ?」
アイトエルがその発言にぽかんとした顔になる。そう言えば金髪の男はさっきから何やら考え込む様な仕草を見せていた。
「ドラゴンの事は機密情報として守られているらしく、その事を口外されるのを国は極度に恐れています。
ですから、貴方達を狙って来る可能性は充分にある」
「何でそんな事がわかるんだよ?」
ディールの言葉に真顔で金髪の男は答えた。
「騎士団に知り合いが居まして。それで……その事を教えて貰ったんです。実際に僕達も狙われた事がありますから」
「なら、何でそのドラゴンの事を探ってるんだ?」
「旅人ですから、色々な事を知りたいと思いまして」
しれっと答える金髪の男だが、どうにも怪しい。だが本当の話と言う可能性も捨て切れないので、それ以上追求するのは止めた。
「……俺達はそろそろ行く。御前達も国境を通るんだな」
「あ、俺から最後の質問。御前達はドラゴンに会った事はあるのか?」
その孝司の質問に、メッシュの男は首を横に振った。
「いや……俺達は会った事は無い。遺跡に行ってもドラゴンなんて居ないんだよ」
「そうか……貴重な話をありがとう」
孝司が最後に御礼を言って、12人は男達と別れるのであった。