Run to the Another World第33話


岩村、陽介、ディールの3人のグループで情報収集をするのは、この世界から自分達が元の

自分達の世界に戻る為の条件として提示された、伝説のドラゴンについての物であった。

それ等を集めて行かない事には自分達が元の世界に帰る事が出来ないのだが、同じドラゴン関係と言う事で

昨日自分達を襲って来た飛竜にも関係があるかもしれない。

なので3人はその事にも絡めて情報収集を進めて行く。道行く人に聞き込んだり、兵士達に質問したりして行くが

ドラゴンの事はなかなか誰も知らない様子だ。

「うーん、魔物としてのドラゴンはそこ等中に居るって聞いてるけど、伝説のドラゴンなんて誰も知らないのかな」


ドラゴンと言う種族自体は、この世界においては地球における車や自転車と同じ位に常識的な物として扱われている物である。

だが、何処かに封印された大昔のドラゴン等誰も聞いた事が無いと言うのだ。

「港町だから旅人とかから色々情報が聞きだせると思ったけど、俺等港の方とかって行ったっけ?」

「いいや、それはまだだ」

「じゃあ行ってみよう」

岩村がまだ行っていない事を確認し、ディールが行く様に促す。

すると、港で1人の旅人から思いがけない情報を手に入れる事が出来た。


何でもこの港町にやって来る前にそうした遺跡の話を聞く事が出来たらしく、その事を教えてくれた。

「はぁ……マジかよ……」

「まさかここから5日も掛かるとはな」

「それでも俺達は行くしか無いよな……ハハ」

陽介の口からは乾いた笑いしか出て来ない。

まだこの世界に来て全然時間が経っていない。そんな状況下の中でドラゴンを探して、それから

散り散りになったメンバーを探してなんて良く考えてみれば無謀過ぎるミッションだ。

「そもそも、あの声が何も言ってくれないから何で俺達を呼んだのかは全くわからなかったがな」

「だけど、俺達にこうしたミッションを命じるって事は何かしらの理由がある筈だ。そうでもなければ

ちょっとばかり車好きで、ちょっとばかり武術をかじっているだけの俺達に、一体何の価値があるって言うんだ?」

誰に問うでも無く、少し卑屈な事を言うディール。


だけどそうでも思わないと実際の所やっていられない訳である。あの時に自分達は東京の店に集まっていた。

そこでひょんな事から知り合いになったヨーロッパの5人のメンバーも一緒に巻き込んでしまって、結果としてこの異世界に

連れて来られ、いきなり訳のわからないミッションをこうしてこなしている訳だが、どうにも自分達をあの謎の声が

必要とした理由が不鮮明なのである。

「わざわざ俺達を異世界から呼び寄せる位だから、この世界における神みたいなもんじゃないのか?」

「神様か。俺ん家は仏教だからそんなもん信じちゃいねーけどよ。その神様とやらに会ったらまずは1発くらいぶん殴ってやらねーと

気が済まないってーの。そうでもなきゃこんな所で俺達がこうして焦っている事なんて無かったって言うのにさ」

「全くだ。俺も地球ではまだまだやりたい事だって沢山ある訳だしな。首都高で走りを極める、武術を極める、趣味の料理を極める。

やりたい事が沢山あり過ぎて、この世界に留まっている訳には行かないんだからよ」


もう3人共40歳前後になってしまったと言うのに、まだまだ道を究める事だけに関してはエネルギーが有り余っている。

それだけに元の世界に帰りたいと願う気持ちは他のメンバーと同じだが、3人はこの時に一層その思いを強くするのであった。

「とにかく、俺達が情報収集できるのはこれ位じゃないか?後は他のメンバーの情報に期待するだけだろうな」

「ああー、そうだな。俺達はもうこれ以上進展が無いみたいだし、他の奴等もそろそろ合流してるんじゃないか?」

「だったら俺達も戻って合流しよう」

3人はこれ以上の情報収集を諦め、合流ポイントへと急ぐ。しかしその途中で急ぎ過ぎていた為か、ディールが路地裏から出て来た

2人の人影にぶつかってしまった。

「うおあ!」

「ぬあ!」

「おおっと! おい、何処見てるんだ」

「あ、ああ、すまない」


その2人はどちらも黒を基調とした服装に加えて、腰には2人共剣をぶら下げている若い男達であった。

まず自分達より年上と言う事はあり得ないだろうと言う位の若い男達だが、剣を持っていると言う事は冒険者か旅人の類だろうか?

「気をつけてくれ。おい、行くぞ」

「ああ」

男達は2人共3人に余り構う事も無く、そそくさと何処かに向かって歩いて行ってしまった。

「大丈夫かディール?」

「ああ。でもあの2人にも何か聞けば良かった。剣をぶら下げているだけで無く雰囲気でも何だか戦っていそうな奴等だったし。大体分かる」

ディールは2人の後ろ姿を見ながら、岩村と陽介に自分の考えをぶつけるのであった。


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