Run to the Another World第32話


大塚と恵と兼山のグループはこのバーレン皇国自体についての情報を集めるチームとして行動する。

この国に来てまだ日が浅い事もあり、考えてみればバーレン皇国の中で最初に行ったのがあの王城であった。

そこでは事情聴取をされ、剣も回収されてすぐに王城を追い出される形になったので、実際の所

このバーレン皇国の事は自分達は全くと言って良い程知らないのである。

だからこそ、このバーレン皇国の事は知っておかなければならないと考え、手当たり次第に国の事を聞いて回る。

流石に国の中だけあって、聞けば聞くだけ国の情報が集まるのは良い事だ。

「流石地元だ。集まる集まる」

「この分だと私達の方は結構順調ね」

「後は他のメンバーの事を知っている人が居ないかと言う事についても聞いてみようかな。それから遺跡の事とか」

その後も情報収集を続けて行く3人。このバーレン皇国はこれから自分達が行く予定のファルス帝国と

昔戦争をした事があると言う事、その戦争で大きな被害が出てしまったのでその復興の為に国の金が

かなり出てしまい、結果として余り裕福な国ではなくなってしまった事がわかった。

「成る程ね、だったら私達の様に部外者を置いておく余裕も無いから、追い出しに掛かると言う事も納得が行くわ」

「気持ちはわかるが……異世界人だからと言ってえこひいきはしないんだろうな」

「要するに、国の利益にならない人間は出て行けと言う事なんだろう」


働いて税金を納めるのは日本でもこの世界のこの国でも同じ事であると言う事だが、それに関係して余り自然の

開発も進んでいないので、バーレン皇国はカシュラーゼの3カ国の中で最も自然が多い国であると言う事も聞き出せた。

「自然が多いとなれば、それだけドラゴンや他の奴等を探すのも難しくなりそうだな」

「おう。ドンドン追い込まれて行ってるぜ、俺等」

「それでも私達に出来る事をするだけよ」

それからも情報収集を続ける3人だが、他のメンバーがこのバーレン皇国にやって来たと言う情報は掴めない。

更にそれとなくドラゴンの事も聞いてみたりしたのであるが、その方についても今の所有力な情報は掴めなかった。

「ふーむ、まずいな。とにかく俺達に出来る事はここ位の様だし、とにかく一旦皆と合流しないか?」

「そうだな。そうするか」

「他の皆も情報が集まっていれば良いけど」


今の自分達に出来るだけの情報は集めた訳だし、後は他のメンバー達の情報に期待するしかない。

そう思って取りあえず合流ポイントに向かおうと歩き出したその時だった。

「すまない、ちょっと良いかな?」

「はい?」

突然3人に声を駆けて来た人物が居た。その男は黒を基調とした服装をしている金髪の男で、

3人から見ても明らかに自分達より若いだろうと言う顔の男である。

「何ですか?」

「僕の知り合いを見かけなかったか?」

「知り合い?」

「僕と同じ黒っぽい服に、茶髪でその中に若干白っぽい毛が混じってる男だ」


しかし、3人には当然見覚えが無い。

「いや……見てないな」

「そうか、わかった」

「なんなら俺達、結構人数が居るから一緒に探そうか?」

「それは大丈夫。後は僕が1人で探してみるさ」

「ああ、そう」

見ていない事を報告すると、男は踵を返して走り去って行った。


「何か、服装からしてもダークな奴だったな……」

「ああ。S2000乗ってる夜の御前と似た様なもんだよ」

「確かに。でも、何処かきな臭いイメージもあるわね」

その走り去って行く男の後姿を見ながら、何か得体の知れない不安を3人は感じるのであった。

その得体の知れない不安が何なのか今は当然わからないし、これから先だってわかるかもしれないしわからないかもしれない。

でも今は、まず自分達のミッションを解決する事が先であるしこの訳の分からない異世界に放り出されただけではなく、

訳の分からないミッションでこうして自分達はあたふたしながらミッションをこなそうと行動している訳なので、今はあの男に

構っている時間も無い。

それにこの町は狭い町なのでこの町にその知り合いの男が居るのであればすぐ見つかる筈だし、居なかったとしても

自分達も男と一緒に探そうと言う提案は男自身に断られたのでどちらかと言えば手間が省けたと言う状況になっている。

だからこそ、自分達のやるべきミッションに最大限の時間を割く事が出来ると言う事でもあるから、3人は心の何処かで

ホッとしている事に気が付く。

「それじゃ戻るとしよう。そろそろ他のメンバーも待っていると思うから」

「そうだな」

「情報収集が終わったらファルス帝国ね」

もうこれ以上誰かに話しかけられませんようにと思いつつ、3人は合流ポイントへと急ぐのであった。


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