Run to the Another World第31話


真由美と弘樹と明は、自分達がこれから行く予定のファルス帝国についての

情報収集を開始。事前にどんな帝国なのかと言う事をある程度知っておいた方が

その帝国で活動する時に役立つのは間違いない。なので、バーレンとファルスの

国境から目と鼻の先のこの町で情報収集に勤しむ3人。流石にバーレンと

ファルスの国境に位置する町である為に、ファルス帝国の情報は聞けば聞くだけ集まって来る状態だ。

「これだと、他の情報も集まりやすいんじゃないか?」

「どうだかな」

「まぁ、俺達は俺達の情報を集めるのに専念しよう」


そうして情報を集めて行くと、段々とファルス帝国がどの様な国なのかがわかって来た。

ファルス帝国はカシュラーゼと呼ばれる地域の中でトップの軍事力を誇る国であり、

その軍事力を活かしてこの今自分達が居るバーレン皇国に戦争を仕掛け、

バーレンは敗北したらしい。そして今では休戦協定を結んだものの、戦争が再開しないと

言う事では無いのである。更に自然が一杯のバーレン皇国とは違い、街や村の数が圧倒的に多い。

その為自然の数も殆んど無く、最も目立っているのはファルス帝国の統治している

大陸の中央を縦に両断する様に走っている山脈であった。そしてその近くに帝都があると言う事である。

「町や村が多いんだったら、それだけ多くの情報が集まりそうだ」

「ああ。でもこの時間との兼ね合いも見たいよな」

「そうだな。他のメンバーの行方も分からないし、どうにかしなきゃ」


その後も懸命に情報収集をして行くが、それ以外の事はわからず。他のメンバーがファルス帝国に

行っていないか、またドラゴンの事はわかっていないのかと言う事も聞き回ったが、それ等の情報は掴めない。

どうやらファルス帝国ではドラゴンの類は発見されていない様である。野良の小さな……と言っても

人間から見ると十分大きいサイズのドラゴンは至る所に生息しているのだが、何処かに封じられたドラゴン等は

全く聞いた事も見た事も無いと言う人ばかりであった。

また他のメンバーに関しても、まだこの世界に来て日が浅いせいもあってなのか全く情報が掴めない。

他のメンバーと合流する事も大切だし、ドラゴンの事も調べなければいけないし、あの剣の行方も追わなければ

ならないので、聞く事が多すぎると3人は改めて実感する。

「うーむ、情報としてはこれだけか」

「そうだな。だったら……そろそろ戻るか?」

「そうするか」

3人は情報収集を終了し、合流地点の町の入り口に戻ろうとしたその時だった。


「わっ!?」

「おわ!」

人通りの多い場所で3人は聞き込みをしていた為、突然人込みの中から飛び出て来た1人の男とぶつかってしまった。

「あつつ……だ、大丈夫ですか?」

「ああ、こっちは何とか。それじゃ俺はこれで」

その黒を基調とした服装に茶色の髪の毛をした若い男は、どこか慌てている様な様子でそそくさと立ち去って行った。

「何か慌しい奴だったな」

「ああ……あれ? 何だこれ?」

「どうした?」

弘樹が地面に落ちている何かを拾い上げる。

その何かとは、紫色の液体が入った謎のビンであった。

「さっきの奴かな?」

「そうかもな。まだそう遠くには行ってない筈だ。探そう!」

と言う訳で情報収集から人探しになってしまった3人だったが、人通りの多いこの道では、木を隠すなら森の中の要領で

さっきの男の姿も見えなくなってしまっていた。

「どうだ、居たか?」

「いや、こっちは駄目だ。そっちは?」

「こっちにも居なかったぜ……どうすんだよこれ」

一先ずこのビンは近くの兵士に届ける事に。

「はぁ、これで取りあえずは安心かな」

「ああ。それじゃ戻るとするか」

「おう」


ビンを近くの兵士に届け、それから合流ポイントへと向かう3人だったがその途中でさっきの男と再び遭遇した。

「あ、おい、あんた等!」

「あれ、さっきの?」

その男は慌しく3人に駆け寄って来ると、凄く明に顔を近づけて質問をする。

「さっき、俺がビンを落とした筈なんだが知らないか?」

「え、ああ、紫の液体の奴?」

「そうそれだ!」

「それだったらあの建物の前に居る兵士に渡したぞ」

「そうか、わかった。助かったぞ!」

そう言い残して男はまた慌しく去って行った。

「やっぱり慌ててる感じだったな」

「おおかた、何かの秘薬とかそんなもんじゃないの?」

「えー、でもそんな大事な物をあんなに乱雑に扱うかな?落とすとか普通はしない様にすると思うけど」

何処かあの男の行動に疑問を感じながらも、今はそれよりももっと大事な事をしなければ行けないので、

3人は合流を急ぐ事にした。その途中、ビンを兵士から受け取った男がさっきの3人を見かけて、

訝しげな目でその行く先を窺っていた事等、3人は全く知る由も無かったのであるが。


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