Run to the Another World第30話
ケドールの町は国境に近いだけあって、町自体の規模は小さいながらも割と栄えている。
国境迄僅か150メートルの距離なので、海の目と鼻の先の立地だ。
なので海産物が獲れたり、船で他の海沿いの町迄連れて行ってくれたりもするのだと言う。
となれば、このケドールの町でドラゴンの情報も入って来るかもしれない。
そんな期待を膨らませつつ、12人は4人ずつのグループに分かれて情報収集を開始するのであった。
思えば、この国についても余り話して貰えなかった気がする。城についたと思えばすぐに軟禁されてしまい、
処遇が決まったと思えば今度はすぐに国外追放となった。結局あの自己紹介も何の意味も無く、
ただ個人情報だけを抜き取られて城の外へと追い出されてしまった。この国はどう言う国なのか、
それからこれから行くファルス帝国の事、またドラゴンの事や城を襲った人物達の事等、やるべき事が一杯だ。
と言う訳で集める情報のテーマにしてはその4つに絞られる事になり、1グループで1つずつの情報収集を開始。
町自体は余り広くないので、情報収集と言ってもすぐに終わる事になるのであったが。
ジェイノリー、アイトエル、孝司の3人は盗まれた剣の行方と飛竜のグループの事について聞き込みに回る。
「飛竜の軍団って位だから、さぞかし大勢なんだろうな」
「それでなくても目立ちそうな物だけどな、飛竜は」
「こっちに飛んで来ていたら良いんだけど」
実際の所、それだけの飛竜が城に襲撃を仕掛けたと言う事になれば目撃情報の1つや2つがあったっておかしくない。
しかし、あの兵士が早馬を出してこっちに追い付いて来たのはついさっきの事である。
となれば、この近辺の町の人間はその飛竜のグループを見かけていない可能性もあると言う事だ。
「港町だから色々と情報は入って来るんだろうけど、文字通り昨日の今日の話だろう?
となれば、余り有力な情報が見つからない可能性が大きいと俺は思うな」
「そんなもん、聞いてみなきゃわかんねーだろ」
孝司が若干イライラした口調でジェイノリーの発言に反論。剣を盗まれて元の世界に帰る事が
絶望的になって来た今、イライラするのもわからないでも無いが。
何とか孝司をなだめつつ、町の人間に情報の聞き込みを進めて行く3人。
だが、それはジェイノリーの予想通り上手く進まない。商店を回り、港の漁師や旅人、
船員に尋ね、それから町の警備をしている警備兵にその飛竜の事を訪ねてみるが、見た者は誰も居ないと言う。
「ああ〜、やっぱり駄目か」
「町自体が小さいのもあるけど、これだけ人をあたっても目撃情報が1個も出て来ないと言う事は、
こっち方面から来たとかこっち方面に飛んで来た訳じゃ無さそうだ」
実際にあの船で自分達は1度襲われているが、その時は真由美と弘樹が大活躍してくれたおかげで
主犯格の2人に大ダメージを与えて撃退する事に成功している。しかし、こちら側でその主犯格の2人を
見た人が居ないと言う事になると、考えられるのは……。
「この外側の大陸から来た奴等か、それともこっちのバーレンとは真逆の方から来た奴等と言う事になりそうだぜ」
さっきよりも若干落ち着いた口調で、地図を持っていた孝司がその地図を見せながら2人にそう推理を展開する。
「俺達もあの時戦った限りだと、確か襲って来たのは金色の鎧を着込んだ連中だったな」
「ああ。連中から情報を聞き出そうにも倒した奴等は全員死んだし……」
「結構きつめにやったもんな」
「川に突き落としたりもしたし。あの時雨降ってたから流されたんじゃないの?」
「そうかもな」
自分達も金色の鎧の集団と戦ったが、狭い船の上を十分に利用して、通路で満足に武器を振り回せない
相手に格闘技の利点をフルに活かして接近戦で応戦していた。
強さとしては特別強いと言う訳では無かったが、主犯格2人と戦った真由美と弘樹はあの後に船内で事情聴取
された時にも言っていた通り、なかなか強い奴等だったらしい。
そしてその2人組の容姿は、早馬で駆けて来たあの兵士が言っていた2人組の物と完全に一致している。
「だとしたら、俺達を襲った後に目的の物が無いとわかってあの城に襲撃をかけたと言う事なのかな」
「でもそれだと、俺達があの城に居た事はあそこに居た奴等以外に知られていない筈だから、俺達が剣を持っていると
言う事も外部に漏れていない筈なのに」
「だよなぁ。うーん……」
謎は深まるばかり。取り合えずこれ以上情報は集まりそうに無いので、3人は情報収集後の合流ポイントの町の
入り口に戻る事になった。