Run to the Another World第29話


襲撃事件があった翌日の3日目は陸に上がって馬車に乗り換え国境を目指す事になる。

流石に大型の馬車は用意出来なかったので、4人ずつ3台の馬車を使っての移動になった。

「何か、あっと言う間の出来事だったな」

「そうだなー……」

「凄くハイペースで進んで来たって感じだよ」

「それにしても、今日の昼には国境に着くんだろ? 船から乗り換えた時にはまだ日は低かったから、

結構馬車で揺られる事になりそうだな」

ジェイノリー、弘樹、明と一緒に窓の外を眺めながら、3人に時間の予想を口にする真由美。


そしてこのバーレン皇国の旅も終わりを迎えようとしていた。馬車の窓から国境らしき詰所と大きな門が見えて来たのである。

「あれじゃねーのか? 国境って」

「本当だ。しかしでかいな」

「もうここまで来たのか。早かったな、結構」

「ここからが時間との戦いだ。今まで遅れた分を取り戻したい所だぜ」

岩村、陽介、ディール、アイトエルの4人も国境を見据えて思い思いのセリフを吐く。

馬車は国境の手前で停止し、12人は国境へと向かう。しかし、その時12人の方に向かって早足で駆けて来る1頭の馬があった。

「あれ? どうしました?」

その馬に乗っていたのはバーレンの兵士の様だ。


だがこのバーレンの兵士が、とんでもない事実をロオンに伝える事になる!!

「た、大変です! 王城が襲撃され、剣が盗まれました!」

「えっ!?」

「何だって!?」

ロオンとシュソンはその兵士の報告に呆然となる。勿論驚いたのはロオンやシュソンだけでは無かった。

「ど、如何言う事だよ!?」

「あの剣が盗まれたって言うのか!?」

「何処の誰が盗んだの!?」

「しかも襲撃って大胆過ぎるだろ!」

孝司、大塚、恵、兼山の4人はその兵士に詰め寄る。


兵士の報告はこうだった。それは昨日の夜が明け切っていない早朝の出来事で、

謎の飛竜の軍団が王城を襲撃して来たのだと言う。幸いにもシェリスに怪我等は無かったが、

城が襲撃されただけでは無く宝物庫や武器庫も荒らされまくり、使用人や兵の中に死者も

出た挙句あの剣を奪われてリーダー格の2人には逃げられてしまったのだと言う。

「俺達が帰る為に必要なあの剣が何処の誰かも分からない奴等に盗まれただって!? 絶対に取り戻せ!!

死んでも取り戻してくれないと俺達が困るんだよ!!」

12人の中で最も熱くなり易い性格の孝司がその兵士に詰め寄る。

「お、落ち着いて下さい!!」

「これが落ち着いていられるかってんだよ!」

何とかロオンとシュソンが孝司を押さえ込み、兵士から詳しい事情を聞く。


リーダー格の男はどうやら2人組らしく、1人はオレンジ色の髪の毛に槍を使っていた若い男。

もう1人も若い男で、青い髪の毛に青い目をしている弓使いの男であったと言うのだ。

その2人が剣を奪って逃げ去った後に争いは収束したが、被害は結構大きかった為早馬を出して

ロオンとシュソンの部隊にも戻って来る様にこの兵士が伝言を頼まれて来たのだと言う。

「そんな事があったんですか……」

「私達も戻らなければいけないな。では皆さん、私達はここで失礼致します」

「え、あ、あの、国境の抜け方は?」

「この通行証を国境の兵に見せて下さい。そうすれば通れます。では」

そう言い残し、馬車とロオン、シュソンの部隊は去ってしまった。


「……あれ、これって俺達自由じゃね?」

真っ先に我に返ったのは真由美であった。

「気が動転してて最後の最後で詰めが甘かったと言う訳ね」

「騎士にあるまじき失態だな」

恵と陽介も去って行った騎士団を見てそう漏らす。一先ず監視の目は無くなった。

国境の兵士達も動こうとはしない。そもそも国境迄は残り100メートル程なのだ。

一先ず、この国境の前には小さくではあるが町が広がっているので

そこで情報収集を兼ねて12人は昼食を摂る事になった。


ファルス帝国へシュアを通ってこのまま入って行っても良いが、肝心のドラゴンの情報が何も無いままだ。

それからさっきの兵士の報告によれば、あの剣が昨日の集団と同じ謎の集団に奪われたとある。

だとすれば12人が無関係の訳が無い。特にドラゴンの情報に関しては一切の情報を持っていないと

言う事になるから、少しでもここで情報を集めた方がこれから先のドラゴンの捜索に役立つ事もあるだろう。

しかし、その反面で何も有力な情報が無かったらお手上げである。もしそのドラゴンに関する情報が見つからなかったら?

もし剣を奪った集団に関しての情報が得られなかったら? そんな思いも一緒に12人の頭を駆け巡る。

それでも今は情報が集まる事を祈るしかない。

何とか有力な情報があって欲しいと願いつつ、12人はその町……ケドールへと入って行くのであった。


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