Run to the Another World第28話


12人が乗った船が襲撃を受けたその日の夜。バーレン皇国の首都ネルディアにおいては、

こちらも大変な事態になっているのであった。

「陛下っ!!」

「陛下、しっかりなさってください!」

シェリスが突然、窓の外から射られた矢によって腹に大怪我を負う。更にその数分後、

正面玄関や裏口等から一斉に金色の鎧を着た兵士が王城の兵士を殺して城に突入して来た。

また、それに続く様に皇都では多数の飛竜が町を破壊しているとの情報も入る。

「くそっ、ロオン隊長もシュソン隊長も居ないからな。俺達だけで乗り切るぞ!」

カリフォンは声を張り上げ、部下の剣士隊の隊員を先導する。


「私達は王城正面の敵を殲滅後、城下町の鎮圧に行きます!」

シュソンの副官でもある斧隊副隊長のファルレナはそうカリフォンに宣言し、

王城の正面へと部下を大量に引き連れて向かって行く。

「俺達は裏口に回る。裏口の敵を殲滅後、斧隊同様に城下に鎮圧をかけるぞ」

冷静に指示を飛ばすロオンの副官ジェクトも行動を開始。

「俺達は王城に残るグループと、城下で飛竜を迎え撃つグループに分ける。

王城に残るグループは俺と一緒に来い。城下はアイリーナに任せるぞ」

「わかりました」

弓隊隊長のグラルダーと副隊長のアイリーナはそれぞれグループを分けて指揮をし、

近衛騎士団と各部隊の援護に回る事になる。今回は飛竜と言う空からの攻撃が

出来る相手なので、弓隊の援護射撃はとても重要な物になって来る。


「ここは私に任せて、ティレフ団長は王城の鎮圧を!」

「わかった!」

近衛騎士団団長のティレフはシェリスの事をロナに任せ、自分は部下を率いて

王城全体に襲い掛かって来る敵を鎮圧する為に部下を率いて行動する。

残されたロナはシェリスに治癒魔法をかけながら安否を問う。

「陛下、御身体は……」

「ああ、助かったぞロナ。しかしあの集団は一体何者だ?」

だが、ロナもその襲って来た集団の事については何もわからない。

「私も全く心当たりがありません。今はまずその集団の殲滅、それから城下町も襲われていますからその復興です」

「わかった。俺達はここから動かない方が良さそうだ」

矢が撃ち込まれる窓際への避難は避け、壁際に身を寄せてシェリスは愛用のロングソードを抜き、

ロナは魔力を少しだけ開放しその手に攻撃魔法のエネルギーを溜めた。

更に逆の手に懐から取り出した短剣を持ち、武器を使っての戦闘にも耐えられる様に準備を整える。


もしかしたら此処にも襲撃して来た奴等が来るかもしれない。その可能性は無いとも言い切れ無いので、

何時襲撃があっても良い様にこうして攻撃手段を用意しているのだ。優秀な近衛騎士団を始めとして、

それ以外の部隊も国を守るバーレン皇国騎士団の一員である事から実力者揃いばかりであるが、

もしこれらが突破される様な事があれば大問題である。

「とにかく、今は彼等に任せて私達はここで待機です」

「そうだな」

だが、その現実はこの後すぐに破られる事になるのであった。


空からバサッバサッと何か変な音が聞こえて来たかと思うと、突然窓が破られて中に2つの人影が飛び込んで来た。

「うお!?」

「何だ!?」

シェリスとロナは咄嗟に武器を構えて2つの人影を見る。

その2つの人影はオレンジ色の頭をして黒い鎧を着込んだ緑のマントの男と、青い髪に黒い肩当てと胸当てを

着けている弓を持った男であった。男達は2人の姿を発見すると、すぐに前衛と後衛に分かれて2人に攻撃を始める。

「くっ!」

「何者だ!」

シェリスは槍を持ったオレンジ色の髪の男と、ロナは弓使いの男と勝負をする。お互いに接近戦担当と

援護担当と言う似た者同士のキャラクターの為、必然的に戦う相手が決まっていた様な物であった。

シェリスは槍使いの攻撃を的確にかわし、剣で反撃するが槍使いも上手く攻撃をかわしつつ突きや薙ぎ払いで応戦。

一方のロナは矢を放って相手の隙が出来た所に、その弓の両端に付いている刃で攻撃も仕掛けて来る弓使いに

魔術と短剣で応戦。矢を回避した後に、氷の塊を飛ばすアイスロックで弓使いに反撃をするが、弓使いはその氷の

塊を難なくかわして今度は接近戦に持ち込み、ある程度打ち合った所で距離を取ってまた矢を放つと言う戦法だ。


そうして広い執務室の中で2つのバトルが繰り広げられて行くが、約3分が経過した頃、突然男達は攻撃を止めて

口笛で飛竜を呼び寄せ、瞬く間に空の彼方へと消え去ってしまった。

「はぁ、はぁ、はぁ……御無事ですか、陛下!」

「俺は平気だ。ロナは?」

「私も大丈夫です。しかし、急に居なくなりましたね……」

男達の行動に疑問を隠しきれないまま、すぐに外の様子を確認しに行くシェリスとロナ。

どうやら城の中も城下町も戦闘終了した様だったが、その被害は甚大な物であった。城下町がメチャクチャに

破壊されただけで無く、王城の兵士も幾らか殺されてしまった。

そして最後に、ティレフがシェリスとロナに駆け寄って来た事から衝撃的な事実が判明する!

「陛下、ロナ様!」

「ティレフ! どうだ、状況は?」

「はっ! まだ全て把握出来ておりませんが、かなり被害が出ている模様です。

それと……あの異世界人達が持って来た剣が強奪されました!」


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