Run to the Another World第27話


「あー、疲れたぜ……」

「俺も……。準備運動も無しでこれだけ暴れればそりゃあ疲れるに決まってるさ……」

謎の男とそれぞれバトルした真由美と弘樹を始めとして、12人全員金色の鎧を

着込んだ謎の集団に襲われて体力を使い果たした為に、今は大部屋に戻って部屋を

片付けた後でそれぞれ休んでいるのであった。当然テーブルや椅子も元通りになり、

何とか船は今も進んでいるのである。だが、そんな12人の元にロオンとシュソンがやって来た。

「お疲れの所申し訳ございませんが、皆さんにお聞きしたい事があります」

ロオンのその言葉に何となく予想が付いたメンバーは、それぞれ疲れた身体にムチを打って起き上がる。

「皆さんは結構武術をたしなんでおられるようですね。その辺りを詳しくお聞かせ願いましょうか?」

口調は丁寧だが、その発言には有無を言わさない強烈な何かがあるのを12人はロオンに感じるのであった。


「……と言う訳で、俺達は全員護身術をやってるんだ」

「成る程、それでしたらあの兵士達を退ける事が出来たのも頷けますね。何時か機会があればもっと

良く見せて頂きたい物です。特に真由美さんと弘樹さんは、主犯格の2人と戦った様ですし」

「え? 主犯格?」

シュソンの言葉に、あの2人がそうだったのかと疑問の声を上げる弘樹。

それもその筈、あの集団の事について詳しい事は一切まだ聞かされていないからである。


その弘樹の疑問にシュソンはこう返した。

「あの集団を指揮していたのは、真由美さんと弘樹さんが戦ったと言う2人の男の様です。実際に私達の

部下が、あの男達が兵士達に指示を出しているのを見たと言う情報もあります。

それに、その2人が槍と弓の使い手でなおかつ飛竜を操る様な人物であれば、目撃情報を得る事も

た易いでしょう。港に着き次第、捜索隊を派遣する様に皇都に早馬を出しましょう」

「わかりました」

と、今度は孝司が横から口を挟んで来た。

「えっと……そいつ等の目的とかって、結局わからなかったんですか?」

その疑問にロオンは残念そうに首を縦に振った。

「はい。生き残った兵士達は全員飛竜が連れて行ってしまいました。恐らくそうする様に手懐けられて

いたのでしょうね。乗り手の居なくなった飛竜も一緒に飛んで行ってしまいましたから、かなり統率力の取れた

軍団である事は間違い無いでしょう。金色の鎧と飛竜は目立ちますから、目撃情報が出たら捕まえに行きます」


ロオンの静かな、でも力強い口調に12人は安心する。後の事はバーレン皇国の騎士団に任せて、

自分達はファルス帝国へと向かうだけである。

だが、この世界に来てまだ3日目でこんな事件に巻き込まれるとは心底ついていないとジェイノリーは首を振った。

「参ったな。俺達が何で襲われたのかもわからない、あいつ等の目的も不明、そして飛竜を操る集団。これは大きな事件の予感がするんだ」

「俺も……それは感じるぞ」

アイトエルもジェイノリーのその意見に同意した。

一先ず危機は過ぎ去ったのでこれにて事情聴取も終了し、12人は再度大部屋にてゆっくり休む事になった。

「また襲撃されないと良いけど」

「そうだな」

「取り合えず今はゆっくり休もう」

大塚、岩村、明の3人は戦いの疲れを癒すべく、すぐに眠りに入った。


「俺達も結構戦ったけど、今日の連中は本当に何だったんだろう」

「さぁなぁ……別に連中の強さは大した事無かったけど、人数だけはやたら多かったな。

あれだけ多いと、一気に攻め込まれたら大変そうだ」

「実際、俺達が戦っても大変だったしなー」

ディール、アイトエル、ジェイノリーの白人3人は今日の戦いを振り返りつつ、

敵の正体が凄く気になると言う意見を一致させながら休みを取る事に。

「これから先、俺達はファルス帝国に行くんだよな」

「ええ。今回の事もあるし、気を引き締めないと行けないわ」

「日本人は大半が平和ボケだからなぁ」

孝司、恵、弘樹の3人はこれから先の事を考え、普段平和な生活を送っていただけに

この世界では何時襲われても可笑しくない事を、今回の事を教訓に

学んだ事を帝国に行くのであれば活かさなければ行けないと思っていた。


「……で、俺もその武器に触ったら凄い衝撃だったんだ」

「俺もだ。あんな事は初めてだ」

「そう言えば、あの声も武器が使えないだの何だの言ってたっけ。それに関係があるのかな、あの現象」

兼山、真由美、陽介の3人は、それぞれ体験した武器についての

あの不可解な現象に頭を悩ませつつ、これから先の戦いはなるべく素手で

勝負をしないとまたあの様な事になるかもしれないと言う得体の知れない不安に包まれていた。

12人はそれぞれ違う思いを抱きつつ、戦いで疲れた身体をゆっくりと休める。

そうして船は、まずはシュア王国との国境へと向けてゆっくりと進んで行くのであった。


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