Run to the Another World第24話
「うおああああ!!」
襲い掛かって来る兵士を素早くローキックから
回し蹴りで川へと落とす孝司。
更にその後ろではジェイノリーがムエタイの前蹴りから
跳び膝蹴り、そのまま背負い投げで川へと投げ落とす。
それ以外の所でもバーレンの兵士達と異世界のメンバー達が
謎の金色の鎧を着込んだ兵士達と戦っていた。
何故この様な展開になっているのかと言うと、事の発端は
血相を変えて大部屋に飛び込んで来たシュソンであった。
「皆さん、大変です!! 謎の敵がこの船を襲っています!」
「はっ?」
意味がわからずきょとんとした顔で返答する真由美。
「敵? どんな?」
「飛竜の軍団とそれを操る兵士達です! 安全が確保される迄、
この部屋からは絶対に出ないで下さい!」
そう言い残し、シュソンはドアを閉めて走り去って行った。
残された12人はまず落ち着いて状況の把握に努める。
「敵に襲撃されたって?」
「しかも飛竜って……如何言う事だろう?」
「兵士達がどうのこうのとも言ってたな。そんなに大人数なのかな?」
「あの慌てっぷりはいきなり襲撃された様な感じだぜ」
「でも、何でこの船を襲って来たんだ?」
「分からないけど、襲われると言う事は何か目的がある筈よね?」
「そうでもなければ襲って来たりはしない筈だ」
色々な憶測が飛び交うが、今はとにかく待機だ。
戦いのプロに任せた方が良いと12人はその場から動かない事にする。
だがその目論見もすぐに崩れる事になった。
いきなり部屋のドアが開け放たれたかと思うと、10人程の兵士達が
部屋の中に剣や槍等を構えて飛び込んで来たからである。
「うおうおうおっ!?」
「くそっ! 安全じゃないのか!?」
「や、やるしかないだろ!」
この大部屋に兵士達が踏み込んで来た事によって、12人も強制的に
戦いに巻き込まれる事になってしまった。
まずはガタイのでかいアイトエルが大部屋のテーブルを兵士達に投げつける。
更に孝司やジェイノリー、弘樹や大塚等も同じく椅子や
小物を投げつける。
それ等に怯んだ兵士達の隙を突いて一気に攻撃を仕掛ける12人。
蹴り技が主体のメンバーで、なるべく1人ずつ相手にする様に心がける事で
武器を持った相手とのハンデを無くす作戦だ。
更に船の通路は狭いので、そのポイントも最大限に活用する。
狭ければそれだけ武器を振り回す事は難しいし、接近戦に持ち込み易くなる。
そうなれば接近戦のテクニックがたっぷり詰まった格闘技使いのメンバー達の方が
明らかに有利になるのだ。基本的には乗り込んで来た兵士達も余り強くは無く、
通路に誘い込んでヘッドロックから首をへし折ったり、タックルで川に突き落としたりと
とにかく生かしておいたらこちらがやられるので殺される前に殺す。
空には飛竜が何匹も飛んでいるが、攻撃を仕掛けて来る様な気配は無い。
どうやら飛竜達は只の騎乗用らしい。だが兵士達を相手にするメンバー達にこの後、
衝撃の事実が戦いの中で判明する事になる。
その事実を最初に知ったのは陽介であった。
アクロバティックな動きで相手を翻弄し、スライディングで相手の足を蹴り飛ばして
倒れこんだ所を傍に落ちていた剣で突き刺そうとその剣を手に取って握り締める。
しかしその瞬間強い光と音、そして手が焼ける様な痛みが陽介を襲った。
「ぎゃっ!?」
何が起きたのか分からずに大きな隙を見せる陽介に兵士が再び持ち直して襲い掛かるが、
間一髪で陽介は攻撃を避けて相手の肩に両膝を乗せる形でジャンプで飛び掛り、
そのまま後ろにバック転して兵士を転がして首の骨をへし折る。
(な、何だよこれ……)
陽介は今しがた、自分が不思議な体験をした剣を見下ろしていた。
その現象は陽介から離れた位置の甲板で戦っている兼山にも起こっていた。
兵士の鎧の隙間が見える脇腹に左ミドルキックを入れて怯ませた所で、傍に落ちている槍で
串刺しにしようとした。だが陽介と同じく大きな音と光と痛みが兼山を襲う。
「うおあ!?」
兼山はびっくりするが同じく兵士もびっくりした様で一瞬両者の動きが止まる。
が、兼山の方が先に攻撃を再開して襲い掛かって来た兵士を前蹴りで吹き飛ばし、そこに
タックルをかまして川へとリングアウトさせた。
(びっくりした……今のは一体……?)
兼山は呆然とした表情で落ちている槍を見据えるのであった。
そして真由美と弘樹は地下の倉庫の辺りで一通り兵士達を片付けた後、大部屋へと一旦戻ろうとしていた。
だがそんな2人の足元に1本の矢が撃ち込まれる。
「うお!」
「おっと! ……何者だ!」
弘樹が矢を放って来た人物に出て来る様に声を張り上げる。
その弘樹の声に反応する様に、再度矢が撃ち込まれる。
「うお、く!」
「おい、誰か知らないが出て来い!」
真由美も同じく声を荒げるが、今度は後ろに人の気配を感じて振り向く。そこにはオレンジ色の髪の毛に
黒い鎧、そして緑のマントを着込んだ若い男が槍を両手で構えて走って来ていた。
「うおおおっ!」
「なっ!?」
真由美は咄嗟に壁を使って強靭な脚力で2〜3歩走り、壁からキックを振り下ろして男が槍を構えて
いない方からその男に命中させる。そして弘樹にはまだ矢が撃ち込まれて来るが、階段の影に矢を
撃ち込んで来た人物が隠れるのを発見し、その人物が弘樹に気づいて逃げ出すのを追いかけ始めるのであった。