Run to the Another World第229話


「もしかして、俺達はとんでもない事をしてしまったんじゃないのか?」

「……どうやら、そうらしいな」

アイトエルとバラリーを始めとして、この旅の目的はこのドラゴンを助けるのでは無く、このドラゴンがまた暴れる為に

封印から解放させる事が真の目的だったと地球人達もヘルヴァナール人達も今気づかされた。

「大体予想はつくが、これから貴様はどうするつもりだ」

「暴れると言う事は、まさか……」

エスヴェテレスのディレーディも、バーレンのシェリスもイークヴェスの答えを予想しつつ尋ねる。

『御前達が思っている通り、封印されていたこの5年間で余は魔力を溜めに溜めさせて貰ったからな。

まずはこのゼッザオを滅ぼした後に、人間達との全面戦争をさせて貰おうか』


『そんな事、同じドラゴンの僕達がさせる訳が無いでしょうが』

「そうだ。某達の知らない所で薬を盗み出すだけに留まらず、そんな事までさせる訳にはいかない』

シュヴィリスとセルフォンはイークヴェスを止める気満々だ。

『ふん、そう来るなら勝手にすれば良い。このゼッザオの周りの霧だって元々は封印された余がこうして

封印から目覚めた時に外に出さない為にする物だったんだろうがな。今はどうやら魔力が弱まっているみたい

じゃないか。だったらこの霧を抜けて他の国へ行く事は造作も無い』

「結局、助けてくれって言うのは嘘だったんだな」

「あーあ、こんな事させる為だったなんて俺等はもうドラゴンその物が信じられねぇぜ」

藤尾と明も怒り心頭だ。


『かと言って、これだけの人数を相手にするのは余が1匹だけでは不安が残る。

と言う訳でこいつ等に相手をして貰う事にしよう』

そんなセリフと共にイークヴェスの周りに黒いオーラが噴出したかと思うと、そのオーラの中から

大小様々なファンタジー系で良く見るモンスター達が姿を現わして襲い掛かって来た。

「うげぇ!? モンスター!?」

『慌てるな! ヘルヴァナール人達はモンスターの駆除、地球人達はタワーの中へ逃げろ!!』

びっくりするサエリクスに対して、タリヴァルの冷静で的確な指示が飛ぶ。


しかしイークヴェスはそうそう簡単に逃がしてくれなかった。

タワーの中に逃げた地球人達にもモンスターが襲い掛かるので、基本的には3人一組で対処する事に。

プラス、人間の姿のドラゴン達やヘルヴァナール人達もタワーの中で加勢する。タワーの中では

元のドラゴンの姿では上手く移動する事すら出来ないからだ。

そして屋上に残っていたのは地球人達のそれぞれのチームリーダー7人。勿論モンスター達と戦っていた。

その戦いが一段落した所で素早く状況確認と作戦会議。

「もしかして、あいつを倒さないとダメなのか?」

「そうらしいですね」

「だったらやるしか無いだろ。幸い薬のビンはまだたっぷりこっちにあるんだし」

「ああ。誰かがまずあのドラゴンを引き付けて、そして誰かがビンを投げ入れよう!」

ハールのそんな提案で、そのハールと博人がジャンプ力のあるメンバーなのでビンを口に投げ込む係。

他の6人はドラゴンを引き付ける係だ。


そして、ハールの作戦通りに何とかビンをイークヴェスの口の中に博人が投げ入れる事に成功した。

そうして光の中から現れたのは、見た目的に25歳位のまだ若い男だった。武器は特に持っておらず素手である。

しかしそれでもまだモンスター達の攻撃が収まりそうに無いので、隙を見ながらイークヴェスにも攻撃をする事に。

その作戦で、イークヴェスに最初に接近出来たハールから720度のキックを繰り出す。

だがそれを後ろに身体を反らしてイークヴェスは避け、ハールが着地した所に両手の親指で喉を突いた。

「こっ!?」

急所に指を入れられてドサリと倒れ込むハール。それを見た孝司が小型のモンスターをローキックで倒して

イークヴェスに駆け出して左肘を振り被ったが、イークヴェスはそれを右手でブロックしてみぞおちに左のボディブロー。

更にそれで怯んだ孝司の両目に指を突き刺す。

「うぐぉぉぉ……っ!!」

間一髪で目をギュッと閉じたので失明はしなかったが、更に強く目を押されて悶え苦しむ事になってしまった。


その横から戦いが一段落した令次が走り寄って来たが、イークヴェスは殴り掛かって来た令次の左腕を右手で

弾きつつ左手で令次の胸にパンチ。それと同時に令次の左足を自分の右足で踏み付けて距離を取られない様に

しつつ、左手で令次のワイシャツの襟を掴んで思いっ切り引き寄せてからクルンと回転して右の肘を令次の顔面へ。

「がはっ!?」

そしてもう1度孝司の両目に指を押し付けつつ、孝司が怯んだ所で前かがみになったのでその顔面に膝蹴りを叩き込み、

その蹴った足をそのままかかと落としで下に倒れている令次のみぞおちへ全力で振り下ろす。

「ぐあ!」

「ぐふっ!?」

そんなイークヴェスをハリドが両脇の下から両腕を回して羽交い絞めにしたが、イークヴェスはハリドの右手の指を掴んで

3本同時にへし折る。

「あああああああっ!!」

絶叫しつつハリドが怯んだ所で右腕を取って地面に押し倒し、そのまま右肘の関節を逆方向にへし折る。

「おがああああああっ!!」

そのまま突き飛ばされて、倒れ込んでいる孝司の上にハリドは重なる形で倒れ込んだ。


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