Run to the Another World第228話


闇より現れし龍撃剣の一団も壊滅し、幹部の5人は怪我を治療されて連合軍に捕獲された。

そんな5人を尻目にして、この先で何かあったら困るので先程古代都市で集めた武器を持って来て

貰い、それぞれの武器を最も使い馴れている人間達にそれぞれ装備させる。そうしてから最上階の

ドアを開くとそこは屋上になっており、そこには一緒に居るドラゴン達よりも更に2回り程大きな黒い

ドラゴンがまるで自分達を待っていたかの様に鎮座していた。それでも、地球に帰して貰う為には

このドラゴンを如何にかしなければいけない。

「さぁ、後はあいつだけね……」

和美がそのドラゴンの姿を見て呟く。そうしてそれぞれのチームのリーダー達が先頭でゾロゾロと

屋上に出て行く地球人とヘルヴァナール人達だが、突然ドラゴンが咆哮を上げたかと思うと

いきなり屋上にやって来た人間達に向かって話しかけて来た。

『良くぞここまで辿り着いたな、異世界からの来訪者とヘルヴァナールの人間達よ』

「この声は……!」

「ああ、間違い無いですね」


ハリドと令次が互いを見て頷く。この声は間違い無く、自分達がこの異世界ヘルヴァナールに来る

原因となったあの声だった。その声の持ち主である黒いドラゴンはそんな様子に構わずに続ける。

『ようこそ、古代都市アイリラークへ。余の封印を解く為に色々奔走してくれて感謝しているよ』

「ドラゴンよ、一体貴方は何者だ?」

ヴィルトディンのリルザがそう問い掛けると、ドラゴンは自分の自己紹介を始める。

『余の名前はイークヴェス。伝説の7匹のドラゴン達のリーダーだ。長い間眠りについていたが、

こうしてまた日の目を見る事が出来て嬉しい』

「ドラゴンのリーダーだと……」

ファルスのセヴィストを始めとして、地球人もヘルヴァナール人も関係無しに唖然とした表情だ。


そんな中で、洋子がはっとした顔つきになってイークヴェスに向かって叫ぶ。

「そ、そう言えば私……エスティナちゃんから聞いたんだけど、貴方の封印を解いたら願い事を

かなえてくれるって言う話だったわ!」

それに続いて、闇より現れし龍撃剣の一団が捕獲されている間に洋子からその事を聞いていた

他の地球人のメンバー達も口々に叫ぶ。

「そうだ、そうだよ!」

「俺達を元の世界に返してくれ!!」

「あんたを助け出す事は出来たんだから、これで良いんだろ!!」


だがそんな真由美、栗山、哲の叫びに対して、黒いドラゴンのイークヴェスはとんでもない事を言い出した。

『……何の話だ?』

「え?」

その返答の意味が理解出来ずに固まる周二に、更にイークヴェスは続ける。

『そんな願い事の約束等、余はした覚えは無い。おおかた伝説だの何だのと言って、勝手に人間達が

そう解釈しただけだろう? 伝説なんて伝え方次第でどんどん変わって行く物だ。それはデタラメだ。

……まぁ、最初に御前達をあの集会場に飛ばした時の約束とそんな伝説はまた別物だから、御前達には

世話になったしきちんと元の世界に帰してやる』

「な、何だ……びっくりさせないでよね」


由佳がそのイークヴェスの答えにほっと胸を撫で下ろしたが、そのイークヴェスが今度はヘルヴァナール人達に

向かって信じられない宣言をし始める。

『……とは言え、せっかくこうして目覚める事が出来たのだ。また暴れさせて貰うとしようか。あのラーフィティアの時みたいにな』

「えっ?」

「そ、それってまさか……!?」

イディリークのリュシュターとラーフィティアのカルヴァルの中で1つの糸が繋がる。その言葉の意味はまさに……。

『6年前に前のラーフィティアを滅ぼしたのは余だ。魔力を少ししか使っていないのに、いとも簡単に壊滅してしまうんだから

笑ってしまうな。大体、余が大昔に封印されたのもデタラメだ。余が封印されたのはそれから1年後の5年前の話。

それまではそっちのアサドールが開発した薬を少し拝借して、人間の姿で世の中を見て回ったよ』

『はっ!?』

『おいアサドール、どう言う事だ!?』


このドラゴンの行方は自分達伝説のドラゴンも知らない筈だったのに……とアサドールに詰め寄る人間姿の他の

ドラゴン達だが、アサドールもブンブンと首を横に振る。

『わ、我輩も全く知らない、本当だ!! 一体どう言う事なんだ!?』

若干涙目になりながらアサドールがイークヴェスに問うと、シンプルな答えをイークヴェスは返す。

『……普通に御前の家の中に入って、人間の姿になれると言う資料を読んで、そして薬を貰った。それだけだ』

『それって泥棒じゃねえか』

エルヴェダーのツッコミにもイークヴェスは何処吹く風だ。

「で、貴方はまた封印されたって事なのですか?」

『そうだ。このゼッザオに戻って来た時に少しヘマをしてしまってな。人間の姿で行動している時に一気に今の王に

追い詰められた。だが、5年の時を経て余はまた蘇った。感謝するよ』

「と、言う事は……」

シュアのレフナスとイークヴェスの会話を聞いて、ヴィーンラディのエルシュリーが地球人達の方へ視線を向けた。


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