Run to the Another World第225話


グレトルと勝負するのはサエリクスになった。そして2人が対峙するのは改装中の様な雰囲気の倉庫で、

テーブルの上にペンキ缶が置いてあったりして雰囲気も抜群である。

「そう言えば、俺は御前と戦った事が無いよな」

「そうだな」

サエリクスの確認にグレトルも短く肯定を返す。

「始める前に1つだけ聞かせてくれないか?」

「何だ?」

「最初シュアで一緒に列車に乗った時、俺達を置いて行ったろ? それで俺達は捕まった。何故あの時居なくなったんだ?」

旅の中でずっと感じていた疑問を今ここでサエリクスが尋ねると、グレトルは無言で自分の武器である大剣を構える。

「俺に勝てば教えてやる」

「ほー、そうか。だったら勝って教えてもらうぜ!」

そう言ってサエリクスはグレトルとのバトルをスタートさせた。お互いに初めてのバトルをするサエリクスとグレトルは、まずは

相手の様子を窺いながらのスタートだ。しかし大剣を振って先に飛び込んで来たグレトルを避けたサエリクスに、思わぬ衝撃が

襲い掛かって来る。

「ぐわ!?」

グレトルがサエリクスに大剣では無く、自分の大柄な身体を活かしてタックルをかましたのだ。


しかしサエリクスもこのまま黙ってやられる訳には行かない。テーブルの上には空のペンキ缶が置いてあり、それを引っ掴んで

グレトルの顔にぶつける。

「ぐぅ!?」

グレトルが怯んだ所でサエリクスはペンキ缶を投げ捨てて飛び膝蹴り。

さらにローキックからミドルキック。ミドルキックはグレトルの股間を蹴り上げた。

「がぁ!」

「おりゃあ!」

グレトルの肩を掴んで、勢いのまま膝蹴りをするサエリクス。そのままハイキック、ミドルボディブロー、更に回し蹴り。

間髪入れずにグレトルの顔目掛けて2発右と左のパンチ。そして再び回し蹴り。その蹴りはグレトルの腹に食い込み、

グレトルは後ろの壁に吹っ飛ばされる。

「おらあああああっ!!」

サエリクスが柱の陰から飛び出して向かって来るので、グレトルは咄嗟に傍にあったハケを手に取って投げつける。

「うおっ!?」

そのままサエリクスが怯んだ所に前蹴りを食らわせ、大剣を振り被る。だがサエリクスは格闘技で培った反射神経で、

逆にグレトルの腹と顔に左手で連続でパンチをお見舞いする。それでも隙は必ず出来る物で、グレトルはサエリクスの

一瞬の隙を見逃さずミドルキックを繰り出して彼を吹っ飛ばす。

「ぐは!」


今度はサエリクスが壁にもたれかかって崩れ落ちる。そのサエリクスがふと見つけた物は工具の沢山詰まった箱。

とりあえずそれをサエリクスは武器として投げつける。しかしグレトルは飛んで来た工具箱を間一髪で避け、ダッシュでサエリクスの元へ。

立ち上がりかけたサエリクスに向け、大剣を使うと見せかけてフェイントで強烈な前蹴りを繰り出す。これには流石のサエリクスも

反応出来ず、もろにそのグレトルのキックを食らってしまう。そうして床に倒れ込んだサエリクスの腹にグレトルは更に蹴りを入れる。

「ぐぁ!」

そのままグレトルは間髪入れず、自分の大剣を大きく頭の上に振りかざす。

「おりゃあああああ!」

(やべ……!)

力を振り絞って何とかそれを避けるサエリクス。そのままグレトルに足払いをかけて倒し、マウントポジションを取って殴りつける。

「おらおらおらああ!」

成す術無くグレトルは殴られ続け、そのグレトルの襟首を掴んで強引に立たせるサエリクス。そして最後に精一杯の左ストレートを

サエリクスはグレトルの顔面に叩き込んだ。

「があ!?」

かなりの衝撃で殴った為、サエリクスの左手にも痛みが走る。

(いってえ!)


床に倒れたグレトルは息を整え、ゆっくりと喋りだす。

「あの時御前達を置いて行ったのは、最初は俺達の計画に支障が出ると思ったから王都の駅で騎士団に御前達の事を話した」

「……お、御前が俺達の事を通報した犯人だったのか!!」

以前シュア王国の騎士団に、乗客の通報で自分達をシュアの駅で拘束する事が出来たと聞かされた事があったが、その犯人がたった今

このグレトルであると判明した。

「ああ。結果的に御前達がこれだけの大活躍をしてくれるとはな。おかげで色々と手間が省けたって訳だ」

ククク、と笑うグレトルに、サエリクスの中で何かが切れた。そうしてゆっくりと立ち上がって、グレトルを見下ろして大声で叫んだ。

「だったら、しばらくここで眠ってやがれっ!!」

思い切り彼の顔面を踏みつけ、グレトルを気絶させてサエリクスは皆の所へと戻る為に歩き出すのであった。


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