Run to the Another World第222話


和美は他の2人が戦っている間にヴァンリドと勝負していたが、何とマウントポジションを

取られてしまった。何度か斬り付けて来たヴァンリドの武器である魔法剣をさっき自分の

関節技で叩き落して遠くに蹴り飛ばす事ができたのが、まだ和美にとっては救いであった。

「私達の部下を全員殺しておいて、無事に逃げ切れるとでも思ったのか?」

「はっ……現に私達はそうやって貴方達の部下から自分の身を守って、ここまで来たのよぉっ!!」

言い切ると同時に和美はのしかかっているヴァンリドの身体を、自分も横に身体を倒す事で

引き剥がしにかかる。間髪入れずに右の肘を2発程顔に当てるが、ヴァンリドも負けじと左のエルボーを和美の顔面へ。

「ぐわぁっ! ……このやろおっ!!」

ゴロゴロと転がり、何とかマウントポジションを取って押さえつける和美。しかしそれを鎧の重さも合わせて体重で

逆転するヴァンリド。パワーのラーフィティア傭兵団長に対して、外資系企業のOLは技で対抗する。

和美はもう1度何とか寝技で押さえ込み、ヴァンリドに対して憎しみと怒りをぶつける。

「ぐ……っ! しぶとい奴ね!! そんなに私達を殺したいか!!」


ヴァンリドはもがきながらもそれに叫んで答える。

「ああ、私の計画に邪魔な奴等は必要無い!!」

「それだけじゃ無いでしょ!! エスティナちゃんから貴方達の悪行をこの王都で昨日の夜に聞いたのよ!!」

「いちいち覚えて等いないっ!!」

「……そう言うと思ったわ!! 貴方はここであの世に送ってやるわよっ!!」

何度かヴァンリドに斬り付けられ、深く入って出血している所もあるのでさっさとケリをつけるべく和美はあの技を出す事に。

ヴァンリドの左腕を前に引き出し、その腕と逆の足の膝裏をヴァンリドの首にかけて崩す。続いて首にかけた足の足首を

立てた状態から、もう片方の自分の足を被せて相手の肩と頭が抜けない様にがっちりとロック。そして両膝と、頭と、

肩の間にある隙間を埋める様に絞める。こうする事で、自分の内ももと相手の三角筋で相手の頚動脈を絞めるのだ。

いわゆるこれが「三角絞め」である。


「ぐが……あっ……」

バタバタともがくヴァンリドだが、抜け出せずに意識が遠のいて行く。

「ぐえぇ……がぅ……」

「これで終わりよ……!!」

「がはっ……」

その変な声を最後に、ヴァンリドはがっくりと脱力して意識を失った。だがまだ身体は痙攣しているので、完全に動かなくなるまで

三角絞めで和美はヴァンリドを締め上げ続けたのである。



何とか傭兵団の将軍と副団長と団長を倒したハール、博人、和美、そしてエスティナが合流して来た。

「こっちは何とか倒したわ」

「俺もやってやったぜ」

「僕ももう大丈夫」

お互いに無事である事を確認して、一旦皆の所に戻る事にする。

そうして皆と合流した4人は改めてホールに集合。するとタリヴァルが大きな扉を指し示してこんな事を言い出した。

『御前達6人の波動と、その扉の魔力が共鳴しているぞ?』

「え? 俺等は何も感じないけど?」

博人が自分の身体を抱きしめながら言うが、他のドラゴンも同意見だ。

『僕も見えるよ。波動の様子が最初に見た時とは全く違う』

『もしかして我輩達の見えた波動が御前達6人だけ違うとしたら、恐らくこの扉の先に誰かが居るのかも知れぬ』

『それは俺様達にも分からねぇがな』

『けど、あんた達6人の力なら開けられるはずだよ、その扉』

『開けてみろ』


最後にグラルバルトにそう言われ、6人のリーダーはそれぞれの波動が魔力と共鳴していると言う大きな1つの扉の前に立った。

そうすると扉が眩しく光り輝き出し、ガチャンと大きくロックが外れる様な音がホールに響き渡った。

「開いた……?」

「らしいな」

「だったら行ってみるだけでしょ!」

大きな1つの扉が左右に開かれる……が、その一方でふと博人がある事に気がついた。

「あれ、そう言えばあの闇より何とかの4人とエスティナが居ないぜ?」

「えっ? あれ、ほんとだ」

ホールの何処を見渡しても5人が見当たらない。

「何処行ったんだ?」

「探しに行った方が良いのかな?」

だが次の瞬間、またしても急展開が訪れる!!


ホールには今地球人達の他にヘルヴァナール人では各国の王と宰相と騎士団長や将軍クラスの人間しか居ない。

他の軍隊はタワーの外とゼッザオで後始末中だ。そんなホールに突然沢山の男と女が武装して入って来た。

「うわ、何だ!?」

「うおおお!?」

「くっ、何だぁ!?」

武器を手に有無を言わさず襲い掛かって来るその集団に、勿論ホールの中に居る一同も対抗する。

だが一同は見逃さなかった。大乱闘に発展するホールの中で、闇より現れし龍撃剣の4人とエスティナがその集団に

指示を飛ばしているのを……。

「エスティナちゃん!?」

「あ、あいつ等……!?」

何であいつ等がこんな事を? それよりもこの集団は一体? その光景に驚いたEuropean Union Fightersのハリドを

除く4人と神橋洋子はその闇より現れし龍撃剣の4人とエスティナがバトルに乗じて別々の所へと走り去って行くのを見かける。

当然如何言う事か説明して貰う為に逃がす訳にはいかないので、5人もその5人の後をそれぞれ追って走り出すのであった。


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