Run to the Another World第220話


「は、離してよ!!」

エスティナがファイヤーボールに気を取られている隙に、突然中年の男がエスティナを

ホールの隣の部屋に引き込んでいた。あの大きな扉とはまた別の扉の部屋だ。

「おい、何やってるんだ!!」

「ハールさん!!」

後ろからその事態に気がついて追いかけて来ていたハールが、男を大声で引き止める。

「気をつけて! こいつは将軍のジェイデルよ!!」

エスティナはその男に見覚えがあったし、有名だったので名前も知っている。


そんなジェイデルは自分の方にエスティナを引き寄せ、余裕のある表情でハールに口を開いた。

「この女がそんなに大事か? だったら一緒に御前も道連れにしてやろうか?」

「ゲス野郎……今すぐエスティナを放せっ!! だあいっ!!」

その勢いのまま左ハイキックをジェイデルの方に進みつつ繰り出すハールだが、ジェイデルは

エスティナを前に出して盾にしようとする。

「くっ!」


勢いを殺して間一髪、ギリギリセーフでキックは彼女には当たらなかったが、

続けてジェイデルがハールの方にエスティナを突き飛ばし彼の動きを一瞬止める。

「おらあっ!」

半ばエスティナを突き飛ばす様な感じで後ろに下がらせ、タイマンに持ち込むハール。

ジェイデルはハルバードを使いこなし、ハールを苦戦させる。

(厄介だな!)

槍と斧の性能を合体させているので、攻撃範囲が広くて攻撃力も高い。

短期決着に持ち込みたい所だ。


だが将軍だけあって、グラカスを始めとして今までハールがこの世界で戦って来たどんな相手よりも強い。

「ぐあっ!」

更にスピードも速いので、腕を思いっきり刺されてしまうハール。ジェイデルはすぐに先端を引き抜き、今度は

斧の部分で腹の辺りを切り裂く。

「がっ……!?」

肉が切れる音と共に出血し、刃が深く入った様で結構血が出て来た。まだ行けそうではあるが……このまま

出血が続けばまずい。


「そらっ!」

ジェイデルが再びハルバードを振りかぶるが、彼の右腕に向かって左キックを放ち、続けて右のミドルキックで

ハルバードを吹き飛ばす。

「ぐおっ!?」

「そら、そら、そら、そら!」

そのまま5発連続して左のキックをジェイデルの腹へと入れ、6発目をキックによって身体が横に傾いた所に

背中目掛けて叩きこむ。

「ぐぁ……」

間髪入れずにもも上げの準備体操の様に、連続キックを繰り出すハール。8発連続キックを叩き込み、その8発目は

左足でジェイデルの側頭部へ。


頭に衝撃を受けてふらっと来たジェイデルは、後ろへとよろめいて壁に当たる。そこでこっちに身体が戻って来る事を見越し、

ハールは勢いをつけて回転。その勢いで、テコンドーのキックである2回転蹴りをジェイデルの首目掛けて繰り出す。

「ごっ……」

骨が折れる音が首から聞こえ、ジェイデルは横に倒れて息絶えた。

「ふーっ、ふーっ、ふーっ……」

「い、行きましょう!!」

エスティナの声でハールは我に返り、2人はさっきのホールへと戻って行った。


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