Run to the Another World第219話
各地でのバトルをそれぞれ終えた地球人達とヘルヴァナールの各国軍は、それぞれもう1度タワーの
前の広場に集合していた。更にそれぞれの地球人達との戦いで息絶えたラーフィティアの傭兵団改め、
旧ラーフィティア王国パラディン部隊のそれぞれの隊長と血濡れの狂戦士のメンバー6人の亡骸が
回収されて18人全員分が並べられる。が、それを見ていたエスティナがこんな事を言い出した。
「……そう言えば、団長って誰なのかしら?」
「え?」
聞き返すハリドにエスティナが震える声で呟く。
「もう部隊長達がこうして死体になっちゃったから聞き出せないけど、この傭兵団の団長は一体誰かって事よ。
この中の誰かが団長なのか、それともまた別の人が団長なのか……」
それはまだ分からないが、団長とやらが居るとすれば恐らくこのタワーの中であろう。
「なら部下達には後始末をさせろ。そして余達はこの中に行くぞ」
リルザのその提案で、各国の将軍クラスの人間と宰相と君主達が地球人達と共にタワーの中に入り込んで行く。
タワーのロビーは吹き抜けになっており、そこではまだ沢山の傭兵団の連中が待ち構えているのであった。
当然一気にバトルになるロビーだが、その中でハール、博人、和美の3人は敵をなぎ倒しつつ上へと進んで行く。
しかしその3人が6階のホールにやって来ると、そこには1つの大きな扉が。
「ん? 何だあの扉?」
「やけにでけーな」
「開くのかしら?」
3人は敵が居ない事を確認してその扉を開けようとするが、ハールが叫んで博人と和美をタックルで突き飛ばした。
「あ、危ない!!」
「うお!?」
「きゃっ!?」
その瞬間、今迄3人が立っていた場所が炎に包まれる。
「な、何だよ!?」
「え、えっ!?」
吹っ飛ばされた2人はすぐに立ち上がり状況確認。ハールも同時に立ち上がると、ファイヤーボールが飛んで来た方に
1人の鎧を着た大柄な男が立っていた。
「えっ……ヴァンリド!?」
「はっ?」
後ろから突然響いて来たエスティナの声に3人が振り向く。
「え、エスティナちゃん!」
「他の皆はまだ下で戦ってるわ!」
「そうか。それよりもあいつ……知ってるのか?」
博人の質問に、エスティナは神妙な顔付きで答える。
「ええ。ラーフィティア王国……私の生まれた時代のラーフィティア王国の国王のヴァンリドよ。恐らく団長は彼ね……」
そのエスティナの指摘に、髪が博人以外の3人と同じ2色の男である
ヴァンリドが腰の青い鞘に納まっているロングソードを引き抜きつつ口を開いた。
「御前達の情報を部下から聞いて、謎の御前達がゼッザオを目指していると言う事は分かった。だからここに
霧が晴れている隙を突いて侵入し、先回りさせて貰ったぞ」
「はん、だったら何だよ?」
「決まっているだろう。我がラーフィティア傭兵団は、御前達を今ここで全員破滅させる!!」
声高に言い放つヴァンリドの後ろから、勢い良くまたファイヤーボールが飛んで来た。
「うお!?」
咄嗟に横に飛んでかわす2人だが、その隙にヴァンリドがロングソードを手にして斬りかかって来た。
「だああっ! 和美、任せる!!」
「は!?」
博人は自分達にファイヤーボールを放って来た奴を発見し、そいつを追いかけて行く。
「行かすか!!」
ヴァンリドは博人に斬り掛かろうとするが、和美にドロップキックをくらい失敗。仕方が無いので博人を追うのは諦め、
和美と1対1の勝負に持ち込む事にした。
Run to the Another World第220話へ