Run to the Another World第218話


弘樹は他のメンバーと離れて1人ダウンタウン方面へと逃げていた。当然弘樹も

複数の兵士達に追いかけられてこの住宅街があるダウンタウン迄来ている。

(くっそ、なら……)

1対複数なんて如何考えても勝ち目等無い。だったら強制的に1対1を作り出す事の

出来るシチュエーションに持ち込ませれば良いだけの話である。

そこで弘樹が考えた作戦は、人が2人並んで通る程もやっとの住宅街の細い路地に逃げ込んで

そこで戦うのだ。そう言う路地を見つけた弘樹はそこに後続の兵士達を誘い込んで、上手く両側の

路地の壁を駆使したり、たまに落ちている木箱等を投げつけたりして、陽介が得意なパルクールの

要領で逃げる。階段を上がってそこからまた下に移動したり、とにかくありとあらゆる手段を駆使して

兵士を倒しつつ逃げるのだ。


だが、そんな弘樹にしつこく食い下がって来るのが血濡れの狂戦士のリーダーであるあのヒゲを

生やした中年で茶髪の、武器に大剣を持っている男だ。

(あいつ、さっきの傭兵集団の!?)

そんな事を思い返す弘樹を追いかけるこの茶髪の剣士は何だか不気味であるが、だからと言って

逃げ続ける訳にもいかない。

(このまま逃げ続けても埒が明かないな!)

だったら自分の手で始末をつけるだけである。


路地の曲がり角に来た時に、先に曲がり角を曲がった弘樹が壁キックを駆使して剣士に蹴りかかったが、

上手く剣士も寸での所で身を屈めて奇襲のキックを回避。今度は弘樹が下段回し蹴りを

繰り出すがそれはジャンプで回避され、もう1度壁キックを繰り出して剣士の頭上を飛び越えて逃げる。

(なかなかの奴だ!)

心の中で剣士に賞賛の声を送りつつも逃げる弘樹は、5階建て位のビルを見つけてその中に飛び込む。

中にはまだ色々通路に物が散乱していたので、それを後ろに投げたり蹴り転がしたりして剣士の行く手を

妨害しつつ屋上まで階段を駆け上がる。当然屋上は行き止まりなので、そこで弘樹は剣士と対峙する事になった。

「しつこいぜ、あんた」

そう剣士に話しかける弘樹だったが、意外にも剣士は口を開いて返事をする。

「ああ。あの傭兵集団と俺達は今手を組んで居るからな。遺跡の秘密を探るのが俺達の目的だ」

「そうか。で、邪魔な俺達を倒すって訳だろう。だったらその前に俺が御前を倒すぜ!」


そう言いつつ、弘樹は傍に落ちている短い鉄パイプを剣の代わりにして見よう見まねの剣術でトリッキーに

動かしつつ立ち向かう。

しかし相手の剣士もなかなかの使い手だ。弘樹は上手く鉄パイプを大剣に合わせて防御して反撃するが、

反射神経を駆使して剣士も素早い動きをする。スピードも結構ある様なので気を抜けば殺されてしまう。

そうして弘樹の手からとうとう鉄パイプが吹っ飛んだ。

「くっ!」

弘樹は屋上のふちが1段高くなっているのに気が付き、そこに飛び乗って剣士を誘い込む。

そこから動こうとしない弘樹に剣士は大剣を振り被って来たが、それを弘樹はジャンプで回避した。


「くっそ……」

痺れを切らした茶髪の男もふちに上って来て大剣を振るが、それを身体を後ろに反らして弘樹は回避。

逆にその大剣の振る隙を突いて接近し、前への右ハイキックからその勢いを利用して左の回し蹴り。更に

真由美から習ったテコンドーの打点の高いキックを駆使して剣士に攻撃の隙を与えない。

今度はそんな剣士に左ミドルキックを繰り出すと、それが剣士の腹に直撃したので弘樹は下段左回し蹴りで

剣士を屋上から落とした。

「うおあわわわわーーーーーーーーーーーっ!」

絶叫しながら剣士は5階から下に落ちて行き、弘樹は剣士の落ちた瞬間を見ない様にその声を後ろに

聞きながら屋上を後にする。だけど生死の確認だけはしっかりとしておかなければならないので、下に降りて

その剣士が死んでいる事を確認してからさっさと弘樹はその場所から立ち去るのであった。


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