Run to the Another World第215話


港湾方面で由佳は拾った短い鉄パイプを武器に奮闘していた。剣道出身の由佳はこうした棒状の物が

あれば武器になるのでそれを使って頑張ってバトルに挑んでいるのだ。

向かって来た兵士の槍を横薙ぎで弾き、素早く喉に一撃。更に別の兵士にはキックでロングソードを

弾いてそこから回し蹴りと言う様に、和美から習った素手での戦闘術も駆使して戦う。

だが、そんな由佳の背中を物凄い衝撃が襲う。一通り兵士を倒して辺りを見渡していた由佳だったが、後ろから

来る気配に一瞬気がつくのが遅れた次の瞬間には大きなその衝撃により地面にうつ伏せに倒れ込んだ。

「ぐふぅ!?」

手から鉄パイプも離れて遠くに転がって行ってしまったが、何とか力を振り絞って起き上がろうとする由佳。


そんな由佳の目の前に槍の先端が見えた。

「はっ……!?」

見上げてみると、黒髪の大男が槍を持って由佳を見下ろしていた。その男に由佳は見覚えがあった。

「立て、女」

その声に従って由佳はゆっくりと立ち上がる。この男はエスヴェテレス帝国で帝国騎士団に協力していた……。

「貴方は……和美と戦っていたジレディルって人かしら? 改心したって聞いたけど、何でこんな真似を?」

「傭兵ってのは大体が金で動く人間だから、誰が主人になろうと俺の自由だ。さぁ、さっさとそっちに行け!!」


槍を突きつけたままその槍を振って指示するジレディルだが、由佳は咄嗟に槍を右腕で押し退けてジレディルの

股間を全力で蹴り上げる。

「てやぁ!」

槍を触った時にあの光と音の現象は出なかったので良かったが、股間を蹴り上げられた筈のジレディルは無反応だ。

「え……?」

鎖かたびらか何かでも股間に入っているのか、と不思議に思いつつジレディルの顔を見上げる由佳だったが、次の瞬間……。

「ぐおおおお……て、テメェええええ……!!」

やっぱりジレディルには効いていた様で、思わず前屈みになったジレディルの顔面に今度は頭突きを食らわせ、それでよろけた

ジレディルにダッシュからの跳び蹴りをかまして後ろの壁に背中から叩き付ける。それでジレディルは槍を手から落としてしまった。

地球において、最近太ってショックを受けていた体重がこんな所で役に立つとは……と驚きながら由佳はジレディルとバトルスタート。


まずは傍に落ちているレンガを両手にそれぞれ1個ずつ持ち、ジレディルの顔面に叩き付ける。

「ぐお、おがぁ!」

怯みながらも懸命にパンチを繰り出すジレディルだが、大振りなので由佳はあっさりかわしてレンガの1つを投げつける。

「とりゃあ!」

更にジレディルに向かってジャンプし、彼の頭にレンガを振り下ろす。

「ぐわぁ!」

それで怯んだジレディルだがレンガが砕けてしまったので、由佳は拳を構えてジレディルへと走り寄り2発パンチを

ジレディルの腹に入れ、続けてジレディルの側頭部にハイキック。が、やっぱり体格差もあるのだろうが女のパワーでは

余り効かない様で、思いっ切りジレディルに前蹴りを食らって由佳は再び地面に倒れ込む。

「ぐえっ!」


ジレディルは由佳に駆け寄り、その身体を引っ張り上げてコンクリートの地面へと由佳を投げ飛ばす。

「ぐえあ!」

そのまま走り寄って来たジレディルを視界に捉えた由佳は、何か攻撃を繰り出される前にジレディルの足を自分の足で

蹴りつけて転倒させる。

「うおっ!」

更に転倒したジレディルの顔面が足の前に来たので、勿論その顔面にも右足でキックを入れる。

立ち上がった由佳は、立ち上がりかけているジレディルに対してハイキックを繰り出して怯ませ、続けてジレディルに

飛び付きつつ頭に膝蹴り。

「ぐぇう!」

しかしジレディルは近づいて来たその由佳の首を両手で掴んで持ち上げ、倉庫の壁にガンガンと由佳の頭を打ち付ける。

「うぐ、あがっ!」


このままではまずいと思った由佳は力を振り絞って右足をジレディルの側頭部に叩き込む。だけどそれでも首から手が

離れないので、今度はジレディルのアゴに下から膝を振り上げる。

「あぐぉ!」

手が離されたが素早く由佳は受け身を取って、地面に倒れたジレディルの頭に思いっ切り前蹴り。

更に立ち上がろうとするジレディルの頭に何度も何度もキックを入れ、最後に全力ダッシュからの跳び蹴りを立ち上がりかけた

ジレディルの顔面に突っ込んだ。

「あが……」

続けて、先程落とした鉄パイプを拾ってジレディルの喉に思いっ切り突き刺せば、そのままジレディルは壁に沿ってずるりと

崩れ落ちて絶命して由佳のバトルはここで幕を閉じた。

「はぁ……終わった……」

良くこんな奴を倒せたなと自分でもびっくりしながら、由佳は死闘を終えて一息つく為に座り込んだ。


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