Run to the Another World第212話


「あんたはあの時の……」

「火山の時の男か。こうしてまた出会うとは奇妙なものだ」

ラーフィティアの火山の火口であの死体の山を作ったと自分で言っていたあの緑色の髪の男。

その男とこうしてこの場所で再会するとは何とも不思議な巡り合わせだ。

だが仲間では無いので橋本は戦わなければいけない。

「さぁ、何処からでもかかって来い!」

橋本は長い斧を持っている男を挑発する。その挑発に乗って男は向かって来た。斧を使うので

豪快な戦い方をするのかと思いきや、やっぱりそうだった。対する橋本は事故のトラウマから格闘技でも

守りに入ってしまいがちな余り攻めないタイプなので戦績は余り高く無いのだ。

しかし戦場での実戦となれば話は別。幾ら守りに入ったって判定なんて無いので、たとえ1発しか攻撃を

当てなくてもその1発で相手を倒す事が出来ればその時点で自分の勝ちだ。大勝負を打つ時はよっぽど自信がある時しか

しないので、根気強く相手を観察して攻撃は勿論かわしたり時にはブロックしたりして橋本はチャンスをひたすら待っていた。

男はこちらを混乱させる為なのか割と無駄な動きが多い。足を小刻みに動かしてリズムを狂わせようとして来たり、たまに

斧と見せかけてフェイントでキックを放って来たりする等何だかウザイ戦い方である。が、橋本はどちらかと言えば冷静な

タイプなので動じる事無く落ち着いて男の様子を見ながら対処する。


そしてそのチャンスはやって来た。斧を突き出して、その勢いで左のミドルキックを男が繰り出して来たが橋本は斧を

しゃがんで避け、続いてやって来た男の左足をキャッチして思いっ切り太ももにキックボクシングとムエタイで培った肘を叩き込む。

更に連続で男の顔面にも肘を入れ、足を捻り上げて突き飛ばして男をよろけさせる。

「うおあっ!」

何とか男は持ち堪えて橋本の方に体勢を立て直すが、男の目の前には

橋本の姿が間近に迫っていた。

「ぐおお!」

よろけさせてそこからダッシュした橋本は、男の腹目掛けてダッシュからの膝蹴りを叩き込んだのである。

思いっ切りその膝蹴りで後ろに転がる男に、ここだと直感した橋本は勝負をかけに出る。


まずは男からなるべく離れない様にして接近戦に持ち込み、ローキックを中心にしてキックを繰り出して行く。

更に男の足にローキックがヒットして体勢を崩した所で、橋本はジャンプしてから肘を振り上げて男の脳天に

その肘を思いっ切り振り下ろす。

「ぐへぇ!」

物凄い衝撃が男の頭を襲うがそれでも男も堪えて、再度橋本に回し蹴り。2連続で回し蹴りを繰り出すが

橋本も身体を後ろに反らすスウェーで回避し、3回目の右回し蹴りを屈んで避けつつ思いっ切り右の膝を

男の腹目掛けて斜め下から振り上げる。

「ごっはっ!」

その膝蹴りで再度地面に倒れてしまう男に橋本は近づいて、男が起き上がって来た所にパンチを繰り出して行くが

何と男はヒョイヒョイと言う擬音がピッタリな動きでかわしてしまう。


(えっ……!?)

驚きつつもパンチを繰り出したりフェイントをかけたりして男に攻撃するが、それもまたかわされる。

(くっそ、こうなったら!)

その反射神経の良さを逆に利用しようと考え、右、左とパンチを繰り出して左のパンチを男が橋本から見て右に

頭を振って避けた所で、橋本は左の回し蹴り。当然男が頭を振って来た所に橋本の足がぶつかるので……。

「うぐぅ!」

倒れた男に再度橋本は駆け寄り、彼が起き上がって来た所で今度は膝蹴りを腹に叩き込み、それから左の

パンチを顔面に入れる。更には右のパンチを出しつつ右の膝を男に叩き込み、4回それを繰り返してダッシュからの

膝蹴りを再び男に見舞う。

「ぐへっほぅ!?」

それでも男も何とか立ち上がって動こうとするが、橋本はムエタイの構えを取りつつ男の動きに合わせて自分も

ステップで動いて立ち塞がる。


痺れを切らした男は橋本に背中を向けて距離を取ろうとしたが、橋本はダッシュからジャンプして男の横にムエタイの

構えを取りつつ着地。その勢いで今度は男に前蹴り、左回し蹴り、そして男に橋本は更に近づいてから左足で男の

右膝目掛けて何度も何度もローキック。

「ぐぅっう、ぐぅう!」

ヨロヨロになった男に、橋本は止めでダッシュしつつ右のローキックを男の左足に叩き込む。

そうして崩れた男の胸倉を掴んで拳を振り上げると、男はぶんぶんと首を横に振った。

「わ……分かった、俺の負けだ!」

「……」

その言葉に橋本は胸から手を離して男に背を向けて歩き出したが、男はすぐに立ち上がって斧を構える。


その気配を感じ取った橋本は振り返り、斧が振るわれる前にダッシュで助走をつけてジャンプし、きりもみ回転しつつ

膝を男の顔面に叩き込んだ。

「……やああああっ!!」

「がっ!」

変な声と共に男の身体が地面に崩れ落ちる。どうやらきりもみ回転して側頭部から叩き付けられた膝によって、運悪く男の首が

へし折られる形になってしまった様で男はそのまま絶命してしまった。それを見た橋本はこんな一言を男に言って立ち去った。

「そんな降参の振りなんてありきたりだな。良くある展開だ」

橋本もこの展開を幾らかは予測していたので、こうして落ち着いて対処する事が出来たのであった。


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