Run to the Another World第211話
永治の戦いはもはや豪快と言って良い程であった。栗山と同じく森林方面、そしてガケの広場へと
逃げて来た永治は自分を追いかけてきた兵士達に見よう見まねのプロレス技を駆使して戦う。
ジャイアントスイングで兵士を他の兵士にぶつけながら投げ飛ばし、ラリアットを食らわせて気絶させ、
ドロップキックで谷底へと突き落とす。勿論自分の武術である柔道技も組み合わせているのだが。
ヨーロッパではキャッチと呼ばれるプロレスは、勝敗を競うのでは無く舞台の上で役者が演技をする様に
演出にこだわる見世物だ。だから試合には台本が存在しているし、試合の結果も決まっている。
それでも試合を観客が見に来るのは、何と言ってもその技が見せる豪快さと肉体同士のぶつかり合いが刺激的だからである。
プロレスの試合は打撃から始まり、投げ技や関節技、そして時には椅子や鉄パイプ、フォークと言った凶器を用いて
戦う事もあるが、これも演出である。
しかし今の状況は演出でも何でも無い為、永治は思いっ切り目の前の相手を倒す事だけに集中する。兵士を抱えて
他の兵士に向かって投げ飛ばし、更に岩を持ち上げて投げつける。戦術も何も無いし、近くで一緒に戦っている
栗山や恵もヒヤヒヤしている。
「おらあああ!!」
雄叫びを上げながら兵士達を倒して行く永治であるが、そこにやって来ていた傭兵団の部隊長の1人である青髪の
ヴィリザも黙ってはいない。
「はっ……ラーフィティア騎士団第5パラディン部隊、なめんなよ!」
バトルアックスをビュンビュンと振り回し、ヴィリザは永治に攻撃を仕掛ける。両方に刃が付いているバトルアックスは、振り抜いても
叩き付けても相手を切り裂く事が出来る。ヴィリザは永治の隙が出来た所に中段蹴りを入れ、続け様に首を狙う。
しかしそれは永治のタックルによって阻止される。
「ぬあっ!?」
しかしすぐさま体勢を立て直してカンフーの如く軽快に斧を振り回すヴィリザ。永治は苦戦しているがそろそろケリを付けたい。
(一発勝負だが、狙ってやる!!)
片手1本の斧である為、左腕ががら空きだ。永治はまず一旦距離を取る。ヴィリザがそれに対して向かって来るので
スライディングはスライディングでも、後ろ向きに滑り込みつつ向きを変えて滑り込む。
「うっ!」
足をすくわれたヴィリザは両手を反射的に広げて永治の上へと倒れこみ、永治はヴィリザが覆い被さって来たのが分かった瞬間に
身体を全力で横へと倒す。
するとヴィリザも一緒に横へと倒れるので、永治は素早く立ち上がってヴィリザの両足を両手で取ってそのまま引きずる様に持つ。
片手斧はリーチが短いので、立ち上がった永治にはギリギリであるが届かない。
「おらあああああっ!!」
盛大に持ち上げ、永治はそのまま一気にジャンプして全体重を乗せてヴィリザの頭を地面へと叩きつける。
「ぐがっ……」
おかしな音がヴィリザの口から漏れ、90度以上に首が曲がっていた。パワーボムっぽいパイルドライバーでヴィリザの首をへし折り、
これでまた部隊長が殺害されたのであった。
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