Run to the Another World第209話
ダウンタウンで弓を持ってこちらをかく乱するアーチャーを見つけた哲は、
その男に向かってスライディングをかまして転倒させた。
「うおっ!?」
哲の存在に気が付くのが遅れたアーチャーはバランスを崩して転倒してしまうが、哲も
スライディングから起き上がって来たのでほぼ同時に起き上がった。
「俺とやる気か?」
「そんなに暴れ回ってたら俺だって気にもなるぜ! そう言えば御前は他の俺達の仲間に
会ったんだよな! ここに来る前に集会場でみんなで寝る時に聞いたんだよ!!」
「……ああ、そうだったな。御前とは面識が全く無いけど、敵として来るのなら俺は手加減しない」
熱くなり易い性格の哲と無口なアーチャーの2人のバトルが始まる。弓の両端に刃がついているので
それで攻撃して来るアーチャーだが、シュートボクシングで培った回避テクニックで難なくかわす哲。
だが無口な性格とは裏腹にこのアーチャーはとにかく攻めに攻めるタイプの様で、弓の他にキックも
駆使して哲を強烈なキックでぶっ飛ばす。
「ぐほっ!!」
壁に吹っ飛ばされた哲は目の前に迫る弓を見て素早く身体を横にずらして回避し、それにより隙の出来た
アーチャーに前蹴り。
「ぐっ!」
「やーーーっ!!」
パンチを繰り出しつつアーチャーに向かう哲だが、それでもアーチャーも負けじとキックで迎え撃つ。
前蹴りで今度は腹をど突かれ、続けてアーチャーの強烈なミドルキックを食らった哲は怯みつつも何とか踏ん張る。
「はあっ!」
アーチャーが更に向かって来ようとしたので、この状況ではまずいと一旦背中を向けて逃げ出した哲は如何すれば
良いかを考える。
(弓がまともに振るえない、そして矢を射る事の出来ない所に誘い込めば!!)
遠距離で戦うなら弓だが、接近戦なら絶対こっちが有利の筈。狭い場所で戦えば素手で戦うハンデは結構無くなる。
哲はそう考えて、近くに見えた10階建てのビルに逃げ込んだ。その中を走り回り、8階にある1つの事務所らしき部屋に
辿り着いた哲は後ろから自分を追い掛けて来たアーチャーに向けて、まるで掃除をする時の様に机の上に置かれている
椅子を思いっ切り全力で投げつけた。
「おっと!」
アーチャーは寸での所でその椅子を避けつつ弓を振るうが、事務所は広さが余り無いので不利になっている様だ。
自分の考えが正しかったと思いつつ、哲は今自分が投げた椅子が置いてあった机の上に飛び乗り、振るわれる弓を
前方空中回転しつつ机から飛び降りて避ける。そして着地して間髪入れずにアーチャーの腹にミドルキック。
「ぐおっ!」
続けて左のハイキックをアーチャーの側頭部に繰り出すが上手くキャッチされ、逆に身体を支える右足を蹴りつけられて
バランスを崩し、地面に哲は膝を着く。
「ぐぅ!」
アーチャーはそんな哲に右のミドルキックを2発連続で放つが、哲も起き上がりながら左腕でガードして、3発目の左回し蹴りを
身体を後ろに反らして回避。勢い余ったアーチャーの左足は窓ガラスを突き破ってガラスがアーチャーの左足の肉をえぐる。
「うおああああっ!?」
怯んで大きく隙が出来たアーチャーの顔面に哲は右のストレートパンチを叩き込み、更に怯んだ所に全力で右の回し蹴りを
アーチャーに入れる。
「ぐおあっ!!」
アーチャーは窓ガラスを突き破り、そのまま8階部分の高さから絶叫と共に真っ逆さまに下へと落ちて行った。
哲はその後を追いかけてアーチャーの生死を確認。
「うわ……」
言葉では言い表わせない程の無残な状況になっているそのアーチャーは、一目見ただけではっきり死んでいると分かる。
「結構強かったぜ。だが、どうやら俺の方が強かった様だな」
なるべくその遺体の状態を脳裏に焼き付けない様に目を閉じながら哲はアーチャーの遺体に背を向け、そう呟きながら
再び戦場へと向かって加勢の為に歩き出して行った。
Run to the Another World第210話へ