Run to the Another World第208話


ハリドは金髪の騎士、ザルトに苦戦する。

「まずは御前からだ!!」

彼は武器に2本の短剣を使う。2本の短剣となれば素早さが取り柄だと思い、勝負は技でかける事にする。

技と言っても普通のパンチやキックでは無く、ブラジリアン柔術だ。

(関節技と寝技で勝負だぜ!)

「柔術競技」「バーリトゥード」「護身術」を3つの柱にしているのがブラジリアン柔術。

ブラジルではリオデジャネイロを中心にサンパウロやクリチバなどで、長年にわたって盛んに行われている競技であり、

日本人柔道家の前田光世がエリオ・グレイシーやカーロス・グレイシーに柔道の技術を伝え、それを改良して

作られた武道になる。なのでこの2人の名字を取って「グレイシー柔術」と呼ばれる事もあるのだ。


護身術と格闘技と言った2つの顔を持つのが特徴であるが、前田光世から最初にこれを教えてもらった

エリオ・グレイシーは小柄でぜん息持ちであったのでこの経験を元に、体格が大きい相手や力のある相手でも

勝てる様に考え出された。寝技の組み技主体であるが故の安全性の高さや、全くの素人からでも始められる

ハードルの低さから競技人口が急速に増加している一方で、第1回のUFCから現在に至るまでの総合格闘技での

実績もあり、最強の格闘技として名高い。

柔術競技の稽古を中心に上達するとバーリトゥードで強くなる様に考えられているが、ブラジリアン柔術では

バーリトゥードと護身術を区別して捉えている。基本的には寝技に持ち込んだり、マウントポジションを取る事で

ポイントが加算されて行く仕組みなので、ハリドも積極的に寝技に持ち込む。短剣を振りかざして来るザルトの

下半身にスライディングからタックルして、ごろごろと転がりつつ寝技に持ち込もうとする。


しかしザルトは目一杯抵抗し、暴れ回ってハリドの腹を蹴りつけて顔面も蹴りつける。

「ぐあっ!?」

余りの衝撃に吹っ飛ばされてしまったハリドだが、すぐに体勢を立て直して応戦。押さえ込みが弱かったかと後悔しつつ、

こうなれば寝技以外の技を使ってこいつを倒すしか無いと考える。しかしどうすれば良い?

(……よーし……正当防衛だっ!!)

この方法しかないと考え、何かの日本のMANGA・コミックスで見た事がある方法を取る。

(子供の探偵物のコミックスだったな……。上手く行くかどうかわからないけどな!)

「死ねえええっ!!」

半ば発狂しながら向かってくるザルトに対して、しっかりと狙った右のハイキックで左手の短剣を吹き飛ばすハリド。

すると一瞬の戸惑いがザルトに生まれた為、その隙に彼の右腕を取った。


「死ぬのは御前だ」

そう言って右腕をぐいっと曲げさせれば、手に持ったままの短剣は彼の胸へと突き刺さった。

「ぐおっ……!?」

「終わりだ」

そのままぐっと奥へと短剣を押し込み、思いっ切り引き抜く。引き抜かれた場所からは血が流れ出し、一撃で

死ななくとも失血のショックで死亡する筈。しかしその心配はどうやら無用だった様で、一突きでザルトは死亡した。

「……さらばだ」

ザルトの手を離すと彼は倒れ込み、そのまま動かなくなったのを見てハリドは他の戦いに合流する為に歩き出した。


Run to the Another World第209話へ

HPGサイドへ戻る