Run to the Another World第201話
港湾方面へと向かった2チームは、何処か今迄見て来た港と同じ様な雰囲気を
味わいながらも、決定的に違う箇所も見て取れる事が分かった。その1つが居並ぶ
倉庫地帯であり、倉庫はこの世界においては木の小屋の様な物が多く並んでいるだけで、
ここでは地球で見て来た様なコンクリート作りの倉庫が並んでいたからである。更に言えば
地面も石畳では無くコンクリートで作られている。
「東京の埠頭と雰囲気似てるわよね」
「そうだな……それに地面もコンクリートだ」
洋子が思わず声を漏らし、それに周二も同意した。
色々とその後は倉庫の中を見回ったりしていたのだが、その時にジェイノリーやグレイル、
栗山が倉庫の1つからこんな物を発見した。
「あれ、何だこれ?」
「これってヌンチャク……?」
「こっちにはサイもあるぜ」
発見した物は何と、色々な地球の武器だ。と言っても銃火器類では無く、カンフー映画とかで
良く出て来る青龍刀や柳葉刀、それからヌンチャクやサイ、それに中国武術で使われる長い棍棒だった。
「手に取っても……良いのかな……?」
恐る恐るアイトエルがギュッとその武器のサイを握ってみるが、特に何も反応無し。地球人達が触っても大丈夫な様である。
「これ等は大丈夫みたいだな」
「ああ。俺達にも使える武器らしいけど。刃もついているみたいだし」
が、それを見ていたカルヴァルが口を出して来た。
「一旦それ等はこちらで預からせて貰うぞ」
「え? ああ……良いですよ」
と言う訳で武器をヘルヴァナール人に預け、最初の広場へと戻る事にした。
森林方面へと2チームが向かうと、明らかに人工的に切り開かれた様な場所が幾つも存在していた。
「これっていわゆるキャンプ場って所か?」
「あ、何か分かる気がする」
こんな場所もあるのかと凄い疑問に思っていたのだが、更に疑問に思う物を発見。
「なぁなぁ、これって日本刀じゃないのか?」
「えっ?」
弘樹の声に他の一同が向かうと、どうやら何かを発見した様だった。
1本の木に立て掛けてあったそれは、まさに日本刀である。
「本当だ。どれどれ?」
哲が触ってみると、特に何も反応は無いので鞘から抜いてみる。
「これって真剣か? 由佳」
「ええそうね。これは刃がちゃんとついているわ」
剣道家の由佳はこの日本刀に非常に興味があるらしい。
それから小さなログハウスが1つあったのだが、そこでは大鎌、木刀、メリケンサック、そして鉄扇に
インドの武器のウルミを発見。
「鉄扇は良いとして、大鎌は使わなさそうだなぁ」
「誰だよメリケンサックなんて持ってんの」
「木刀……これは赤樫かしら?」
「しかもこれ、確か兼山が使ってるって言ってたウルミじゃんよ」
地球人達はその武器を見てそれぞれ感想を漏らす。だが、その様子を見ていたリルザが声を掛けた。
「それはこちらとしても興味がある。御前達も扱える武器なのであれば後でこっちに説明して貰うから預かるぞ」
「分かりました」
この2チームが発見した日本刀、大鎌、木刀、メリケンサック、鉄扇、ウルミの6つの武器も一旦ヘルヴァナールの
連合軍に預けられる事に。
ダウンタウン方面へ向かったチームが見た物は東京で言えば住宅街に分類される様な地域であり、
建築技術だけで見てみればヨーロッパの様式の住宅街が立ち並ぶ地域であった。
「へー、なるほどね。こう言う場所もあるのか」
「そうね。現在のヨーロッパの様な香りがするわ」
「東京の下町と言うよりは閑静な住宅街だな。路地もあるし」
普通の住宅だけで無く、4階建て位の小さなビルやアパートもあり色々なバリエーションに富んでいる。
そして路地を探索していると、幾つかの路地の途中に武器が落ちていた。
「あら? 何かしら、これ」
「え?」
恵がそれに最初に気がつく。それは小さなナイフ……の様だが。
「ナイフ……にしては変な形ね」
すると今度は浩夜が口を挟んで来た。
「それって確か、藤尾から聞いた事があるんだけどカランビットって奴じゃね?」
「カランビット?」
「ああ。シラットのナイフだよ」
「そうなんだ……」
そしてそのカランビット以外にも色々な武器を他の路地で発見。次に見つけたのは手に持って腕全体を覆うトンファーだ。
更には何故か鉄球付きのチェーンも落ちている。
「何でこんな物が……」
「俺達には分からないさ」
唖然とするディールと、クールに流すアレイレル。
それから中国武術で使われる、3分割で折り畳む事が出来てトリッキーな戦い方の出来る武器の三節棍や、
大型のサバイバルナイフも何故か路地に落ちていた。それにはシークエルも興味しんしんだ。
「御前達の世界ではこれ等が武器なのか?」
「はい。色々な国の武器ですけど」
「そうか。なら、一旦こちらで調べますので預からせて貰うぞ」
そうシークエルに言われて、今は使い道が無いので素直に地球人達も見つけた武器を預ける事にしたのであった。
結果的に3方面で発見された武器はトンファー、大型のサバイバルナイフ、棍棒、鉄球付きのチェーン、
多節棍棒(ヌンチャク)、サイ、鉄扇、三節棍、柳葉刀、青龍刀、大鎌、カランビット、木刀、ウルミ、日本刀、
メリケンサック(ナックル)の16個だった。
「この土地特有の武器なのかな?」
「でも、明らかにヘルヴァナールの武器では無いですよ」
「これとかまさにそうですよね」
鉄扇を手にとってカルソンがしげしげと眺める。
だが、それよりももっと気になる事がラーフィティアのジェバーからもたらされる事になった。
「それ等の武器なんですが、魔力が感じられませんねぇ〜?」
「……そう言えばそうだな」
アーエリヴァの宰相エンデスもそれに気がつく。そして地球人にとっては初耳であったので、思わずサエリクスが尋ねる。
「ま、魔力?」
それに対して今度はイディリークの宰相モールティが答える。
「ええ。ヘルヴァナールの世界では武器や防具に魔力を込めて、武器はその魔力を常に外に放出させている様に、
防具では体内に魔力が取り込まれる様に作り出すのです。そうする事で人間の中にある魔力と武器や防具の反応を
させ、本来の攻撃力や防御力よりも更に高い力を出せるんですよ」
その説明を聞いたアイトエルが神妙な顔付きになる。
「もしかして、俺達がこの世界で武器を使えなかったのってそれが原因じゃないのか? 魔力が俺達に拒否反応を起こしたとか?」
「あっ……」
となれば、今までの武器と防具にまつわる不思議な光と音の現象は、その武器と防具の製造過程で魔力が込められて
いたから地球人達に魔力が拒否反応を起こしてしまったらしいと言う事があの音と光と痛みの正体であった。
「だから俺達はそっちの武器を触っても大丈夫だったのか」
バラリーがそう呟き、これで武器と防具に関しての謎も解けたのでいよいよエウリア城に現れたタワーに連合軍と地球人達が
乗り込もうとした……その時だった!!
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