Run to the Another World第192話
吹き抜けになっている大部屋の中で突入部隊と共に戦っていた和人と連だったが、
自分達に向かって来る敵を処理している内に何と突入部隊に置いて行かれてしまっていた。
「あ、あいつ等俺達を置いて行きやがった!!」
「早く行こうぜ!!」
「お、おう!」
置いてきぼりになる訳には行かないので、先に続くドアを和人が開けてそれに連も続こうとした時だった。
「うおあ!?」
自分の目の前を1本の槍が掠めて行く。その槍は壁に突き刺さったのでもう少し足を踏み出していたら
間違い無く突き刺さっていただろう。
「連!?」
後ろの異常に気がついた和人が振り向くと、その視線の先には連に向かって槍を投げたオレンジ色の
髪の毛の男の姿があった。
「御前はアルヴィン!?」
あの飛竜で連れ去られてここにやって来た時に、弓使いの男とコンビを組んでいると言っていた
アルヴィンと言う男では無いか。
「ほう、良い反射神経だな」
「くそっ……!!」
和人がその男に対して向かおうとするが、それを連が手で止める。
「ここは俺がやる。御前は先に行け」
「え? で、でも!」
「良いから早く!」
連の剣幕に押されて和人は先へと進んで行き、連は着ていたタンクトップを脱いでそれをぶんぶんと
振り回しながらアルヴィンに向かう。
「うお、くっ!!」
アルヴィンが怯んだ所に前蹴りを食らわせ、もう1度タンクトップを振り回してぶつけようとした連だったが
そのタンクトップを掴まれてしまい、逆に膝を蹴りつけられて連はダウンしてしまう。
「ぐあ!」
「こうしてやるぜ!」
ぐるぐると連の首にタンクトップを巻きつけて首を締め上げるアルヴィンだが、連は力を振り絞って
ダウンしたままの体勢から身体を捻りつつその勢いで後ろに向かって下段回し蹴り。
「ぬあ!!」
アルヴィンもそれで地面に膝を着き、2人は同時に立ち上がってパンチ合戦へ。
右、左、右、左と連続でアルヴィンがパンチを繰り出すが、連もそれを腕でガードして
最後の右のパンチを右手でキャッチした連はその手を掴んだまま自分の背中に来る様に
身体を捻り、空いている左手でアルヴィンの首を掴む。
「ぐっ……!!」
連の左腕を掴んでアルヴィンも首を締め上げるのを中断させようとしたが、
そのまま連はアルヴィンの身体を後ろから抱きかかえる形になって後ろに
バックドロップをかけようとする。
しかしアルヴィンも踏ん張って持ち堪え、壁に足を着いて何とか投げ飛ばされまいと踏ん張る。
「うお、ぐっ!」
そして逆に、空いている両手を使って連を前方へと投げ飛ばして背中から叩きつけた。
「ぐあ!」
しかし連はすぐにうつ伏せの状態に身体を反転させ、腕の力で起き上がりつつ両足で
アルヴィンの足を蹴りつけて逆に地面に転ばせる。
「うっ!」
だがアルヴィンはすぐに立ち上がって回し蹴りを繰り出し、その回し蹴りは連の顔面にヒット。
今度はうつ伏せに地面へと倒れこんだが、再び腕の力で起き上がってアルヴィンの大事な部分を
思いっ切り足で蹴り上げた。
「うはぁ!?」
変な声を出しつつ後ろへと倒れこむアルヴィンの目に、先程自分が投げた槍が映る。痛みを堪えつつも
何とか立ち上がってその槍を引き抜こうとしているアルヴィンを見て、連も一気に彼に接近。
(まずい!!)
アルヴィンは槍を右手で引き抜いて連に向かって構え……る前に、そのアルヴィンの右手を連は走り寄った勢いの
まま自分の右手で掴み、次に素早く左の脇を使って挟み込んでアルヴィンの右腕の肘の関節が曲がる様に自分の身体を捻る。
「うぐぉ!?」
槍の先端から短い部分を掴んで右手で引き抜いてしまったのがあだとなり、アルヴィンの胸に自分の槍が突き刺さる。
そのまま連は力を込めてぐっと彼の胸に槍を押し込み、彼を息絶えさせる事に成功した。
「はぁ、はぁ、ふぅ……」
膝を着いて床にどさっと倒れこみ、全く動かなくなったアルヴィンを見下ろして連は先に奥へと向かった突入部隊を
追いかける為に走り出して行くのであった。
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