Run to the Another World第19話
……のだが。
「何故だ……何故俺等がこんな目に!!」
「うおっと、あぶねぇ!!」
城内の安全を確認した筈なのに、その後全員が余裕を持って入れる大広間に移された
11人がまた金色の鎧の奴等に襲われていた。いきなりまたもや城内に金色の鎧の人間達が
乗り込んで来たのだ。恐らく一旦撤退したと見せかけて安心し切っている所を襲撃すると言う
2段構えのトラップだったのだろう。当然11人も大広間に乗り込まれて来られたからには応戦するしか無かった。
既に大広間での大乱闘が始まって3分が経過しようとしている。ボクシングで言えば1ラウンドが終了する。
なるべくこの部屋の中では1箇所に固まらずにバラバラになる事で標的を分散しているが、
それもまだまだ襲い掛かって来る金色の鎧の集団相手に何時かは力尽きて殺されてしまう。
だがその時だった。ふと空を見上げた連が、遠くの方から何か大きな影が近づいて来るのに気が付いた。
「んっ? お、おいグレイル、何だあれ?」
「何だよ! な……あ?」
そしてそのシルエットの正体に真っ先に気が付いたのも連だ。
「あ、あれって……まさか!?」
「え、な、何で?」
グレイルもそのシルエットの正体に気が付き、再び呆気に取られた顔になる。
そして他のメンバーもそのシルエットが大きくなって来るのに気が付いたばかりでは無く、
城の至る所で戦うファルス帝国軍からもどよめきやざわつきが。
勿論それには別の場所で戦っていたセヴィスト達も窓の外を見て気が付いた。
「な、何だあれは!?」
「陛下、大きなドラゴンが向かって来ます!!」
「何だと……!?」
驚愕の表情を浮かべるセヴィストの目の前を通り抜け、ドラゴンは一旦大きく上空へと上昇。
そして急降下してその降下地点に居た11人の部屋の前で止まり、翼をはためかせながらホバリングする。
「うおわ!?」
「おおっとぉ!?」
「え、あ、あれ、このドラゴンって……敵じゃないの?」
訳が分からず戸惑う洋子の目の前で、何とそのドラゴンは人間の言葉を吐き出して来た。
『我との約束、忘れた訳では有るまい?』
「何で? え、どーして!? と言うか約束って何だ!?」
連も驚きの色を隠せなかった。いきなり目の前に、人間の言葉を話す白いドラゴンが現れたのである。
『ここで御前達が殺されたら、我との約束が果たせなくなるだろう? それよりも話は後だ。全員乗れ!』
「お、おう!」
11人は適当にそれぞれ残っている金色の集団を片付けた後、さっさと窓からそのドラゴンの背中に乗って
何とか大広間から命からがら逃げ出す事に成功。しかし、これでこの件が勿論終わった訳では無かった。
「一体どう言う事なんだよ、説明してくれよ!?」
『だから後でその説明をする。今はとにかく、安全な場所まで逃げるぞ!!』
そのセリフの通り、ドラゴンの背中に乗ったまま一同はファルス帝国の東側へと向かって飛んで行く。
するとその空の向こうから、何ともう1匹灰色のドラゴンがいきなり現れた。
「えっ、えっ!? あれって何!?」
「あれもドラゴンだ!! あっちは敵か!?」
和美も永治も目まぐるしく変わるこの状況にパニック状態を隠せないが、ドラゴンは冷静な口調で答える。
『心配するな、あれは我と同じ存在だ。流石にこの人数は我でもきついから、空中で飛び移って貰うぞ』
「ええっ!? そんな無茶苦茶なぁ!!」
冗談でも何でも無く、どうやらこのドラゴンは本気で11人に飛び移って貰うつもりの様だ。
『タリヴァル、もう少し近付いてくれ』
『ならそっちが下に行けば良いだろう。上下の高低差を利用しろ』
『あー、分かった。と言う訳でとりあえず6人位ならこっちに乗れるぞ』
灰色のドラゴンのその指示に、身軽な動きに定評のあるハリド、洋子、令次、周二、和美、流斗の
6人がタイミングを見計らって灰色のドラゴンの背中に向かって上手く飛び移る事に成功。
『これで良いだろう。これから集合ポイントへと案内するからな』
「集合ポイント?」
岸が訝しげに聞くと、白いドラゴンは首を縦に1度動かす。
『ああそうだ。そこへ行ってから御前達の疑問に答えてやる。聞きたい事がたっぷりあるだろうし、
こっちも同じ様に御前達異世界の人間達には聞きたい事がたっぷりあるからな』
「何で……それを……?」
自分達が異世界の人間であると言う事を何故このドラゴンが知っているのか、と言う事について
連が疑問を漏らすが今はその答えを聞く事は出来ず、黙って背中に乗っているしか無いのであった。