Run to the Another World第188話
明の方はもう殴られ続けた事で顔がボロボロになっている。
しかしまだ倒れないのでハヴィスは若干驚いていた。
「これだけ殴ってもまだ倒れないとはな、それなりに鍛えている様だ」
それでも顔中血だらけになった明。このままだとマジで死んでしまう。
(こ、これじゃあ……! でも、こんな奴にこれ以上好きにさせてたまるか!)
明は必死に腕を動かし、ハヴィスにパンチの1発でも食らわせてやろうとする。
だが、がっちりと部下の4人が明の体を固定する。
「くっそ………! てめ、このやろ、1発殴らせろや!」
その言葉を聞いたハヴィスは、ほうと感心した様に笑みを浮かべる。
「そうか、ならそのボロボロの体とその無様な格好で、私に1発でも当ててみるが良い」
両手を腰に当て顔を前に突き出し、明に向かってにやりと不敵な笑みを浮かべるハヴィス。
(くっそ……ムカつくぜ……!!)
手足を振り回し1発でも当ててやろうと懸命に明は頑張るが、ボロボロの身体では思う様に力が入らない。
(手が届かないのなら…!!)
ぷっ、とハヴィスに向かってツバを吹きかける明。
「へっ……ざまぁみろってんだ!」
「…………」
だがハヴィスは無言で顔のツバを左手でぬぐうと、右手で思いっきり明の顔を殴りつけて言った。
「私の城でツバを吐くな」
「ぐう……!」
やっぱり何も出来ないのかと歯軋りする明だが、ハヴィスがファイティングポーズを取ったので自分も応戦する。
右に左に動けるだけ動き何とかハヴィスをかく乱させようとするが、やはり限界がある。
(こうなったら……!)
ハヴィスのパンチをギリギリで受け流しつつ、明は身体を回転させる。
「な!?」
「くおっ!?」
「あ、危ねっ!」
「うわ!」
部下の4人が、いきなり引っ張られる事に戸惑いと焦りを覚える。
それを見た明は右手で思いっきりリレクの体を引っ張り、左足の力を最大限に込めてリレクを蹴り飛ばす。
「ぐあ!」
「何!?」
その状況を見たハヴィスは明に素早く近づくが、明はそれを逆手に取って右手のロープをハヴィスの首に引っ掛ける。
(よっしゃ!!)
思わず部下の4人が明を引き剥がそうとロープを引っ張るが、それによってハヴィスの首も絞まってしまう。
「ま、待て! 引くなアルヴィン!」
「は、はい!」
左手を固定するアルヴィンに指示を飛ばすが、その指示のおかげで明の左手は自由になる。
「おら!」
「ぐがぁっ!?」
左のパンチをハヴィスの顔に叩き込むが、ハヴィスはまだ倒れない。
「お、おいリレク! 引け! 引くんだ!」
「……はっ!」
右手を固定するリレクに、ハヴィスが今度は指示を飛ばす。
しかしそれだと今度は明の右手も引っ張られるので、明はハヴィスに近づく。
その勢いで、思いっ切りパンチのラッシュを明はハヴィスの顔面に浴びせる。
「ぐぐ……!」
「らららっらあらららあああああ!!」
だが後ろで待機していたラスフォンが、思いっ切り明の頭を背中から外した矢筒でぶん殴った。
「ぐ……あ!」
さっきまでハヴィスにボコボコに殴られ続けていただけあり、明はそこで気絶した。
「はぁ……! はぁ……!」
ロープからは解放されたが、鼻血を噴出したハヴィスは息を切らせつつリレクとアルヴィンを1発ずつ殴る。
「このっ……」
「ぐは!」
「役立たず共めが!」
「うぐ! も、申し訳ございません、陛下……!」
「こいつ等を地下牢へ叩き込んでおけ! 餌としてはまだ利用価値がある……!!」
3人はゼッザオの城にある地下牢へと放り込まれた。
「う……む……」
最初に目を覚ましたのは最初に気絶した和人だった。
「ぐあ……鼻と口が痛てぇ……って、お、おい岸! 明! しっかりしろ!」
隣で気絶している2人を起こそうと、和人は2人の頬を叩いて反応を見る。
「う、あ……」
「ぐぇ…う……」
「お、おい! 大丈夫か!? おい!」
うめき声を上げつつも、何とか2人も意識を取り戻した。
「ああ……苦しかった……!」
「ぐわ……目が思う様に開かない……!」
岸はまだエヴォルのボディブローの感触が腹に残っている。明はハヴィスに殴られ続けた事で
鼻血が固まって鼻の下にこびりついている。口から流れ出た血も唇の端に浮いているし、目はぼっこり腫れている。
「ここは……」
「どうやら牢屋らしいな……俺等3人、放り込まれたって訳だ」
「マジで……!?」
どうにか脱出したいが鉄格子の前にはしっかり見張りが居る。となれば、ここで誰かが助けに来てくれるのを
待つしか無いだろう。もしくはどうにかして脱出する作戦を考えたい物であるがなかなか良い案も思い付きそうに無い。
「……俺達、このまま死ぬのかな?」
和人がポツリと呟くと、その呟きに反応した岸が頭を抱えて声を出す。
「そんなの絶対嫌だ!!」
「俺だってそうだぜ……」
3人は嫌な臭いが立ち込める地下牢の中で、はぁ……とため息を吐くしか無かった。
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