Run to the Another World第186話
「えっ!? 岸と明と和人がさらわれた!?」
「ああ、飛竜に連れ去られて城の方へ行くのを見たぜ!」
兼山の報告に連は心底びっくりしていた。
「だったら……助けに行かない訳は無いだろ!」
「そうだな。他の奴等にも声を掛けよう!!」
藤尾の宣言に連も同意し、戦闘が今一段落している間に他のメンバーに声を掛けて行こうとしたが……。
「げっ、また来た!!」
「う、嘘だろ!!」
「うっわ、最悪のタイミングじゃないか!!」
また敵の増援がやって来たので、報告する前にどうやらこの増援を倒して行かなければならない様だ。
そうして増援を片付けながら3人は戦場を駆け回っていると、その中で城のそばにある川の前の土手から
城の内部に道が繋がっている事に気がついた。
「あれ? ここを通って行けば城の中に行けるんじゃないのか?」
「そう……らしいな。裏口辺りに行けそうな気がしないでも無いから、行くだけ行ってみよう」
「そうするか」
3人はそのまま城の方に向けて走り出して行ったのだが、その3人の姿を見かけた人物達の姿があった。
(あれ、あの3人はもしかして……)
何をする気なのか不審に思ったその人物達は、お互いを見てうなずくとその人物達の後を追いかけ始めた。
川沿いの道にも何人か敵が居たが、3人はそれ等を川へ突き落としたり首の骨を折ったりして1人ずつ
撃沈させて行き、そのまま城の裏口らしき所の門番も倒してそのドアの前に立っていた。
「ここから中に入れそうだな」
「何か、セキュリティが万全なのかそうでも無いのか」
「船着場とかそう言うのでは無いのか?」
それでもこのドアから城に入れると言うのであればラッキーなので、藤尾がそのドアに手を掛けて開け放った……次の瞬間だった。
「何をするつもりだ」
突然後ろから声が聞こえ、更に肩を掴まれた藤尾は物凄く驚いて
咄嗟にその手を掴んで相手の体勢を崩そうとしたがそれは別の手に止められる。
「おい待て、良く俺を見ろ」
「あっ……!?」
声を掛けて来たのはファルスの皇帝セヴィストで、手を掴んで止めたのはバーレンの皇帝シェリスだった。
そしてその横からシュアの国王レフナスが質問をして来る。
「貴方達がこちらに向かうのを目撃しましてね。追いかけて来たのですよ。何故3人だけで行こうとするんですか?」
その質問には連が答える。
「岸と明と和人が、飛竜に連れ去られるのを見たから……。勿論他の奴等にも言おうと思ってましたけど、増援が
来て言えないままこっちに俺達が来てしまったんです。それに連れ去られたって事は凄く嫌な予感がするんで、一刻も早く
俺達だけでも乗り込んだ方が良いと思いまして」
「馬鹿な事を。御前達は軍人では無いのだぞ?」
セヴィストが呆れた口調で行くのを止めさせようとするが、それは兼山が阻止しようと頑張る。
「連れ去られて行った奴等を見捨てろって言うんですか? 時間も無いのに!」
「そうは言っていないだろう。ただ、準備を整えてからの方が良い筈だ。ここは敵の本拠地だし御前達3人だけでは
絶対に限界があるからな。何人か部下を連れて来るから待っていろ。すぐに戻るから勝手な行動はするなよ!!」
そう言ってセヴィストはダッシュで駆け出して行ったが、残った5人で押し問答が始まる。
「本当に嫌な予感しかしないんだ。頼む、中に行かせてくれ!!」
「それは出来ない! もし無理に行こうとするのなら斬る!!」
シェリスは本気で腰のロングソードに手を掛けているが、異世界人の3人も諦めようとはせずに何とか踏ん張って
城の中に入ろうとする。だがそんな押し問答を続けていた所に、セヴィストが連れて来た突入部隊のメンバー達がやって来た。
「待たせたな。と言ってもまだ揉めていた様だが?」
「ええ、行く行くって言う事を聞かなくて」
レフナスが疲弊した顔付きでそうセヴィストに告げたが、もう引き止める必要も無い。
「もう大丈夫だ。俺達と一緒に戦うならありだろう。流石に団長達は忙しかった様だから一般兵しか連れて来られなかった。これで良いな?」
「あ、はい……」
一緒に突入する部隊が居ると言うのは心強い事になると3人も考え、その申し出を受け入れて城の中へと突入して行くのであった。
慎重にエウリア城内を探索しながら、連、兼山、藤尾の現役首都高組の捜索は始まった。曲がり角に着く度に先の様子を
窺いながら進んで行く現役組。
「どうだ?」
「兵士が2人だな。俺がひきつける。後は頼むぞ」
「わかった」
藤尾がまずは飛び出して行き兵士達に存在を気が付かせた後にすぐ逆走して、曲がり角までやって来た所で連と兼山が不意打ちで倒す!!
「良し、上手く行ったな」
「どうだ藤尾、何処か目ぼしい所はあるか?」
兵士が身に着けているマントで兵士を縛り上げた連と和人に、壁に貼ってある地図を見て藤尾は自分なりの答えを出す。
「どうもこのエウリア城は3階建てみたいなんだが……1階多いんだよ。もしかしたら地下室かも知れないんでな。
地下にある物と言えば、やっぱり……」
「……地下牢か」
「そう言う事になるな。そこが怪しいだろう。この地図だと……もう少し先に進んだ所に地下への階段がある筈だ。行こう」
「ああ」
3人はまず突入部隊と共にそこへ向かった。
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