Run to the Another World第184話
ドラゴン達の治療も終わり、魔導師達はそのドラゴン達の背中に乗せて貰って先行する一同に追いついて来た。
そのまま先へと進んで行くと、確かに大きな街があったのだが……。
「あれ、ここってこんな人気が無い場所だったっけ?」
「いや……人が住んでいた筈だが」
辿り着いたフライオは、何と人が1人も居ないゴーストタウンになってしまっていた様で二刀流の男もグレトルも驚いている。
「でも、このフライオには魔導砲が当たらない様になっていると言う話も見学の時に聞きました。そもそもあの魔導砲の
発射軌道自体が1方向にしか飛ばせないみたいなんです」
「それって、結局方向転換出来ないって事?」
「そうです」
「何だ、だったら全く意味無いじゃない。要はその軌道上に入らなければ良いだけね」
由佳に問われた金髪の男が首を縦に振ると、ふっと由佳は鼻で笑い率直な感想を述べるのであった。
それならば何も問題は無いと言う事だし、事実そのフライオは魔導砲のレーザーの軌道を避ける様にして
家が建てられていたから、一同は野営地を敷いたりそのフライオの家を寝床として今回は間借りさせて貰う事になった。
雨や風を凌げる場所があると言うだけでも嬉しい物である。だが、その前に黒ずくめの男達4人と何故かその4人と
一緒に居たエスティナは各国の王に呼び出され、フライオで最も大きい建物の神殿となっている場所へと集められていた。
「さて、それでは御前達の事を聞かせて貰うとしよう」
最初に出会った時に、自分達の事は後で聞けると言っていた金髪の男のその言葉通りに王達は素性を聞き出す事になった。
あの集会場の場所よりは少し狭いが、それでも王と宰相と騎士団長達が入り切れない狭さでは無かったので簡単に
素性を晒して貰う事になった。その結果二刀流の男がシャレド、金髪の男がグリス、大剣の大男が異世界人達にも言っていた
通りグレトル、そしてリーダーがリヴァラットと言う名前の男達で、『闇より現れし龍撃剣』と言う中学生が名付けそうな
ネーミングの傭兵集団であると言う事がわかった。
詳しい話は全ての戦いが終わってからまたする事にして、4人の謎めいた男達とエスティナの事情聴取はこれにて一旦終了。
まずはじっくりと体力を回復した後で、このフライオに鎮座する城に乗り込むと言う作戦を立てて居た筈だったが、事態は急展開を見せる!!
「だ、団長っ!!」
「どうした?」
エスヴェテレスの騎士団に入ったブラヴァールが血相を変えてディレーディやザドールの居る家に飛び込んで来た。
そして次の瞬間、とんでもない事実がブラヴァールの口から告げられる。
「て、敵襲です!! 金色の鎧を着込んだ軍団が、城からどんどん現れてこちらに攻撃を仕掛けて来ております!!」
「何だと!?」
ザドールが事実確認の為に家の外の様子を窓から窺うと、確かに何時の間にか音も立てずにエウリア城からやって来た
金色の鎧を着込んだ兵士達がフライオを襲撃しているでは無いか。
「応戦しろ!! 陛下、この家から決して出られません様に!!」
「わ、分かった!」
その報告は勿論エスヴェテレスだけでは無く他の軍にも伝わり、異世界人達も突然の事態に状況を飲み込み切れずに
乗り込んで来た兵士達を迎え撃つ。そしてその金色の鎧の集団は、異世界人が最初にトリップした3カ国の面々と
異世界人達には見覚えのあるあの忌まわしい思い出の集団でもあったので、一層気合が入ってしまうのであった。
一瞬にして先程まで静かだったフライオが戦場へと早変わり。
武器と武器が交わる金属音、無残にも殺される兵士の断末魔、矢の飛ぶ風切り音等様々な音が交わりあって
戦場の様子を構築して行く。その中で異世界人達も、それから闇より現れし龍撃剣も加勢して戦っていたのだが
更にこの後に衝撃的な事態が戦う一同に襲い掛かって来る。それは忌々しい記憶を更に呼び起こす存在の登場であった。
「わあっ!?」
「ひ、飛竜だと!?」
あの伝説の飛竜と比べればサイズが明らかに小さいが、それでも人間にとっては脅威となる飛竜が戦場に何匹も乱入して来る。
それを空に見つけて思わずラーフィティアのヘーザやシャプティは声を上げてしまう程であったが、だからと言って逃げる訳にも行かないのである。
必死に弓や投げ槍、そして魔導で応戦するしか無いのだ。勿論異世界人達もその存在に気がつかない筈は無かったのだが、流石に
素手となると対応のしようが無いのでどうしようも無い。なので飛竜が突っ込んで来たらとにかくかわすしか無いので、戦っている間も
周囲に気を配らなければ行けないと言う状況だ。岸、明、和人の3人もそれは例外では無く、必死に戦いながら何とか自分の身も
守らなければいけないので大変だ。
が、その時何処からかバサッ、バサッと規則的な音が聞こえて来る。それも複数だ。
「ん?」
「何だ、この音は?」
3人は辺りを見渡すが、どこにも音源らしい物が見当たらない。
こう言う時に人間は余り上に注意が行かない物。それを3人は身体で知る事になってしまった。
3人の上に大きな影が現れる。それは何と3匹の飛竜であった。いきなりその乗り手に明は襟首を掴まれ、
和人は身体ごと抱きかかえられ、岸は2人がかりで持ち上げられる。
「は、な、何!?」
「う、うおおおおお!!」
「ちょ、え、ええーーっ!?」
飛竜はそのまま、エウリア城の方へと3人を捕まえて猛スピードで飛び去って行った。
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