Run to the Another World第183話


『む? こ、この魔力は……?』

『やばい!! 御前等全員、遠くに逃げろ!!』

何かを察したらしいグラルバルトと、とてつもなく嫌な予感を感じたエルヴェダーが声を張り上げたが

声が勿論全員に届く訳も無い。

『くそっ!!』

仕方が無いので元の姿に戻ったドラゴン達が、一斉に人間達の前に出てその巨大な身体で壁を作る。

そして次の瞬間、遠くの方が一瞬眩しく光ったかと思うと一筋の光がドラゴンの壁目掛けて向かって来る。

そうしてその光を浴びたドラゴン達は大きな雄叫びを上げ、次々と地面に崩れ落ちて行く。

「えっ……え?」

「な、何が起こったんだ?」

余りにも突然の事に呆然とする一同。

しかし、金髪の男が次に口に出した一言で何が起こったのかが明らかになる事になった。


「今のはまさか、魔導砲……?」

「あ、あれがその魔導砲だってのか!?」

真っ先に反応したのは博人だった。

「恐らくそうでは無いかと思います。城の方から今の光が飛んで来ましたし、物凄い魔力を感知しましたから……」

「って、それよりもこのドラゴン達結構やばそうだぜ!?」

一方でドラゴン達の惨状に気がついた流斗が大声を上げる。

『わ、我等なら平気だ……この程度で死にはしない』

『でも僕等に結構効いたから、威力は凄いよ……』

タリヴァルとシュヴィリスが声を絞り出して今の状況を伝える。

「し、しかし明らかにダメージ負ってるじゃないですか!!」

「おい、魔導師の奴等が出番みたいだぞ」

慌てるリュシュターと、冷静に指示を出すシークエルを見て各国の魔導師達が一斉にドラゴン達の治療を開始して行く。


「魔導砲って物凄い威力だな、あれ……」

「ああ。ドラゴンが一瞬で、しかも複数同時に倒されるんだからな」

ヴィルトディンのエルガーとクラデルがその凄まじい威力に驚いていると、それを聞きつけた金髪の男が声を掛けて来る。

「しかし、これも見学の時に聞いたのですがやはりあれだけのエネルギーを充填するのには時間が掛かるらしいです。

1発撃てば2時間は充填しなければ次を撃つ為に必要な魔力のエネルギーが溜まって行かないそうです」

「そこは納得出来るが、もしあれを人間がまともに食らえばひとたまりもあるまい」

ラーフィティアのローエンも心底威力に驚いている声色だ。

「それだと、今1発発射されたから次の発射までは少なくとも2時間は時間がある訳だ。それまでにこのドラゴン達の治療を

してから少しでも進軍をしたいがな」

ヴィーンラディの騎士団長ジェラードは進軍計画を頭の中で組み立てつつそう言う。今はこのドラゴン達を回復させつつ、

進軍出来る者は進軍させておいた方が良いと言う事で、ドラゴンの治療に当たっている魔導師達以外は先へ進む事になった。


「あいつ等、大丈夫なのかな?」

「口でああ言ってるんだから、大丈夫だろう」

イディリークのラルソンとジアルがそんな会話をする一方で、永治とアレイレルは別の事を考えていた。

「この先に俺等が戦った奴等が居るのか」

「ああ。結構苦戦はしたけれど、もしまた出て来たらそいつ等と俺達は戦った訳だし、もう1度勝つだけだ。あの武具が

俺達が地球に戻る為のキーアイテムになるんだったら、尚更その方が良いだろうしな」

あの武具をファルスとバーレンのそれぞれの城から奪って行ったと言う奴等にもう1度会うのであれば、自分達は

実際に1度のその首謀者と思われる人物達と戦っている訳だから負ける気がしないと言う2人。


が、それを横で聞いていた明が2人に問い掛ける。

「なぁ、その武具を掻っ攫ってったって奴等、どんな格好してたとかそう言うのは覚えているか?」

真っ先にそれに反応したのは永治だった。

「え? ああ、俺が戦ったのは赤い髪の毛に黒い鎧を着て、大柄な身体をしているワイヤー使いの男だった。

和美と戦ったのは黒い髪の毛に水色のローブを着込んでいる魔法使いだったな。背は俺より低かった。鎧の男は

俺が腕ひしぎで腕を折ったから、それが完治しているかどうかが勝負の鍵だろう」

首都高で1度でもバトルした相手の顔は決して忘れないと言われる位の記憶力を駆使して、永治は事細かに

あの2人組の特徴を伝える。


一方のアレイレルは何とか記憶を手繰りながら特徴を思い出す。

「えーと、俺と戦ったのは金髪で若干背の高い男だった。とにかく若い奴だったのは俺も覚えている。若いなりにも

戦いには手馴れている様子だったから、相当の場数を踏んだ経験があるんだろうな。

もう1人は茶髪の大柄な男で、こいつもまたその金髪の男と同じで若い奴だった。大剣が武器だったな。

ちなみに金髪の男は普通のオーソドックスな剣を振り回していた。茶髪の男とは博人が戦ってたから戦いぶりは博人に聞いてくれ」

あの時は自分も必死だったので、茶髪の男と博人の戦いに目を向ける余裕が全く無かったと言うのがアレイレルの報告であった。


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