Run to the Another World第182話
「……と、とにかく俺達はこのゼッザオにあるって言う城に向かわなければならないんだが、知ってるなら案内してくれないか?」
「てか、今どの辺なの?」
哲と由佳の質問に、メッシュの男が自分の懐から出したゼッザオの地図を見せながら答える。
「それ位ならお安いご用だが……今俺達はここにいる」
どうやらゼッザオは縦に細長いのが特徴的な様である。そうしてそのゼッザオの地図に差している指を上にずらして行き、
ある場所を指でつついた。
「この辺りに御前達が目指していると言うエウリア城がある。ゼッザオの南端だ。位置で言えばここから歩いて
丁度20分位だ。その城の前には王都のフライオと言う街があるから、そこに泊めさせて貰う様にするか?」
「そう……して貰えると助かる」
メッシュの男の提案に、バラリーが戸惑いながらもうなずく。
「分かった。その街は俺達が住んでいた場所では無いから詳しい事は余り
俺達も分かっていないのだが、実際に行った事が何回かあった時は広い街だったから
この人数であっても余裕を持って泊まれる筈だ。ただし、人数の問題で軍人達には
野営の準備をして貰わなければ困るから、それを覚悟しておいてくれ」
「良いだろう」
意外にもあっさりとメッシュの男の確認にヴィーンラディのエルシュリーが了承し、
この後ろに控えている各国の軍人達は野営地を敷く事で同意して貰う。
「なら、そのフライオへ行く道のりだが……実を言えばこの先にあるあの森を抜ければもう後は真っ直ぐ行けば良い。
あの森にも別にこれと言って凶暴な魔物が住んでいる訳でも無いからな。だからこそ、敵から進軍がばれ易いと
言う盲点もある訳だが」
「だったら夜中に進軍するだけだ」
そう言い放つエスヴェテレスのディレーディだが、それをするに当たって考えなければいけない事が次の瞬間
金髪の男の口から告げられる。
「夜中は良いのですが……あの城には少しばかりまずい物があるんですよ」
「まずい物だって?」
その栗山の問いに金髪の男も続ける。
「はい。あの城には魔導砲と呼ばれる超大型の大砲が設置されていましてね。これはゼッザオの中でも兵器として
有名な物で、一般人だった僕達も城に見学に行った時に見せて貰った事があるんです。城の兵士が言うには、
その魔導砲は魔力を動力源として、大型のレーザーを広い範囲に撃ち放って周囲の敵味方問わず一瞬で
消し去ってしまうと言う超強力なレーザー砲らしいです」
「うわ、ハイテク……」
ファンタジーと言うよりもどちらかと言えば現代の軍のレーザー関係の兵器を連想したり、剣と魔法よりもこれって
SFの世界じゃねーかと内心びっくりする栗山。
「それってどうやって止めるんだ? 止める方法があるのだろう?」
シェリスがもっともな質問をするが、それに金髪の男は首を横に振る。
「いいえ……流石にその魔導砲の内部構造全てを聞いた訳ではありません。細かい所はやはりと言うか
軍事機密の様で、ノーコメントでしたから。ですから止め方は分からないのです」
「だったらその魔導砲に詳しい奴を捕まえて聞き出すだけだぜ」
弘樹がそう言うと、意外な事を金髪の男は言い出す。
「その方がむしろ良いかも知れません。それさえ使えない様にしてしまえば怖い物は無いと思います」
要は敵の主力武器をまず使えない様にしてしまえば有利に戦況を進められる筈だと言う事である。
「だったら俺達軍人が突破口を作った方が良さそうだな。そうして異世界人を中へと突入させる。
ああ、勿論精鋭部隊も向かわせる。そこはこの先のその街で休みながら決めるとしよう」
そのカルヴァルの意見が通ったので、一同は謎の4人組とエスティナを一時的に仲間に加えて進軍を再開する。
メッシュの男が言っていた通り、森では特に大きな魔物に遭遇する事も無く小さな魔物は全て
軍人達が撃退してくれたので戦う必要も無かった。更に余り深い森でも無いらしく、30分程歩き回ったら
すぐに出口へと辿り着く事も出来たので何だか拍子抜けであった。
その森の先には平原が広がっており、ずっと先の方には確かに城らしき大きな建物がうっすらと見えるでは無いか。
「あれかな?」
「そう、あれがゼッザオのエウリア城だ」
洋子の問いにグレトルがボソッと答え、一同はそのエウリア城を目指してそのまままっすぐ進軍して行く……つもりだったのだが、
次の瞬間ゼッザオの底力を思い知る事になるのであった!!
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