Run to the Another World第181話


転送装置を使い、一行は次々にゼッザオの地を踏んで行く。

「ここがゼッザオ……」

バラリーがそう呟きつつ、目の前に広がるゼッザオの土地を踏む。地面は土となっており、先の方には

大きく広がる森が見えている。

「とりあえずはあの森を抜けないとダメな様だな」

アイトエルがそう言いつつ歩き出し、他のメンバーやヘルヴァナールのメンバー達もそれぞれその後ろについて行く。

すると、前方に人影がある事にハリドが気が付いた。

「おい、誰か居るぞ!!」

そのハリドの声で一斉に身構える異世界人達と、それぞれ武器に手を掛ける武器持ちのヘルヴァナールメンバー

だったが、その人影……どうやら5人組には見覚えがあった。

「あれ? 貴方達は……」

「お、御前達は!」

最初に声を掛けて来た人影は、何とあの金髪の黒ずくめの若い男であった。良く見てみればメッシュの男、

二刀流の男、大剣のグレトルと4人が揃っている。更に何とその横にはラーフィティアで逃げた筈のエスティナも

居るではないか。それにジェイノリーが反応するが、当然ジェイノリー以外も反応する訳で……。


「貴様等、何者だ?」

エスヴェテレスのディレーディがその男達に問い掛けると、彼がリーダーだと以前異世界人達が聞いた事の

あるメッシュの男が歩み出て来た。

「俺達はヘルヴァナールの各地を回っている傭兵団だが……ここの霧が晴れていたのでこうしてここにやって来た。

そしてあんた達に遭遇した。凄い豪華なメンバーだな。各国の王様や異世界人達が勢揃いとは」

一同の威圧感に怯む事無く、メッシュの男はそうセリフを続けた。

「……何が言いたいんですか?」

今度はシュアのレフナスがそう問いかけると、それにはグレトルが答える。

「俺達はこの女以外の全員がここの土地を良く知っている。だから俺達を今だけ仲間に加える気は無いか?」

「え?」

「それは御前達の素性をもっと良く教えて貰ってからにして貰おうか」

まさかの発言に目を丸くするレフナスと、尊大な態度で返答するラーフィティアのカルヴァル。


が、それにはグレトルでは無く金髪の男が答える。

「貴方達には時間が無いと思いますが。この先に急がなければならないのでしょう? だったら僕達の事を聞くのは

後で幾らでも出来る筈です」

「何を言っている? 素性も分からない様な奴と一緒に行動する気は無い」

ファルスのセヴィストも同じく尊大な態度で返したが、この後に異世界人達も初めて耳にする驚愕の事実が

メッシュの男からもたらされる事に!!


「俺達はこの国の事を御前達よりも良く知っている。この地で生まれ育ったのなら当然だ」

「へ?」

「は?」

「こ、ここで生まれ育ったって……まさか……」

呆然とする弘樹と栗山、その一方で動揺した声で問い掛ける真由美にメッシュの男が続ける。

「このゼッザオと言う、独自の文化が昔から成り立って来たこの国で俺達は生まれ育った。

4人全員がそうだ。俺達は外の世界を見て回りたいと思い、何とか俺達はこのゼッザオから

出て行く為の方法を考えていた。そんな時、この国のトップの奴から外に出る方法を教えられた

俺達は、その方法を使ってこの島を出て、そしてこの地にこうして再び戻って来たと言う訳だ」


いきなりの衝撃事実発覚に開いた口が塞がらない一同だったが、それでも何とかサエリクスが言葉を口から出して質問する。

「外の世界って……御前達には魔力がある。どうやって出たんだ?」

その質問の答えに、次の瞬間場の空気が一変する事に。

「ここ数年、この霧の魔力が弱まっているみたいで……前に時間を測ってみたら大体5分位この霧が無くなる時があるから、

その時にタイミングを見計らって出たんだよ」

「だからどうやってだよ?」

「飛竜だ」

「何ぃ!?」

その答えに反応したバーレンのカリフォンが即座にロングソードを抜き、続いてヘルヴァナールの面々がどんどん武器を構えたり

詠唱の準備をする。


その一気に膨れ上がった殺気にメッシュの男も若干たじろいだが、何の事で一同が怒っているのかすぐに理解が出来たので弁解を始める。

「言っておくが、俺達はファルス、バーレン、シュアの飛竜襲撃事件とは無関係だ。やったのはこの国の奴等だと思う。

だが、俺等は関わっては居ない」

「如何言う事?」

メリラが大剣を構えながら問い詰めると、今度はグレトルがこんな事を。

「その外の世界に出る為の方法を教えてくれた奴等が、その飛竜の襲撃に大きく関わっている……筈だ。

何故ならそいつ等は外の世界、特にファルス、バーレン、シュアの3カ国を酷く憎んでいた奴等だったからな」

「憎む? 俺達の国を?」

「何故憎まれるのか分からないな。ゼッザオなんて国は俺達も知ったばかりだし、憎まれる様な事をした覚えも無い」

「むしろ、その飛竜襲撃でこちらがゼッザオを憎むべきですがね」

3カ国のトップは当たり前の事を言うが、グレトルよりも先に今度は二刀流の男がその理由を説明し始める。

「この国の国王だ」

「国王?」

ジェイノリーが聞くと、男は首を縦に振る。

「国王は大層あんた達の事を憎んでいたらしくてな。私達も詳しい事は知らないが、相当な恨みを抱いていたらしい。

それにこの国は飛竜部隊を擁しているから、恐らくは……」

男の発言に、一同は言葉を失うしかなかったのである。


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