Run to the Another World第177話


「……やっぱり、気のせいじゃなかったみたいだ」

外に出る為に歩いていた6人の異世界人とグラルバルトだったが、陽(ひ)が当たる

1階の地上に存在している大きなホール状の部屋までやって来た時に目の前の

光景を見てポツリと陽介が呟いた。何故なら陽介を始めとした異世界人達と

グラルバルトの目の前には、完全武装した男女の軍勢と一緒に顔見知りの人物が

その中に1人立っていたからだ。そして、その人物の隣に立つ男が先に口を開く。

「お待ちしておりましたよ、異世界の皆さん」

「……あれぇ!?」

腰のロングソードの柄に手を掛けながら6人とグラルバルトを出迎えたのは、何とあの時

もう1つの別荘に置き去りにして行った筈のグレトルと黄色い制服を着たオレンジ頭の

見慣れない若い男であった。


「何だ、こいつ等……?」

そうバラリーが言うと、グラルバルトが衝撃的な事実を口に出した。

『まずい……アーエリヴァ帝国騎士団だ。相手にするのは余り分が良くない。さっさと立ち去りたい所だ』

「騎士団だって?」

連も訝しげな顔になる。と言うよりもそもそも何故、騎士団とこのグレトルが一緒に居るのだろうか?

そんな疑問を感じ取ったのだろうか、当のグレトル本人が異世界人達と人間の姿のドラゴンに向かって口を開いた。

「俺達を甘く見てもらっては困る。あの時御前達は運良く逃げ出した様だが、俺達はこうして御前達に追いついた」

グレトルは腕を組んで、若干口元に笑みを浮かべて薄くニヤニヤしながら異世界人達に言い放つ。

「惜しかったな? 魔導ってのは偉大だ。俺はあの後近くの街へ行き、転送装置を使って帝都に居るこの国の

この騎士団の本隊にあの遺跡での出来事を話に行った。後もう少しで俺達に追いつかれるなんて、運がねーんだな?」


「いやいやちょっと待ってくれよ。突拍子も無い様な向こうの遺跡での時の出来事を、どうしてすぐに騎士団が

信じてこの遺跡に来る事が出来たんだ?」

その浩夜の疑問にはオレンジ頭の男が答えた。

「それは僕達だけでは無く、ファルス帝国の方々の協力があってこその話です。何故なら貴方達の情報を記載した

手紙が伝書鳩で城の方に届けられましてね。それで事前に貴方達異世界人の情報を入手する事が

出来ていましたから信じる事にしたのです。そしてこの方から貴方達がその人間の姿のドラゴンと共にこの遺跡へ

向かうと言う情報が私達に届いたので急いでやって来ました。ファルス帝国もそうですが、この方の協力も無かったら

僕達は貴方達にこうして追いつく事が出来なかったと思います」


その協力、と言う単語に嫌な予感が全身を駆け巡る淳。

「まさか、協力って……」

「そのまさかでこう言う事ですよ。僕達も異世界人とそのドラゴンには非常に興味がありますから。ですからここで

貴方達を全員逮捕します。今でこそここも向こうも遺跡への進入は自由ですが、秘宝を持ち出されたとあれば

そうは行きませんからね」

「…………」

「やば、い……」

「……これ、俺達にとっては非常にまずい展開だな」

押し黙る連、焦りの色が大きく顔に出る浩夜、諦めの表情が明らかに顔に出ているバラリーの3人のその

リアクションを見てグレトルが1歩前に出て来た。

「逃げようってんなら俺達は全然止めない。その場合はこの場に居るアーエリヴァの騎士団全員と俺が

総出で相手になってやる!」


だが、そんな一同を奮い立たせたのは思いもよらないメンバー達だった。

「ここまで来て終わりか? もう俺達のゴールは目の前なんだぞ。後は目的地に向かうだけだろ!」

『御前達も武術を習っている訳だし、私の力を見くびってもらっては困る。それにさっきの

私の力はここでも発揮出来るから私も協力出来るんだ。ここで諦めたら今までの苦労が全て

水の泡になるのだぞ。異世界人はもう少し骨がある者だと思っていたのだがな』

Be Legendのリーダー淳と、伝説のドラゴンのグラルバルトのそのセリフに他の異世界人達の

目に輝きが戻って来る。

「そうか……そうだな」

「後もう少し、と言うかもう目の前だもんな。だったらラストスパートをかけてみるか」

「確かにここで諦めたくは無いな」

「さっきの戦いだって俺達はしっかり生き残ったんだ。今回もやってやるよ」

「……ならグラルバルト、頼むぞ!」


連も陽介もバラリーも浩夜もディールも生気を取り戻し、まずはグラルバルトに砂嵐を起こして貰う。

どうやら異世界人達には、自分達が今受けている魔導の効果が無い事を身を持って

騎士団とグレトルが知っている内に、その異世界人達は入り口の方へと向かって駆け出す。

しかし、やはり帝国騎士団だけあって立ち直るのも早かった。余り怯む事無く追いついて来た騎士団と、

2度目の砂嵐の経験で防御を素早くする事が出来たグレトルに遺跡のあらゆる所で追い回されて

しまう事になった上に異世界人達は散り散りになってしまう。遺跡の中の至る所でそれぞれが戦う

その一方で、このホールでグラルバルトは騎士団を相手にして戦う事になった。


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