Run to the Another World第176話


もう1つの別荘であるウェローソス遺跡へと向かって、辿り着いたのは夕暮れ時であった。

「あ〜〜〜〜〜〜やっと着いた!!」

「ここはどう言う別荘なんだ?」

うーんと伸びをする浩夜と別荘の事を聞こうとするバラリーだが、この別荘の持ち主で

あるグラルバルトはフーッと息を吐き出した。

『この国の人間達から、ここだけじゃなくてさっきのクレイジールの遺跡でも前に同じ様な

事を聞いたんだがな……何でも、ここで飛竜が氷付けになって居たらしいんだ』

「えっ? と言う事は相当寒いのか?」

そう聞く連だったが、グラルバルトは首を振って答える。

『いいや、私には全く分からない。そもそもクレイジールにもこのウェローソスにも10年以上

来て居なかったしな。そんな氷付けの飛竜の事なんて知ったこっちゃ無い。恐らく勝手に

住み着いて、どっかの冒険者に凍らせられたんじゃないのか?』


が、そのぶっきらぼうな答え方に苦笑いしながら淳が尋ねる。

「何か随分と投げやりだな。同じドラゴン系の仲間じゃないのか?」

それに対してグラルバルトはこう答えた。

『確かにな。でも厳密に言えば向こうは2足歩行で私達竜族は4足歩行だ。関わり合いは

他の魔物の種族とは比べ物にならない位あるのだが、お互いに問題を起こさない様にと言う

暗黙の了解もある位だ。だから私は知ったこっちゃ無い、と言う事さ。さぁ、中に入るぞ』

強引に話を切り上げ、グラルバルト先導の元でウェローソス遺跡の中へ。


地下2階まであるこの遺跡の最深部の大きな扉の前に立ち、グラルバルトがその扉を開ける。

中は広い石造りの部屋になっており、そこには1つの大きな大砲? らしきオブジェが。

「何だこりゃ?」

疑問が口をついて出たディールに、グラルバルトがすっと答える。

『ああ、これは古代の兵器らしくてな。魔力で動く大砲だ。何でもこの帝国では以前これを

動かそうとして騎士団長がこの帝国を裏切り、そしてその計画を察知した旅人達に殺された

事件があったらしい』

「えっ、その時にあんたはここに戻って来なかったのか?」


淳の素朴な疑問にグラルバルトは頷く。

『そうだ。これは元々私が地下に埋めていて、その騎士団長はそれを魔導を使って掘り出そうとしたらしい。

ちなみに魔導で弾を発射する事も出来るし、射程距離もこの大きさに似合わず帝都まで届く程だ。

そもそもここは元々吹き抜けだったのを、私がせっせと石を運んで来てつぎはぎだが天井や地面を作ったんだ。

だから撃とうとしても撃つ事は出来ないし、弾もこの遺跡の中にある事はあったんだがそれも帝国が回収したと

言う話も聞いた。だからここには戻らなかった。これで良いか?』

「よーく分かった」

詳し過ぎる程のグラルバルトの説明に、淳は感心しながら頷いた。

ちなみにもう1つのアクセサリーである黄色いバッジは、その大砲の埋まっていた穴の更に奥にコロンと放置、

もとい保管されていた。グラルバルト曰く、こうして雑に置いておく方が目立たないから見つからないと言う理論だった。


『それじゃあもうここに用は無いから、このまま即座にあの島へと向かうか?』

「そうしてくれ……流石に疲れた」

思えば色々と急ピッチでここまで進んで来ているので、結構疲れが溜まっているのだと理解する

6人の異世界人達はこの別荘から出る為に入り口の方へと向かって歩き出す。

「……!?」

だがその入り口へと向かって歩いている途中、ふと最後尾を歩いていた陽介が

何か得体の知れない威圧感を感じて歩みを止めた。


「どうした、陽介?」

陽介が立ち止まった事に気がついた浩夜が訝しげに思い陽介に声をかけるが、当の陽介は

横に首を振って答える。

「いや、何か気のせいみたいだった」

「はぁ……?」

何を言ってるんだ? と浩夜は思いつつもその言葉を信用して入り口の方へと一行は歩いて行く。

一方の陽介は、それでもまだ自分の中から消えてくれない威圧感の正体に不安を

感じながらもどうする事も出来ないままだった。

しかしこの後、予想だにしない出来事が彼等6人とグラルバルトを待ち構えていた!!


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