Run to the Another World第173話
とりあえずまずはこの別荘を出ないと始まらないので外に出ようとした6人と
グラルバルトだったが、入り口の方へと向かって歩き出した途端に声が掛かった。
「やはりそうか」
「えっ……!?」
突然聞こえて来た声に淳が驚く。
声はどうやら入り口側から聞こえて来る様だったが、肝心のその声の主はと言えば
薄暗くなっている入り口側の通路から壁画のある小さなホールに姿を現わしてくれた。
それによって正体が判明したのだが……。
「お、御前はさっきの!?」
続いて浩夜も驚く。なんせその声の主は先程この別荘の出口へ向かって歩いて
行った筈のグレトルその人だったからだ。
驚く一同に向けて、グレトルは背中の大剣を何時でも抜ける体勢をしつつ話し始める。
「明らかに怪しさが沢山だったからな、御前達からは。特にその2人は俺と一緒に
シュア王国のあのオアシスでドラゴンと会っていたから面識もある。
そんな人間がこんな場所にわざわざやって来ると言う事は何らかの理由があると俺は
にらんでいた。そして御前達はこうやって俺が帰った振りをして戻って来ていたと言う事を
全く知らずに伝説のドラゴンのアクセサリーをゲットしたんだからな」
「……何が言いたいんだ」
要領を得ないグレトルのセリフに苛立ちを募らせるバラリーだったが、グレトルはそれならばと
一言で完結させる。
「悪いが……旅をする中で俺が手に入れた情報によれば、伝説のドラゴンが持っていると
言うアクセサリーを全て集めるとこの世界に災厄をもたらすと言う情報が手に入ったんだ。
だから大人しくそのアクセサリーを置いていけ。でなければ実力行使も止むを得ないが」
でもそんな事をいきなり言われた所で、はいそうですかと6人もグラルバルトも引き下がれる
訳が無い。特に異世界人6人にとっては自分の世界に帰る事が出来るかどうかの重要な
キーアイテムをこんな所で置いて行く訳にはいかないし、もう1つの別荘に行かなければ
いけないと言うのもあるので当然その要求は断る。
「そんな事言われたって信じられるもんか。俺達は自分の世界に戻りたいんだよ」
ディールのそのセリフに、グレトルは黙って背中から大剣を抜いた。
『……私に任せておけ』
だがそんなグレトルを見てそんなセリフをグラルバルトが言ったかと思うと、両腕を目の前で
一旦クロスさせてから思いっ切り大きく広げる。
『伏せろ!!』
えっ!? と思いながらも6人は咄嗟に伏せる。だがホールには何も起こらない。
しかし目の前では実に奇妙な出来事が起こっていた。
「うああっ!!」
何か突風でも吹いたかの様に、グレトルが顔を守る様にして目をギュッとつぶって
腕で顔を覆い隠して何かから身を守っている。
『今だ、私について来い!!』
何がどうなってるのかがさっぱり分からないが、とにかくグレトルを怯ませる事には成功した様だったので
6人はグラルバルトのおかげでピンチを脱出出来た。
「おいグラルバルト、さっきのは一体何だったんだ?」
『説明は後だ。今はとにかくあの男が追って来ない内に脱出するだけだ!!』
連が前を走る人間の姿の黄色いドラゴンに問い掛けるが、グラルバルトは後ろを振り向く事無く告げる。
まぁそれもそうかと思い、とにかく6人は入り口まで向けてグラルバルトの先導の元で猛ダッシュ。
グレトルは必ず追いかけて来るだろうと思いながら、ひたすら自分達も後ろを振り返る事無く走り続ける。
そしてそのまま走り続けて息も上がって来た頃にようやく出口へと辿り着く事が出来た
6人とドラゴンだった……のだが、入り口で一同を待っていたのは信じられない光景だった。
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