Run to the Another World第172話


現在32歳。スペインで生まれ育ったバラリー・ヴェンルティは、複雑な家庭環境で育って来た。

一言で言えば、今の両親が本当の両親では無いのだ。最初に生まれた時に出合った両親の内、

父親が物心つく前に事故死してしまい母親と2人の母子家庭になる。

その後に母親が再婚をしたが、今度は母親が甲斐性の無い父親に呆れて浮気を繰り返して離婚。

今度は血の繋がっていない父親に引き取られる事になった。


だが、その父親が再婚をしたかと思えば今度は何と男と浮気を父親がしてしまい、それに怒った

母親がバラリーを連れて家出をし別居の後に離婚。

そうして今の両親の元に来た時には彼はもう16歳になっており、転校も何度も繰り返す破目に

なってしまった。そう言った物凄く複雑な事情で生まれ育って来ただけあって、その頃には

周りの人間曰く何処か達観している様な目をしていた。

そんな彼は特にそう言った経緯から将来やりたい事も見つかっていなかったが、出来れば人生の

構築に失敗した自分が誰か他の人の人生の構築に役立ちたいと思い建築家になろうと

ふとある日決意する。その為に建築系の大学に進む事にした彼だったが現場仕事も

あったら困るので、18歳の時からフリーランニングとエクストリームマーシャルアーツと体操を

教えているチームに通いつめて身軽な動きを習得した。


そのチームの演舞を披露すると言う事で24歳の時にフランスへと行った時に、偶然その演舞の

会場に来ていたハリド、サエリクス、ジェイノリーと知り合う事になった。これが今でも続いている

彼等との縁になったのである。そしてその1年後の25歳の時、建設会社に勤めていたバラリーが

イギリスへの出張を頼まれて現地へと向かった際、設備関係の打ち合わせでアイトエルと

知り合う事になったのであった。今では生まれ育ったバルセロナを離れて18歳の時から

マドリードの大学に通い、学校を卒業したその後も同じくマドリードに住み続けて建築家と

して働いている。そんな建築家として活躍している彼は、身軽な動き以外にもハリドから柔道を、

サエリクスからはシラット、ジェイノリーからはムエタイを出会った24歳の時から習っている。

今回は日本に来る前にアイトエルと手合わせをしたりもしてみている。



こうして6人それぞれの自己紹介が終了し、ドラゴンのグラルバルトは感慨の息を吐く。

『御前達が色々と武術を習っている者ばかりだと言う事が1番イメージとして強く残った。

それじゃあ私の事も話す事にしよう。私は伝説と呼ばれているこの世界の7匹のドラゴンの内の

1匹、グラルバルトだ。御前達の様に武術を得意としていてな、シュア王国で武術道場を開いている。

とは言ってもあのオアシスの近くにある街で開いているのだがな。何だかんだでこの世に生を受けて

もう4478年になる。多分人間で言えば御前達と同世代になるのか? とは言えどもかれこれ

4000年以上生きているから色々とこの世界の移り変わりを見て来た』


そう自分の事を話したグラルバルトに対して、バラリーがこんな疑問をぶつける。

「それだけ長く生きているんだったら、あんたが戦い始めたのは7匹のドラゴンの中で

最も古いんじゃないのか?」

しかしその答えはNOだった。

『いや、実を言うと私は2番目に古い。最初に闘い始めたのは緑の若造アサドールだ。

私は元々この世界で色々な所を旅していたのだが、それにも飽きて眠ってしまった所で

気が着いたら1000年以上経っていた。その時私はもう2961歳で流石に寝過ぎてしまったから、

今はもう余り寝ていない。1日の平均睡眠時間も人間と同じ位しか寝ていない。それからは

アサドールが人間の姿になる術を見つけるまで自然の中で暮らしていた。そして人間の姿になる

術を見つけたアサドールが戦い始めた10年後に私も戦い始めたのだ。同じく人間の姿でな』

どうやら話を聞く限り相当長く戦っているらしいこのドラゴンの話はそこで終了し、6人の

異世界人達はもう1つの別荘へと向かう事にした。


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