Run to the Another World第17話


その流斗はと言えば、今はこっそりとその怪しい男2人を尾行している途中であった。

男達は城の兵士達をことごとく魔術や見た事の無い武器で倒して行き、

何処かへ向かって行く様だ。

(何だあいつ等……この城の兵士じゃない事は確かだ。賊って奴か?)

そうに違いないと流斗は確信し、危険とわかりつつも足が止まらない。

恐らくこの2人を見失ったら、もっと大変な事になるかも知れないと心の何処かで自分が訴えているのだ。

2人の行き先はどうやら下の方に向かって行く様だ。

(階段を下りた……この先には何がある?)

ゆっくり、ゆっくりと絶対にばれない様に尾行を続ける流斗。

2人はどうやら地下へ向かう様で、今は階段を下りて通路へと入った

その2人の行く末を曲がり角の陰から様子を窺っていた。


しかし、そんな流斗の肩に何者かの手が置かれた!!

「!?」

咄嗟に流斗はその手を掴んで思いっ切り捻り上げる。

「い、いだだだ!!」

「……君は……警備隊の?」

流斗が後ろを振り向くと、そこには腕を捻られて苦痛の表情になっている帝国警備隊副総隊長の

テトティスと、それを見てびっくりしている右翼騎士団副騎士団長カノレル、そして同じく驚く

左翼騎士団副騎士団長ティハーンの姿が。

「ちょ、ちょっと放して下さい!」

「あ、ごめん」


「何をしていたんですか?」

「余り大きな声を出さないでくれ。実は……」

流斗は今迄の事を簡潔に話す。

「わかりました。では私とティハーンでその2人を追います。副隊長、この方の避難をお願いします」

「はい。行きましょう」

しかし襲撃の事を何も知らない流斗はそのテトティスの言葉に戸惑う。

「え、避難って、え……!?」

「逃げながら説明します。行きますよ!」

半ば強引にテトティスに引っ張られる形で、流斗はその場を後にした。


テトティスに襲撃の事を話して貰い驚く流斗だが、何故自分1人で

行動していた筈なのに、この女が自分の元に来たのかがとても気になる。

「何であそこに来たんだ?」

「避難と迎撃でバタバタしていたらあなたを見つけまして。

とにかくここにいるのは危険です。ルザロ将軍とシャラード将軍が今他の皆さんを

誘導している筈ですから、私達も行きましょう」

「ど、どこに誘導してるんだ?」

「隠し通路があるんです。そこを通って王城の外へ逃げましょう」

だがこの後、流斗は信じられない光景を目にする事になる。


テトティスに連れられて通路をひた走る流斗だったが、途中で3人の人物と合流。

だがその3人の人物は、流斗にとって思いもよらない人物達であった。

「ん?」

「おっ!?」

「あれ?」

目の前に現れたのは、流斗と洋子が探していた永治と和美、そしてルザロ将軍であった。

「おい、何処行ってたんだよ!?」

「あ、いや、色々あったのよ……とにかく今は逃げましょう!」

「詳しい話は全て避難してからそっちでするから」

「お……おう」

明らかに疲労困憊と言った表情の永治と和美に流斗はそれ以上

追求する事はせず、まずはルザロとテトティスの誘導で脱出を図る。


その後は何回か侵入者の兵士達に遭遇したが、その度にルザロとテトティスが

片付けてくれたので3人は特に活躍する事も無く城の外へと地下通路を通って脱出。

通路を抜けた先には沢山のメイドや使用人達が騎士団員達に守られて集められていた。

どうやらここは城の裏庭らしい。

「裏庭の封鎖、完了致しました!!」

精鋭騎士団副騎士団長のミアフィンが元気な声でルザロに報告する。

「良し、御前達はここから動くなよ。俺達は中の奴等を片付けて来る」

シャラードは避難が完了した事を確認すると、残りは部下の騎士団員達に任せて

ルザロ、テトティス、ミアフィンと共に城の中へ武器を構えて戻って行った。


残されたメンバー達は騎士団員達に見張られながらも、まずは永治と和美と流斗に

何があったのかを確認する。

「……ってな訳で、いきなり襲い掛かってきたんだ、そいつ等は」

「私はどうも、永治の相手の男にドロップキックされたみたいで。良く死ななかったと

自分でもびっくりしてるわよ」

あの時和美が意識を失ったのは、永治のマウントを何とか振り払った大男が

ローブの男に止めを刺そうとしている和美の頭めがけてドロップキックをかましたかららしい。

その後永治は男達を追おうとしたが、まずは和美の救出が先だと思って

必死に呼びかけたりなるべく安静にさせたり兵士を呼びに行ったりと

応急処置を出来る限りした。


だがすぐに今度は襲撃が兵士達によって知らされて、更に洋子によって2人が居なくなった事を

知らされたルザロとシャラードが武器庫の近くを通りがかったので、永治に呼ばれた兵士が

ルザロとシャラードを武器庫まで案内して発見して貰ったのだと言う。

その後、ルザロは和美が意識回復する迄永治と一緒に居る事に決め、その間に

何があったかを手短に話してもらったらしい。

「まぁとにかく、全員が無事で良かった良かった」

「ああ、そうだな」

脱出に成功し、後は事態の収束を待つだけとなった11人。だが事件はこれだけでは

終わらないのであった。11人はこの後、更に大きな事件に巻き込まれてしまうのである。


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