Run to the Another World第166話
ようやく晴れて23歳のこの日メジャーデビューへの養成所へと入り、更にそこから1年をかけて
ついにメジャーデビューを果たした期待の新人ロックバンドのギタリストとなった。
こうしてメジャーデビューを果たした浩夜は有名ロックバンドのギタリストとして世の中に
認知される様になって行き、段々と東京でも顔が知られる様になって行く。
そしてその中で、当時の他のロックバンドの知り合いから誘われて首都高へと走りに行く事になる。
走りに行く、と言うのはその知り合いが良い所に連れて行ってやる、と言う事で浩夜を誘ったのが
切っ掛けだった。その切っ掛けこそが現在までの浩夜を生み出す事になる。
何故ならそのロックバンドの知り合いがセリカのリフトバックに乗っており、彼自身が首都高速を
走り回る走り屋の1人だったからだ。そうして連れられて行った夜の首都高の世界で浩夜は
今までに乗った車とは比較にならない程のスピードを体感し、まるでロックを聞いている時の
様な高揚感に襲われると言う不思議な体験になった。
ギター以外に熱中出来そうな物を見つけた浩夜は、生まれ育った熊本県の高校ですでに
マニュアルで免許を取得していた。何故なら就職希望の生徒には卒業間際に自動車免許を
取得させると言う方針が高校にあった為なのと、当時はまだまだマニュアル車が普通だったので
浩夜もまた例外無くマニュアル免許を取得していたので後は車を買うだけだった。
そしてアルバイトの僅かな貯金と、メジャーデビューで稼いだ金を元手にして何の車を買うかと
言うのを決めかねていた浩夜だったが、そのロックバンドの知り合いの知り合いが、結婚するので
車を手放すと言う事を聞いた。なのでその車……1997年当時はまだ新車に近かった
PS13シルビアK’sを安く譲って貰った。
そのシルビアで首都高を走りこむ様になっていた浩夜は、ロックバンドで培ったリズム感を生かして
走行時に発生する全ての音を音楽として捉えると言う常人離れした走り方を身につける。それが功を奏したのか、
それから3年が経つ頃には、ターボのスペックRを買う程の余裕が無かったので車をPS13から
S15シルビアのスペックSに乗り換えてそれを極限までチューニングし、新環状線を取り纏める
ゾーンボスの1人に選ばれるまでに成長していた。だがその中で、当時首都高に現れたばかりの新人である
宝坂令次に敗北してしまった事が彼を首都高から撤退させる原因になってしまう。何故ならその後に
令次にサーティンデビルズに入らないかと誘われたのだが、浩夜は「チームは幅を利かせている様で、何だか
そう言う考えをする令次には、ほとほと幻滅したよ」と、令次に反発して首都高を降りて行った。
それに首都高サーキットを走り過ぎて本業のロックバンドがおろそかになってはいけないと思い、しばらくバンドに
打ち込みたかったと言う事も理由だ。
しかしその1年後、令次が宝条京介に敗れた事を切っ掛けにして市松孝司に誘われ、チームゾディアックの
メンバーとして車もその時のスペックSに事故を起こして廃車になった知り合いのスペックRからターボの
SR20エンジンを移植して大幅にパワーアップ。だがそれでも、ポルシェに乗り換えてやって来た宝条京介には
敵わなかった。そして自分を含めるチームゾディアックはその宝条京介に全員倒されてしまい解散してしまったので、
浩夜も再びロックバンドに打ち込む様になった。そんな浩夜に2年後、悲劇が訪れる。何故ならその当時の
ロックバンドのメンバーであるボーカルとドラムがファンの女に対して性的暴行を働くと言うあるまじき不祥事を
起こしてしまい、その結果として浩夜のロックバンドは世間から大バッシングを浴びてこちらも解散しなければ
ならなくなってしまったからであった。今までロックバンドのギタリストとして生きて来た浩夜だったが、ギター自体は
まだたまに弾いているもののその事件以来バンド結成からは遠ざかっている。
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