Run to the Another World第162話


だが、グレトルは次にこんな疑問を口に出した。

「魔力が無いのは相変わらずの様だ。それに見慣れない仲間も居る様だな。

他に居ると言っていた異世界人の知り合いか?」

「ああ、やっと合流出来たんだ」

バラリーがそう答えたが、その次にとんでも無い事をグレトルは言い出す。

「なら何故、御前達から凄い魔力を感じるんだ?」

「えっ?」

「そっちの黄色い髪の毛に黄色い服の男。魔力が無い人間をあたかも

魔力がある様に錯覚させてしまう程の魔力を持っている様だな。一体何者だ?」


その問い掛けに、疑問をもたれたグラルバルトは長く生きているせいか至って冷静だった。

『これは体質だ。どうも私はとんでもない量の魔力があるらしくてな。おかげで色々と

付きまとわれる事が多いから旅をして来た。その途中でこの6人と出会ったと言う訳だ』

「ほう……」

納得してはいる様だが、やっぱり腑に落ちないと言う顔をしつつもグレトルは6人と

異世界人達がやって来た方へと向かって歩き出す。どうやらこの遺跡から出て行く様だ。

「まぁ良い。俺はもうここは存分に見て回ったし、特にその壁画位しか見る物が無かったからまた旅路へ戻る」

「そっか、達者でな!」


薄暗い岩壁の通路の中へと消えて行ったグレトルの背中を見送り、完全にその気配が消えた所で改めて

このクレイジール遺跡の持ち主であるドラゴンのグラルバルトが口を開く。

『改めて、我が別荘へようこそと言った所か。伝説のドラゴンの1匹、土属性のグラルバルトだ』

「チームBe Legendのリーダー、坂本だ」

2人は日本のサラリーマンよろしくがっちりと握手を交わす。

しかしここにやって来たのはそんな社交辞令を交わす為では無い。グラルバルトが持っていると

言うアクセサリーを回収しにこのクレイジール遺跡にやって来たと言うのが本来の目的だったからだ。

「それじゃあ早速だが、アクセサリーを回収しないか?」

『おお、そうだったな』


淳にそう聞かれ、グラルバルトは壁の方に振り向くと今までバックにしていた壁画の方へと

手をかざしてブツブツと何やら呪文を唱え始める。

するとその壁画にみるみる内にひびが入って行き、最終的には大きく崩れてその後ろに空洞が出来た。

その空洞の中から1つのアクセサリーが……!!

『私の持っているアクセサリーはこれだ』

「へぇ、これがそうなのか」

そのアクセサリーを受け取ったのはスペイン人のバラリーだった。受け取ると言うよりも、そのまま指に

はめる事の出来そうな黄色い指輪である。

でもその指輪はどうもバラリーの指には大き過ぎた様で、はめてみたは良いものの不恰好になってしまった。

「しょーがない、持ってる」

『それが賢明だな』


そしてここから今度は2つ目の遺跡に向かう筈だったのだが、山を登って来たのとここまで降りて来たのとで

疲れが溜まっている為に少し休憩する事に。と言ってもここは壁画以外特に何も無いので、グラルバルトは

人間の姿のままこんな事を言い出した。

『せっかくこうして異世界の人間に出会う事が出来たんだ。少し位そっちの世界の事を私は聞いて

みたい物だな。私は武術道場を経営しているから、そちらの世界にも武術はあるのか? とかが気になる』

「俺達の事をね……出来る限りの範囲であれば答えても良いよ、俺は」

陽介がそう返すが、ここでRPG好きの連が一言。

「だったらあんたについても聞いてみたい。ドラゴンのあんたが普段どんな生活をして

いるのかが非常に気になるからな」

『良いだろう。それじゃあ最初はそっちから話して欲しい』

と言う訳でお互いの事をそれぞれ話す事になり、最初は陽介が名乗りをあげた。


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