Run to the Another World第161話


黄色いドラゴンのグラルバルトの背中に乗って、チームBe Legendの5人と

スペインからやって来たバラリーの合計6人はこのヘルヴァナールで1番の

国土と経済力を持っていると言うアーエリヴァ帝国へと飛んでいた。

「今から俺達が行く国にはあんたの別荘があるんだよな? それって何処にあるんだ?」

淳がグラルバルトにそう聞くと、バサバサと翼を動かして飛びながらグラルバルトは

その別荘の場所を教え始めた。

『1つが西の方にあるクレイジール遺跡、もう1つがウェローソス遺跡。まぁ名前は人間達が

勝手に名付けただけだから私はただ単に別荘と呼んでいるだけだ。ここから近いのはまずクレイジール遺跡か』

「んじゃあそこに行ってみようぜ」

浩夜の意見で話が纏まり、まずはそのクレイジール遺跡へドラゴンと異世界人達は飛んで行く事になった。


そうしてあの島から飛び続ける事およそ2時間40分、世界地図で見る所の

アーエリヴァ帝国の左下にあるクレイジール遺跡に辿り着き、一行は人間の姿になった

グラルバルトと共に最深部を目指していた。

この遺跡は山の中に存在している遺跡であり、そこに向かった一行は

山道をかれこれ30分歩いていた。

そして山道を登り切ると岩の壁に大きな空洞が出来ており、その先が自分の棲み処の

1つになっているのだとグラルバルトは言う。

「予想はしていたが……やはり中も険しいなー」

ぼやく様に陽介が言う。山の中の遺跡と言う事もあってか地面はごつごつしていて歩きづらい。


だがその遺跡の最深部についてみると、自分達より先に1人の男が居た。

それは……。

「おい、誰か居るぞ?」

「本当だ……何だあいつ?」

最深部にある壁画をじっと見上げているその男は6人とグラルバルトに背中を向けたまま

手を後ろに組んで黙ったままだったが、やがて存在感に気がついたのだろうか、バッと後ろを振り向いて

顔に驚きの表情を浮かべる。

「何だ、御前達……は?」

男の表情と、それからバラリーと淳と浩夜の顔が一気に変わる。それもその筈……その男はシュア王国の

列車の中で自分達を置き去りにして姿をくらました、あの黒髪の大剣使いのグレトルだったからだ。


「てめぇぇぇっ!!」

浩夜が一気に駆け寄ってグレトルに詰め寄ろうとしたが、リーチの長さでグイッと手を前に突き出されて

頭を押さえつけられる。

「何だ?」

「てめぇあの時、何で俺達を置いて行ったんだよっ!! 列車の中でっ!!」

シュア王国で列車の中に騎士団員が乗り込んで来た時には、もうとっくに列車の中にグレトルの姿は

無かった。頼りになりそうな異世界人の人間が黙って消えてしまった事で、浩夜はその怒りを今ここで

思いっ切りグレトルにぶつける。


しかしグレトルは平然とした口調で浩夜に一言。

「……王都よりも前の駅で降りただけだが」

「え?」

「王都への用事は別に俺、無かったし。これで良いか?」

「まぁまぁ……すまない、こいつすぐに熱くなっちゃうタイプだから」

ディールが呆然とする浩夜をグレトルから引き剥がす。

それよりも気になるのは、何故シュア王国に居た筈のグレトルが今ここに居るのかと言う事であった。

「俺は旅の途中でここに寄っただけだ。シュア王国の駅で降りて反対方向への列車を使ってそのまま

このアーエリヴァまでやって来た。この世界の鉄道は大陸中を1本の線で繋げているから乗ったまま

1周する事だって出来る」


それなりに金は掛かるがな……とグレトルは言うが、余り質問の答えになっていないのも事実なので

ここの主であるグラルバルト自らがもう1度尋ねる事にした。

「それじゃあ答えになっていないぞ。私達が聞きたいのは、どうしてこの遺跡に君が

居るのかと言う事だ」

それでもグレトルはボソボソと答える。

「だから俺は旅の途中で、この遺跡を見てみたいと思って寄ったんだ。ここは今じゃ常時開放

されているから自由に見学も出来るし。財宝とかも無さそうだしよ」


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