Run to the Another World第156話


「だから勿論相手の両端に逃げるって言う事も、相手と相手の間に

逃げるって事も臨機応変にその場その場に応じて使い分ける事が重要だからな。

ドラゴンの姿のエルヴェダーでも、火のブレスだけでは勝てないだろ?」

『それはあるな。俺様も尻尾を振り回して敵をぶっ飛ばす事もあるからなぁ。参考になった』

こうして藤尾のシラットレッスンは終了したのだが、ここで哲の耳が何か変な音をキャッチする。

「何か……足音が聞こえないか?」

「えっ?」


その哲の声に由佳を始めとして、異世界人達とドラゴンの姿に戻ったエルヴェダーが耳をすませてみる。

『確かに足音が聞こえる。それから話し声も。どうやら余程大勢の人間達が

この場所へと向かって来ているみてぇだな』

「って事は、俺達は誰かに後をつけられていたって事なのか?」

「そうらしいな。早く脱出しなければ……」

藤尾の疑問に永治が肯定の返事をして、ここから脱出する為にエルヴェダーの

背中に向かって6人が走り出した……次の瞬間。


『ぬお!?』

突然水の砲弾がエルヴェダーに向かって飛んで来て、その攻撃でエルヴェダーは怯んでしまう。

その際にエルヴェダーが大きく身体を動かした為、真っ先に背中に乗ったアイトエルは振り落とされてしまった。

「うおあ!?」

「クソ、これじゃ乗れない!」

周りを見るとどんどん武装した集団……エルヴェダー曰くこの国の騎士団員が集まって来ている。

『エスヴェテレス帝国騎士団だ。厄介な相手だぞ……』

「騎士団!?」

何で騎士団の連中がここにと思っていると、その中から歩み出て来た1人の男が

尊大な態度で6人とエルヴェダーに接して来た。


「貴様等はどうやら、その後ろに居る喋るドラゴンと親密な関係がある様だな」

「えっ、誰?」

「我の事は後で話す。それよりも我が気になるのはその後ろに居るドラゴンの事だ。

どうやら人間の言葉を理解している様だからな」

腕を組んでそう喋る男はピンク色のロン毛で、明らかに騎士団員では無い格好をしている。

「それがどうしたってんだよ? 用が無いなら俺達はもう行くぞ」

こんな奴に関わっていたら時間の無駄だとばかりに藤尾がエルヴェダーの元に向かおうと

話を切り上げようとしたが、その男の後ろから出て来た別の男がいきなり矢を放って来た。

「うっ!?」


咄嗟に6人は緊急回避をして矢を避ける。

「な……いきなり何すんのよぉ!?」

由佳がそう抗議の声をあげるが、それに反応したのはその矢を放って来た金髪の

騎士団員では無くもう1人新たに歩み出て来た短い茶髪の騎士団員の男だ。

「こちらの話はまだ終わっていない。それに陛下に対するその態度は慎め」

「へい……か?」

まさかこのピンクの髪の毛の男は……と思っていると、勝手にその男は自己紹介を始めた。


「だったら先に我の正体を明かそう。エスヴェテレス帝国の皇帝ディレーディだ。

この茶髪の男は騎士団長のザドール、金髪の男が副団長のユクス。これで良いだろう」

しかし、いきなりそう言われても信憑性が余り湧いて来ない。

「皇帝が何でこんな所に居るんだよ……普通こう言うのってそれこそ騎士団員達だけで

来るもんじゃないの? 大体、人の事を尾行して来たのか?」

哲の疑問も最もだが、それに対してディレーディはこう答えた。

「はっ、確かに貴様の言う通り我の様な人間がこうしてこの様な場所に来る機会等は

滅多に無いだろうな。だが覚えておけ。我は気になる事があれば自分の目で確かめたいタイプだ。

だからこそ今回はこうして、国内で目撃情報があった貴様等を追いかけて来た」

そしてディレーディは、次の瞬間とんでも無い事を言い出した。


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