Run to the Another World第153話
「そーいやぁ、さっきからずっと気になってたんだけど……」
「何?」
「俺達、さっきエルヴェダーの封印を解く為に火を吐くから離れててくれって言うから
離れてたけど、何も熱さみたいな物を感じなかっただろ? だからそれが俺にとっては不思議なんだ」
「ああ、そう言えばそうだな……」
RPGに詳しい藤尾がその事を思い出して1つ頷いた。
だけど、その疑問に対して1番納得出来ないのは何よりもその火を吐いたエルヴェダーそのものだった。
『俺様の火が熱くない……? どう言う事だ、そりゃあ?』
「どう言う事も何も、それが全ての事実なんだが……」
アイトエルが困った様に首を捻って腕を組みながら事実を述べる。
一体これはどう言う事なのだろうか?
その事実をもう1度確かめるべく、エルヴェダーに協力して貰って実験をして見る。
まずはさっきと同じ様に……といっても威力を最大限まで小さくした火の海……と言うよりも
焚き火レベルの火を吐いて地面を燃やして貰う。そしてその周りに集まった6人が熱さを感じるか
どうかの実験をして貰う……との事で危険を伴う実験でもあった。
『じゃあ行くぞ……』
エルヴェダーがすぐ先の地面を燃やし、その周りを取り囲む様に6人が集まるが……。
「……全く熱くないわ、不思議ね」
「ほんとほんと、何かしら……これ?」
「火は見えるんだが熱さがまるで感じられない」
「俺も全く同じ。例えようにも難しいな……どう例えれば良いんだろ」
「例えようも無いんじゃないか、これだけ不思議な現象だと」
「そうだな……火は熱い物、と言う先入観があるからこそ全く不思議なものだ」
和美も由佳も永治も哲も藤尾もアイトエルも全員がその火から熱さを感じる事が出来なかった。
なので。
「なぁ、誰か触ってみれば?」
アイトエルがそう言い出すが、デストラクションパートナーズの5人は譲り合いを始めた。
「ここは俺がやろう」
「いや……俺がやるよ」
「いや、ここは私がやるわ!」
「いーえ、なら私がリーダーとしてやるまでよ」
「俺がやっても良いけど……」
そんな譲り合いを見て気が変わったアイトエルはもう1度手を挙げる。
「……俺がやる」
「「「「「「どうぞどうぞ」」」」」」
「何、この流れ……」
何だか釈然としないこの流れにアイトエルは不安を覚えながらも、意を決して水平チョップをその
燃え盛る火に向かって繰り出した。
「……っ……!?」
「ど、どう?」
和美が尋ねると、アイトエルは今までに見せた事が無い位の驚愕の表情を浮かべた。
「熱くない……熱くないぞ!! シャツは燃えているけど」
アイトエルは長袖のシャツを着ているのだが、その袖口が少し燃えた様だった。しかし熱さ自体は全く
感じなければ火傷も全くしていない。
「と言う事は……俺達に火は通じないって事か?」
藤尾がそう予測を立てたのだが、そこにエルヴェダーがストップをかける。
『いや……恐らく普通に生み出された火は熱いと感じるだろうし火傷だってする筈だ。
御前達の様な人間を見るのは初めてだから何とも言えねーんだけどな、これは恐らく御前達の身体の中に
魔力が無い事が原因なのかも知れねぇな』
「魔力が無いのが原因?」
永治の問い掛けにエルヴェダーはこう予測を立てる。
『この世界の魔導って言う物は、この世界に生み出された生物であれば誰もが持っている
魔力と言う物が関係して来る。人間だけで無く当然ドラゴンである俺様も当然持っているぜ。
その魔力は生まれつきどれ位の量を持っているかと言うのが決まっているから生物それぞれで
個体差があるんだが、当然魔力の量が多ければ多い程長い時間魔導を使う事が出来るし、
大きな魔導攻撃や防御をする事も出来るし回復の量も多く出来るんだ。でも、御前達みたいに全く魔力が
無い人間はこの世界の常識に当てはまらないんだと言う事が良く分かった』
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